[スポンサーリンク]

一般的な話題

コロナウイルスCOVID-19による化学研究への影響を最小限にするために

[スポンサーリンク]

皆さん、ご存知の通りかと思いますがCOVID-19の影響で海外の多くの国では大学院や研究所の閉鎖が相次いでいます。今回の記事では、そんな事態にならないように我々ができること、そうなりそうな場合に我々がすべきこと、テレワークを導入した場合にどのようなことができそうか、その他注意点についてまとめたいと思います。詳細に関しては各研究室主催者(教授や准教授)、大学事務からの公式連絡などに従ってください。

(25.03.2020追記)研究室や研究棟でコロナ感染患者が見つかった場合、その日のうちに研究棟が完全封鎖される可能性が非常に高いです。朝、大学に行ったら研究棟はすでに閉まっていて、二週間入れないということがガチで起こる可能性があります。あらかじめ以下の記述や研究所等からの公式連絡を参考に対処をしてください。

こちらやこちらのような統計サイトを目にされた方も多いかと思いますが、すでにいくつかの数理学者によるシュミレーションも出てきています(例えばこちらなど)。日本が現在健闘しているのは評価すべきかと思いますが、現在の国際的な人と物の移動を考えると、気を抜いたら最後かもしれません。といっても個別の予想はかなり難しいので、我々が最悪の事態(研究室閉鎖)になった時に何ができるかについて以下にまとめました。

個人レベルで研究を継続するためにできること

個人レベルでパンデミックを抑制するためにできることに関してはさんざんそこら中で言われているので、詳しくは厚労省やその他医療機関のウエブサイト、各大学の保健センターのHPなどをご参照ください。具体的には規則正しい生活をし、手洗いうがいをしっかりすることを心掛けてください。また、旅行などむやみな外出はしばらく控えるなどしましょう。

家のネット設備の確認をしておきます。自宅での仕事となるとインターネットへの依存度が非常に高くなります。携帯だけの契約をしている場合は、家の新規インターネットの契約、若しくはより大容量のネットワーク契約変更をお勧めします。

研究室閉鎖に備えて研究室レベルできること

後にも書きましたが、研究室閉鎖はかなりダメージが大きいです。キャンパス内で感染者が出た私の母校(スイス)でも、これまで持ちこたえてきましたがついに木曜日(19.03.2020)からラボでの実験を全て止める模様です。現在の所属の研究室(オーストリア)も月曜日(16.03.2020)から閉鎖になりました。アメリカなどでも同様の処置が広がっています。急な政府の発表と、大学からの連絡から、在宅勤務に落ち着くまでにかなりゴタゴタしておりました。皆様の研究室ではそのようなことが無いよう、情報を共有しておこうと思います。たとえばMITなどではこちらのように研究室を閉鎖する際の手順に関して細かく示しています。皆様の所属の研究室では各大学や研究科の指示が基本となりますが、必要な場合は、早々にラボを閉めた海外の各大学のウエブサイトを参照すると漏れなく対策ができるかと思われます。以下に、研究室閉鎖に備えて研究室レベルでできることについてまとめました。

