[スポンサーリンク]

ケムステニュース

博士後期で学費を企業が肩代わり、北陸先端大が国内初の制度

[スポンサーリンク]

 北陸先端科学技術大学院大学は、産業界と連携した博士人材の育成制度を2019年度から開始する。企業が博士後期課程に進学する学生の学費などを1年間に約180万円程度、3年間継続で貸与して卒業後の就職を条件に返済を免除する。 (引用:日刊工業新聞10月21日)

日本人学生の博士後期課程(後期課程)への進学者数が減少傾向にある北陸先端大では、この支援制度を2019年度から始めることになりました。詳細は検討中のようですが、すでに20社程度の企業から賛同を得ていて年内をめど前期課程在学者を対象に説明会を開催するそうです。制度は、

  • 後期課程進学前:進学を希望する学生と企業でマッチングを図り、研究テーマや就職の飛行などで合致した場合に支援制度を適用される。
  • 在学中:企業の研究者を客員教授として受け入れ、指導教員とともに学生を指導する。
  • 卒業後:学生の就職により学費などの返済は免除される。

というような構想になっています。そのため、学生は経済的支援と将来の進路の確約され、企業としては即戦力となる人材を獲得でき、大学は、後期博士課程の進学率を上げることができると考えられます。博士課程の金銭的支援といえば、学振が有名ですが、枠は限られています。また、近年では博士課程教育リーディングプログラムと呼ばれる支援事業も始まっていますが、限られた大学のみで実施されています。こうした現状の中で新しい試みの一つして、より多くの学生が興味を持ち後期博士過程に進学してもらいたいと思います。

一方で、進学前から企業とコンタクトし、在学中はタッグを組んで研究を進めるような雰囲気について、筆者は少し違和感を感じます。大学と企業の研究は異なるところがあり、大学ではなるべくアカデミックの研究を行うべきあり、企業への就職ありきで企業の研究を大学に持ち込まないか心配があります。また、進学前から特定の企業に就職する道しかないことも懸念点だと思います。

この後期博士課程の就職に関する問題はホットな話題であり、大学は支援制度の拡大し、企業はグローバルな競争で勝つための一環として博士人材の再考を行っていますが、理学、工学の後期博士の進学率は低下したままです。そのため社会全体としてもうひと踏ん張りが必要で、賛否両論はあるとは思いますがこのような試みが他の大学にも広まってほしいと思います。

北陸先端科学技術大学院大学は、石川県にある国立の大学院大学です。大学院大学は、学部がない大学院のことで、ほかには、総合研究大学院大学奈良先端科学技術大学院大学沖縄科学技術大学院大学 (私立)、国際連合大学 (海外)などがあります。北陸先端科学技術大学院大学では、環境・エネルギー領域物質化学領域応用物理学領域生命機能工学領域で化学に関連する研究が行われています。

関連書籍

[amazonjs asin=”4833015447″ locale=”JP” title=”科学技術のフロンティアを拓く学術の森”] [amazonjs asin=”4860431448″ locale=”JP” title=”サービスサイエンス―新時代を拓くイノベーション経営を目指して”]

関連リンクと”博士課程”に関するケムステ過去記事

Avatar photo

Zeolinite

投稿者の記事一覧

ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

関連記事

  1. ダイエット食から未承認薬
  2. 野依さん講演を高速無線LAN中継、神鋼が実験
  3. ニュースの理由・武田、米で6年ぶり大型新薬
  4. マンダムと京都大学、ヘアスタイルを自然な仕上がりのままキープする…
  5. CASがSciFinder-nの画期的逆合成プランナーの発表で研…
  6. ノーベル化学賞明日発表
  7. ALSの新薬「ラジカット」試してます
  8. 武田 新規ARB薬「アジルバR錠」発売

注目情報

ピックアップ記事

  1. 化学産業のサプライチェーンをサポートする新しい動き
  2. もう入れたよね?薬学会年会アプリ
  3. セブンシスターズについて② ~世を統べる資源会社~
  4. ゲームを研究に応用? タンパク質の構造計算ゲーム「Foldit」
  5. ゲイリー・モランダー Gary A. Molander
  6. 日本化学会 平成17年度各賞受賞者決まる
  7. 細胞を模倣したコンピューター制御可能なリアクター
  8. ベンゾイン縮合反応 Benzoin Condensation
  9. 北九州における化学企業の盛んな生産活動
  10. IKCOC-15 ー今年の秋は京都で国際会議に参加しよう

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2018年10月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  

注目情報

最新記事

水-有機溶媒の二液相間電子伝達により進行する人工光合成反応

第662回のスポットライトリサーチは、京都大学 大学院工学研究科 物質エネルギー化学専攻 阿部竜研究…

ケムステイブニングミキサー 2025 報告

3月26日から29日の日本化学会第105春季年会に参加されたみなさま、おつかれさまでした!運営に…

【テーマ別ショートウェビナー】今こそ変革の時!マイクロ波が拓く脱炭素時代のプロセス革新

■ウェビナー概要プロセスの脱炭素化及び効率化のキーテクノロジーである”マイクロ波…

予期せぬパラジウム移動を経る環化反応でベンゾヘテロールを作る

1,2-Pd移動を含む予期せぬ連続反応として進行することがわかり、高収率で生成物が得られた。 合…

【27卒】太陽HD研究開発 1day仕事体験

太陽HDでの研究開発職を体感してみませんか?私たちの研究活動についてより近くで体験していただく場…

熱がダメなら光当てれば?Lugdunomycinの全合成

光化学を駆使した、天然物Lugdunomycinの全合成が報告された。紫外光照射による異性化でイソベ…

第59回有機反応若手の会

開催概要有機反応若手の会は、全国の有機化学を研究する大学院生を中心とした若手研究…

多環式分子を一挙に合成!新たなo-キノジメタン生成法の開発

第661回のスポットライトリサーチは、早稲田大学大学院先進理工学研究科(山口潤一郎研究室)博士課程1…

可視光でスイッチON!C(sp3)–Hにヨウ素をシャトル!

不活性なC(sp3)–H結合のヨウ素化反応が報告された。シャトル触媒と光励起Pdの概念を融合させ、ヨ…

化学研究者がAIを味方につける時代―専門性を武器にキャリアを広げる方法―

化学の専門性を活かしながら、これからの時代に求められるスキルを身につけたい——。…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP