[スポンサーリンク]

ケムステニュース

翻訳アルゴリズムで化学反応を予測、IBMの研究者が発表

有機化学を原子や分子ではなく、単語や文と考えることで、人工知能(AI)アルゴリズムを用いて化学反応を予測する方法が発見された。(MIT Technology Review12月6日)

話をまとめると、AIに39万5千の化学反応を勉強させ未知の化学反応を予測できるようにしたということです。そして、実際にこのシステムに特許データベース中の反応を予測させたところ、他のシステムよりも第一候補の正解率が80.3%と他の方法よりも6%ほど高い結果となったそうです。

この結果の特徴は機械翻訳でよく使われるニューラルネットワークを用いたことで、化学反応を言語のように処理していることです。具体的には、

  1. 合成化学的に正しい反応を予想をするためのSMILESの文法
  2. 分子構造の傾向
  3. 原料、反応剤の反応部位

といったような三つの内容について学習させました。これは人間が有機化学を学ぶ時と同じで、人間のようと同じ方法で反応を予測していると考えられます。

今後の展望として、

  • 正解率を90%以上にする。
  • 有機合成化学の分野別に反応予測を最適化させる。
  • システムに関しては化学構造だけでなく、温度や溶媒。pHなども予測のファクターに取り込む
  • 特許のデータベースだけでなく、より多くの有機化学反応を学習させる。
  • ビジネスの観点からクラウドサービスにして誰もが使えるサービスにする。

といったようなことを計画しているそうです。また、AIは完全ではないため化学者のフォローアップが必要で、このシステムが有機化学者にとって代わるのではなく助けるために作ったと論文を執筆した研究者の一人であるテオドロ・ライーノ博士はコメントしています。

AIによる化学反応の予測というトピックについて全然知りませんでしたが、論文中では最近の研究結果を多く引用していて、ホットなトピックであることがわかります。ScifinderとReaxysには多くの反応がデータベース化されているのでこれらとコラボすれば、すべての反応を網羅できると個人的には思います。またこの研究者のコメントには一安心ですが、このようなツールが発達すると研究が効率的に進められる一方、合成反応をよく勉強しなくても新規合成や反応開発できるようになってしまい、学生の考察力が低下するのではないかと私は危惧しています。Googleに聞けば学生実験の答えが出る時代から、AIに聞けば思い通りの分子が合成できる時代になるかもしれません。

 

インタビュー動画

関連リンク

 

The following two tabs change content below.
Zeolinite

Zeolinite

企業の研究員です。最近、合成の仕事が無くてストレスが溜まっています。

関連記事

  1. AIで世界最高精度のNMR化学シフト予測を達成
  2. 一家に1枚周期表を 理科離れ防止狙い文科省
  3. 抗生物質
  4. 第7回ImPACT記者懇親会が開催
  5. メルク、途上国でエイズ抑制剤を20%値下げ
  6. 地位確認求め労働審判
  7. 武田薬品、週1回投与の骨粗鬆症治療薬「ベネット錠17.5mg」を…
  8. 毒を持ったタコにご注意を

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. “匂いのゴジラ”の無効化
  2. 有機化学命名法
  3. Whitesides’ Group: Writing a paper
  4. DNAが絡まないためのループ
  5. メカノケミストリーを用いた固体クロスカップリング反応
  6. 5分でできる!Excelでグラフを綺麗に書くコツ
  7. 三菱化学の4‐6月期営業利益は前年比+16.1%
  8. 水素化ホウ素亜鉛 Zinc Bodohydride
  9. 次なる新興感染症に備える
  10. Carl Boschの人生 その2

関連商品

注目情報

注目情報

最新記事

アルケニルアミドに2つアリールを入れる

ニッケル触媒を用いたアルケニルアミドの1,2-ジアリール化反応が開発された。フマル酸エステルを配位子…

蛍光標識で定性的・定量的な解析を可能に:Dansyl-GSH

反応性代謝物の存在を調べたい。代謝化学の実験をしていれば、ほとんどの人がそう思うのではないでしょうか…

アメリカで医者にかかる

アメリカの大学院に進学する際、とても悩んだのが、医療保険についてです。アメリカでは医療費がとても高い…

MOF 結晶表面の敏感な応答をリアルタイム観察

第178回のスポットライトリサーチは、東京大学の細野暢彦講師にお願いしました。細野先生は高分…

有機合成化学協会誌2019年2月号:触媒的脱水素化・官能性第三級アルキル基導入・コンプラナジン・アライン化学・糖鎖クラスター・サリチルアルデヒド型イネいもち病菌毒素

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2019年2月号がオンライン公開されました。今…

化学の学びと研究に役立つiPhone/iPad app 9選

筆者の最近では、ちょっとした計算や反応機構を描くツールとしてipadアプリ"GoodNotes"を使…

Chem-Station Twitter

PAGE TOP