  • ドラフトで引いていない部屋以外はしっかりと換気を確保する。アルコール系や逆性洗剤系の消毒剤により定期的な消毒を行う。もし、症状が少しでも出た場合は関係者の隔離処置がとれるように、すぐに指導者に連絡する。
  • 論文を書けるだけのデータが集まっている場合や、レビューの依頼が来ている場合は学生を自宅での在宅勤務とする。また、通勤時間帯をずらしたり、研究室に滞在する時間を実験する時間帯だけとすることで人とのコンタクトを最小限にする。土日を含めて仕事を分散シフトをとることで、研究室に一度に滞在する人の数を減らす。(この際は安全管理のためにスタッフも同様に変則シフトを強いられるかと思います。安全管理がしっかりできないという理由で全部閉めると決断した研究所もあるので、慎重な議論と、もし何かが起こった際にどうするかについて確認の上決めてください。)
  • 将来のシャットダウンに備えて、不必要な冷凍、冷蔵試薬の購入は避ける。(でも年度末なのでしっかりお金は使い切る。)また、研究室が閉鎖された際に発注済みの試薬等をどのように受領若しくは業者側で保存するかについても業者と相談しておく。
  • 全員が教室に集まる研究室ミーティングを見直し、テレビ会議ツールZoomなどを利用したテレビ会議に変更する。また、SlackやMicrosoft teamなどを利用することにより、足りない分のコミュニケーションを補うシステムを構築しておく。さらに、非常時の連絡先や携帯電話のリストの確認、メーリングリストの作成などを行っておく。
  • 自宅でもVPNを利用することにより、大学図書館を経由で論文の閲覧ができるか確認しておく。
  • 絶対に止めることのできない実験や動物の世話の場合は、万が一誰かが感染し作業が中断する可能性がある時のために、バックアップとして研究を補助できる人を複数選任、トレーニングしておく。
  • これは平時からしれおくべきかと思いますが、化合物にしっかりラベリングしておく。実験ノートにも記入漏れが無いことを今一度確認しておく。いつ、研究室が閉じられてもいいようにベンチの上はきれいにしておく。(化合物が死んでしまって後で泣くはめになります)
  • データが集まってない場合、ラボが閉まる前にしっかり実験し、万全のデータで論文を書けるようにしておく。また、普段以上に研究の優先順序(縮小や延期)を週の実験計画に盛り込み、研究を行う。
  • 在宅勤務となる可能性を考慮して、データを共有できる仕組みや、どのデータをどの程度コピーし自宅に持って帰ることができるかについて指導者と話し合う。(本来は実験ノートを含め研究に関する一次データの大学からの無許可での持ち出しはご法度です。)ハードディスクの購入若しくはデータサーバーの導入が必要かもしれませんし、必要なデータを集めるのにも十分な余裕を見ておく方が良いと思われます。
  • 読みたい専門書を買っておく、若しくはあらかじめ図書館で借りておく。(通常、コロナが蔓延した場合図書館は閉館となります。)また、事務的に必要と思われる備品の補充を行ったり、必要な場合はホームオフィスへの一時的な貸し出しを認める。
  • (23.03.2020追記) 近しい人の研究所では上の階の共同研究施設でコロナ患者が出ているのに、部局間の壁のために下の階の化学科に連絡が伝わらなかったというやばい事例も出ています。特にその事例では、その感染源である共同研究施設の隣が化学科の秘書室なのにも関わらず、そのまま数日間知らされずに通常業務をしてしまうという事態(現在はシャットダウン)ににまでなったりしていました。普段部局の壁が薄い欧州でさえそうなので、日本でも多くの人が利用する共同研究施設を中心に、今のうちに部局間の連絡体制をしっかりと確認すべきかと思われます。
  • (23.03.2020追記) 製薬企業など絶対にオペレーションが止められない欧州企業などでは、同じ部屋で仕事する人の数を制限したりしています。上に述べた分散シフトの一例ですが、会社での勤務を2.5日、ホームオフィス2.5日とし、公共交通機関を利用する必要のある人間は5日間ずっとホームオフィスといった感じです。

 

在宅勤務になったらするべきこと

こちらでは、在宅勤務になった際に自宅でどのような研究活動ができるかについてまとめてみました。

  • 在宅勤務での進捗管理や予定表を作る。
  • データを整理し論文を書く。書きまくる。また、来期博士3年の場合は博士論文を書ける範囲で書いてしまう。
  • 新たな研究計画(新規プロポーザル)の立案と学振などのグラントの準備。
  • 計算科学などシミュレーション関連の知識を深めるために本やレビューを読む。
  • パイソンなど解析を自動化できるようなプログラムの理解を進める。
  • まとまった知識を手に入れるために教科書やレビューなどを読む。

 

終わりに。最近大学を出禁(10.03.2020)になったGakushiの場合

  • 大学から必要なデータを全て持って帰ったりする必要があるので、在宅勤務もセットアップが思いのほか大変でした。自宅は無線LANでしたので、持って帰ったデスクトップを有線ネットワークにつないだり、VPNを確認したり、いろいろ資料を置くために普段汚い机を掃除したりと結構な時間がかかりました。
  • 普段研究室に行くことに慣れている私のような人間の多くは、家ではやる気が無くなります。なので、自分をしっかりモチベートできるように、大学にいるとき以上にしっかり計画を立てるなど、工夫する必要もあるかと感じているところです。
  • まだ、私の大学も在宅勤務が始まってすぐなので分かりませんが、人との接触機会が圧倒的に減るので、メンタルを病みそうな気がしています。なので、しっかりとラボメンとコミュニケーション取れるように準備をしておくといいかと思います。
  • (19.03.2020追記) 朝方でない自分には在宅勤務はかなりきついです。今日から、朝、誰かとミーティングを入れるようにしました。研究に対するモチベーションも上がるし、スイッチも入るし、夜早く寝るようになるし、朝弱い人にはちょうどいいかもしれません。加えて研究室ではあまり人と話さなくても大丈夫な私でも圧倒的なコミュニケーション不足に陥っております。あまり私は好きではありませんが、メンタルを病むことを防止する目的で毎朝ミーティング(全体じゃなくても、サブグループ、若しくは最悪面倒くさかったら教員抜きでもいいので)をするなり工夫した方が、モチベーションや心的なマネジメントには良いかと思います。
  • (22.03.2020追記) 木曜、金曜、土曜日とZoomでのミーティングや研究室でのチャットができたので、精神的な疲れは比較的抑えられるようになりました。また、セットアップや生活スタイルにも慣れてきて自宅での仕事にも集中して取り組めるようになってきました。周囲には日本への帰国を早めるPDや、家族を日本に返す研究者、本部からの要請で海外赴任から帰国となったメーカー技術者の方など、周りにも比較的たくさん出てきています。一方で、留学生のための奨学金を日本政府の外郭団体を中心に止めてしまったせいで、修士課程の学生を中心に生活苦に立たされる学生も出てきています。欧州系の奨学金団体は支給は止めない、研究者が必要ならば所属機関や研究室の変更、または一時退避、一時中断、などに個別で応じるとしています。正直先が見えませんが、できることをするしかありません。

