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有機合成化学協会誌2022年10月号:トリフルオロメチル基・気体分子等価体・蛍光性天然物・n型有機材料・交互共重合法

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有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2022年10月号がオンライン公開されました。

2022年度も後期に入りました。有機合成化学協会誌を使って、さらに有機合成に関する知識を深めたいところです。

今月号も充実の内容です。

キーワードは、トリフルオロメチル基・気体分子等価体・蛍光性天然物・n型有機材料・交互共重合法です。

今回も、会員の方ならばそれぞれの画像をクリックすればJ-STAGEを通してすべてを閲覧することが可能です。

巻頭言:有機化学者としての心得 

今月号の巻頭言は、金沢大学医薬保健研究域薬学系 国嶋崇隆 教授による執筆記事です。自分に合う、研究のスタイルというものを考えさせられます。

ヒドロシランの活性化を利用した芳香族トリフルオロメチル基の選択的変換

吉田 優*

*東京理科大学先進工学部生命システム工学科

ベンゾトリフルオリド類が有する3つの炭素-フッ素結合のうち、1つだけを官能基化するのは至難な業です。筆者らは、分子内に配置したヒドロシリル基から発生させたシリルカチオンを利用して炭素-フッ素結合を切断する手法を開発し、その解決法を提示しました。芳香族トリフルオロメチル基の1つのフッ素原子を選択的に炭素、窒素、酸素、塩素、硫黄官能基化するという筆者らの研究をまとめた総合論文です。

気体分子等価体を用いる触媒的有機合成反応の開発

小西英之*

*静岡県立大学薬学部

本総合論文は、毒性ガスである大過剰のCOやSO2の代わりに、取り扱い容易かつ毒性が低く、化学量論程度のCO等価体とSO2等価体を用いた数々の反応(カルボニル化合物の合成、スルホンアミドおよびスルフィンアミドの選択合成、スルフィド化合物の合成)について述べています。

蛍光性天然物を基にした新規蛍光物質の創製

平野 智也1*横尾英知2影近弘之3

1*大阪医科薬科大学薬学部

2京都府立医科大学大学院医学研究科

3東京医科歯科大学生体材料工学研究所

本総合論文は、植物等に由来する天然物に着目した蛍光物質の開発について、発見の過程やその合成、物性評価について詳細に論じた内容となっています。特に、新しい物性を示す新規化合物の開発に関する部分は、生命現象解明にも利用される蛍光物質を探索する上で参考にすべき内容と思います。ぜひご一読ください。

n型有機材料を指向したπ共役ネットワークの設計と短段階合成

上田和樹、中西晴香、坪井由衣、村田理尚*

*大阪工業大学工学部応用化学科

著者らは、新しいn型有機半導体材料の創出を指向して、フラーレンの部分構造であるピラシレン骨格の合成研究を展開している。本総合論文では、その過程において、著者らが見出したジカチオン機構で進行する二重Scholl環化、ドミノSchollクロスカップリングおよび化合物の発光特性について紹介されているほか、n型有機半導体材料の実用化例として、エテンテトラチオラート錯体についても触れられている。

ペプチドの交互共重合法の開発と交互配列の機能探索

小山靖人*

*富山県立大学工学部医薬品工学科

通常の縮合反応では縮合剤由来の副生物が生じるが、Ugi四成分縮合反応に着想を得た本法は、事前に合成したイミンとカルボキシル基を持つイソシアニドを混合すれば、原理的には副生物が無く共重合体を得る有用な合成法である。基質汎用性の検討に加えて、優れた接着強度やミセル形成可能な界面活性等、材料物性や設計指針についても詳細に研究されており、学術的にも産業的にもインパクトのある内容だと思います。

Review de Debut

今月号のReview de Debutは1件です。オープンアクセスですのでぜひ。

・外部刺激による活性種の相互変換に基づくリビングラジカル/カチオン重合 (名古屋大学大学院工学研究科)本間千裕

MyPR:グッとくる研究 

今月号のMyPRは、理化学研究所環境資源科学研究センター 山田陽一 チームリーダーによる寄稿記事です。自分にとっての「グッとくる研究」を模索し続けたいと感じました。必読です。

感動の瞬間:有機合成的な高分子研究 

今月号は、神戸大学先端膜工学研究センター 森 敦紀教授による感動の瞬間です。
ポリチオフェンは筆者にとっても思い入れのある分子で、興味深く読まさせていただきました。必見です。

 

これまでの紹介記事は有機合成化学協会誌 紹介記事シリーズを参照してください。

関連書籍

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博士(理学)。大学教員。娘の育児に奮闘しつつも、分子の世界に思いを馳せる日々。

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