JST(理事長:沖村 憲樹)の研究チームは、光受容能のみならず、全トランス型レチナールを外来性の活性物質(アゴニスト)として受容する能力を持つロドプシンを発見した。
視覚の光受容体ロドプシンは、創薬研究の重要なターゲットであるG蛋白質共役型受容体(GPCR)の一種であり、唯一3次元立体構造が決定されるなど、最も研究の進んでいる蛋白質である。一方、他のGPCRがアゴニストと呼ばれる外来性の低分子化学物質(ホルモンや神経伝達物質)を結合して活性化されるのと対照的に、ロドプシンは分子内にアンタゴニストと呼ばれる不活性化物質11-シス型レチナールを結合しており、光エネルギーを使ってそれをアゴニストである全トランス型レチナールに変換して活性状態になる。本研究チームは、脊椎動物の先祖である脊索動物(ナメクジウオ)のロドプシンが、脊椎動物のロドプシンと同様にアンタゴニストと結合して光で活性状態になるのみならず、アゴニストである全トランス型レチナールを直接結合して活性化される能力も持っていることを発見した。
このロドプシンが示すホルモン受容体様性質と光受容体としての性質を詳細に解析した結果、脊椎動物のロドプシンは進化の過程で光受容に特化し、視覚の暗ノイズを低下させるための機能を発展させた特殊なGPCRであることが解明された。また、今回の発見により、これまでに蓄積したロドプシンの研究成果を他のGPCRの研究成果とダイレクトにつなぐことができ、ロドプシンをモデルとした創薬戦略のブレークスルーとなることが期待される。
本成果は、戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CRESTタイプ)の研究テーマ「ロドプシンをモデルとしたG蛋白質共役型受容体の構造・機能解析」の研究代表者・七田芳則(京都大学大学院理学研究科教授)らによって得られたもので、平成17年4月25日の週に米国科学雑誌「米国科学アカデミー紀要」オンライン版で発表される。(引用:科学技術振興機構)
ロドプシン(Rhodopsin)はアミノ酸からなるオプシンというタンパク質と(Z)-レチナールという物質が結合したタンパク質です。オプシンとの結合はレチナールのアルデヒド部位とタンパク質のアミン部位がイミンを形成して結合しています。ロドプシンは網膜の中に存在し光を吸収することによって次の分子にその光のシグナルを与える役割をしています。具体的には光があたることによってレチナール部位の(Z)-オレフィンが異性化し(E)-オレフィンとなることでこの役割を果たしています。
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