在宅勤務はマジで面倒くさいです。苦痛です。普段面倒くさいなーと思っているような実験でも、どれだけ楽しいか身に沁みます。研究室で仕事ができる皆さまにおかれましては今のうちにしっかり楽しんで実験してください。そして、万全を期してCOVID-19を迎え撃ちましょう。

以下は私の元指導教官からの引用の一部です

我々化学者(科学者)はサイエンスの事実に基づいて行動し、噂や根拠の薄い情報には惑わされません。現在全世界的に大変な状況であるのは事実ですが、不用意に恐怖する必要はありません。今こそ普段の研究で培った、正しい一次データ(情報)やその引用文献などに基づいて判断する力を発揮し、化学的な視点からイニシアチブをとり行動すべき時です。必要ならば情報にアクセスしずらい人(例えば家族)などへの正しい情報の伝達をお願いします。

関連リンク

Gakushi

投稿者の記事一覧

東京の大学で修士を修了後、インターンを挟み、スイスで博士課程の学生として働いていました。現在オーストリアでポスドクをしています。博士号は取れたものの、ハンドルネームは変えられないようなので、今後もGakushiで通します。

関連記事

  1. マイクロ波の技術メリット・事業メリットをお伝えします!/マイクロ…
  2. 2つの触媒と光エネルギーで未踏の化学反応を実現: 芳香族化合物の…
  3. 2023年から始めるマテリアルズ・インフォマティクスの進め方 〜…
  4. シュガーとアルカロイドの全合成研究
  5. as well asの使い方
  6. 銀の殺菌効果がない?銀耐性を獲得するバシラス属菌
  7. 太陽電池を1から作ろう:色素増感太陽電池 実験キット
  8. キノリンをLED光でホップさせてインドールに

注目情報

ピックアップ記事

  1. 改正 研究開発力強化法
  2. クリーギー グリコール酸化開裂 Criegee Glycol Oxidative Cleavage
  3. 計算化学者は見下されているのか? Part 1
  4. 理化学機器のリユースマーケット「ZAI」
  5. なぜあなたの研究は進まないのか?
  6. 2007年文化勲章・文化功労者決定
  7. リード反応 Reed Reaction
  8. タンパク質の構造と機能―ゲノム時代のアプローチ
  9. アリルC(Sp3)-H結合の直接的ヘテロアリール化
  10. DOWとはどんな会社?-1

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年3月
月 火 水 木 金 土 日
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

注目情報

最新記事

第64回ケムステVシンポ「データとともに進化する未来の化学」を開催します!

第64回ケムステVシンポの会告を致します。産業技術総合研究所主催の化学シンポジウムシリーズ(…

品質工学とマテリアルズ・インフォマティクス ― 両技術の概要と連携事例

開催概要材料開発やものづくりの現場では、探索すべき組成やプロセス条件が増えるほど組み合わせが爆発…

大学院留学してよかったこと, 悪かったこと【英語, 経済面, オーバードクターに関するお話】

海外の大学で、その大学に籍を置く大学 (院) 生として留学することは「学位留学」と呼ばれたりします。…

光前駆体法の活用によって、ヘプタセンで初の一重項分裂を観測!

第725回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院 理学研究科化学専攻 有機元素化学研究室(山田研…

【スタッフ・寄稿募集】Chem-Stationで、化学を「伝える側」になりませんか?

Chem-Station(ケムステ)は2000年に開設された国内最大の化学ポータルサイトです。大学・…

第17回大津会議―とある参加者の記録―

2026年9月28日~29日に開催された第17回大津会議についての、とある参加者の記録です。この記事…

第17回大津会議 -Otsu Conference- 2026 開催報告 ~新体制で紡ぐ「有機合成の夢」~

第17回大津会議が2026年9月28日(月)〜9月29日(火)びわ湖大津プリンスホテルにて開催されま…

有機合成化学協会誌2026年10月号:医薬品プロセス開発・σ芳香族性・含窒素複素環・メロテルペノイド二量体・高歪み化合物

有機合成化学協会が発行する「有機合成化学協会誌」2026年10月号がオンラインで公開されています。…

時代は水だ! セメントのように水と混ぜるだけで成形・硬化できる「水硬性」高分子

第724回のスポットライトリサーチは、東京科学大学物質理工学院(大塚研究室)博士前期課程2年の徳満玲…

複雑さを設計して、結晶の動きをプログラムする

第723回のスポットライトリサーチは、高知工科大学大学院工学研究科(林研究室) 博士後期課程3年の樋…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP