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小6、危険物取扱者乙種全類に合格 「中学で理科実験楽しみ」

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大阪府枚方市立殿山第一小学校6年の阿部公尚さん(11)が5月、危険物取扱者乙種全類の試験に合格し、免状を手にした。 (引用:毎日新聞6月23日)

危険物取扱者は危険物を取り扱うための資格で、一定の危険物の数量を保管している化学工場やガソリンスタンドなどでは免許を保有している危険物取扱者を置かなくてはなりません。そんな化学に関する免許を小学6年生が乙種全類の取得に成功しました。

危険物は、第一から6類まで種類別に分かれています。取扱者は、甲種、乙種、丙種と三種類のレベルがあり、乙種は、危険物の種類別に6種類に分かれていて、阿部さんはこの乙種の全類の取得に成功しました。

免状の種類 取扱いのできる危険物
甲種(最上位) 全種類の危険物
乙種 (中位) 第1類 塩素酸塩類、過塩素酸塩類、無機過酸化物、亜塩素酸塩類、臭素酸塩類、硝酸塩類、よう素酸塩類、過マンガン酸塩類、重クロム酸塩類などの酸化性固体
第2類 硫化りん、赤りん、硫黄、鉄粉、金属粉、マグネシウム、引火性固体などの可燃性固体
第3類 カリウム、ナトリウム、アルキルアルミニウム、アルキルリチウム、黄りんなどの自然発火性物質及び禁水性物質
第4類 ガソリン、アルコール類、灯油、軽油、重油、動植物油類などの引火性液体
第5類 有機過酸化物、硝酸エステル類、ニトロ化合物、アゾ化合物、ヒドロキシルアミンなどの自己反応性物質
第6類 過塩素酸、過酸化水素、硝酸、ハロゲン間化合物などの酸化性液体
丙種 (第四類の下位) ガソリン、灯油、軽油、重油など

乙種の試験は、危険物に関する法令(15問)基礎的な物理学及び基礎的な化学(10問)危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法(10問)ですが、一種類でも乙種に合格していれば、他の類を受験する際に危険物に関する法令(15問)と基礎的な物理学及び基礎的な化学(10問)は免除されます。自分は、大学院卒業後に甲種免許を取得しましたが、危険物に該当する化合物の名前や防火設備に関する数字を暗記する必要があり、かなり時間をかけて勉強した思い出があります。甲種の場合は、全類をカバーする試験内容ですが、乙種の場合は、一種類ずつ試験を受けることになるのでそれぞれの類について抜かりなく勉強する必要があり、ある意味甲種より難しいかもしれません。しかも阿部さんは、四回で全類の取得に成功したということは、最低2回は試験同日に2つの類を受験したことになり、小学生にとって6つの試験に合格することは当然容易ではなく、快挙だと思います。

甲種と乙種全類は同じではなく、甲種の場合には経験なしに取り扱い施設の危険物保安監督者になることができますが、乙種の場合は、6ヶ月以上の実務経験が必要です。現在は、大学等における化学の単位取得や実務経験だけでなく第1類又は第6類、第2類又は第4類、第3類、第5類の乙種免許を取得していれば甲種を受験することができます(1,6,3,5と2,4,3,5は不可)。過去には愛知県の小学二年生が甲種免許を取得したことがニュースになりましたので、阿部さんも甲種免許にもチャレンジしてほしいと思います。

阿部さんは「中学での理科の実験が楽しみ」と話している一方で、将来の夢は裁判官。簿記や宅建などの資格にも挑戦し、「法律に詳しくなりたい」と意気込んでいますが、是非とも化学の道にも興味を持ってもらいたいです。大学でも民間企業でも研究開発の中では危険物取扱者の資格はほとんど必要がありませんが、指定数量や保管設備に関してなど知っておくべきルールをこの試験から勉強できるので、化学に携わっている多くの人にぜひ挑戦してほしいと思います。

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ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

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