[スポンサーリンク]

C

ベンジルオキシカルボニル保護基 Cbz(Z) Protecting Group

[スポンサーリンク]

概要

ベンジルオキシカルボニル(benzyloxycarbonyl, CbzまたはZ)基は、カルバメート形成によってアミンの保護目的に多用される。場合によってはアルコールやフェノールの保護目的にも使われる。

強塩基によるエステル加水分解条件・強酸性条件・求核条件・弱めのヒドリド還元条件に強く、接触還元条件で除去可能。このため、Fmoc基やBoc基などと相補的に用いることが出来る。

基本文献

開発の歴史

本保護基は、1932年にMax Bergmannによってペプチド合成のために初めて使用された。

反応機構

保護

クロロギ酸ベンジル(Cbz-ClまたはZ-Cl)が最も多用される。ピリジンやトリエチルアミンを塩基として添加し、アミンと反応させる。アミノ酸などに対しては、無機塩基をもちいるショッテン・バウマン条件なども簡便である。

脱保護

Pd/C触媒を用いる接触水素還元によって脱保護するのが一般的。揮発性のトルエンとCO2だけが副生するので、後処理も簡便である。外れにくいときはパールマン触媒(Pd(OH)2)などを用いる。

反応例

Boc2O共存下でCbz脱保護を行なうと1工程でBoc基への掛け替えが行える[1]。

スクアリン酸誘導体を加えるとCbz, Fmoc, Bnを脱保護せずにオレフィンの水素添加が行える[2]。


アンモニア源の共存下にBn基の脱保護は阻害され、Cbzだけを選択的に除去可能[3]。

系中生成させたTMS-Iを用いても除去可能[4]。

Ni触媒を用いることで、複素環窒素上のCbz基だけを選択的に除去可能[5]。Alloc基はより速やかに脱保護されてしまう。

実験のテクニック・コツ

  • Pd(OAc)2とcharcholから系中でPd/Cを作る手法はより安全に水素添加が行えると報告されている[6]。

参考文献

  1. Sakaitani, M.; Hori, K.; Ohfune, Y. Tetrahedron Lett. 1988, 29, 2983. doi:10.1016/0040-4039(88)85064-0
  2. Shinada, T.; Hayashi, K.-i.; Yoshida, Y.; Ohfune, Y. Synlett 2000, 1506. DOI: 10.1055/s-2000-7655
  3. Sajiki, H. Tetrahedron Lett. 1995, 35, 3465. doi:10.1016/0040-4039(95)00527-J
  4. Tanimori, S.; Fukubayashi, K.; Kirihata, M. Tetrahedron Lett. 2001, 42, 4013. doi:10.1016/S0040-4039(01)00645-1
  5. Lipshutz, B. H.; Pfeiffer, S. S.; Reed, A. B. Org. Lett. 2011, 3, 4145. DOI: 10.1021/ol016693l
  6. Felpin, F.-X.; Fouquet, E. Chem. Eur. J. 2010, 16, 12440. doi:10.1002/chem.201001377

関連反応

  • カルバメート保護基
  • メリフィールド ペプチド固相合成法
  • アリルオキシカルボニル保護基(Alloc)
  • 2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル保護基(Troc)
  • 2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル保護基(Teoc)
  • 9-フルオレニルメチルオキシカルボニル保護基(Fmoc)
  • tert-ブトキシカルボニル保護基(Boc)

関連書籍

外部リンク

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. アルキンジッパー反応 Alkyne Zipper Reacito…
  2. バルビエ・ウィーランド分解 Barbier-Wieland De…
  3. NHPI触媒によるC-H酸化 C-H Oxidation wit…
  4. ミッドランド還元 Midland Reduction
  5. パール・クノール チオフェン合成 Paal-Knorr Thio…
  6. シュタウディンガー反応 Staudinger Reaction
  7. ワッカー酸化 Wacker oxidation
  8. 不均一系接触水素化 Heterogeneous Hydrogen…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. ニルスの不思議な受賞 Nils Gustaf Dalénについて
  2. 最近の有機化学注目論文1
  3. 未来を拓く多彩な色素材料
  4. 2021年化学企業トップの年頭所感を読み解く
  5. 北大触媒化研、水素製造コスト2―3割安く
  6. エッシェンモーザーメチレン化 Eschenmoser Methylenation
  7. 化学クラスタ発・地震被害報告まとめ
  8. 分子の自己集合プロセスを多段階で制御することに成功 ―分子を集めて数百ナノメートルの高次構造を精密合成―
  9. Passerini反応を利用できるアルデヒドアルデヒド・イソニトリル・カルボン酸・アミン(
  10. 一流科学者たちの経済的出自とその考察

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2018年7月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

注目情報

最新記事

期待度⭘!サンドイッチ化合物の新顔「シクロセン」

π共役系配位子と金属が交互に配位しながら環を形成したサンドイッチ化合物の合成が達成された。嵩高い置換…

塩基が肝!シクロヘキセンのcis-1,3-カルボホウ素化反応

ニッケル触媒を用いたシクロヘキセンの位置および立体選択的なカルボホウ素化反応が開発された。用いる塩基…

中国へ行ってきました 西安・上海・北京編①

2015年(もう8年前ですね)、中国に講演旅行に行った際に記事を書きました(実は途中で断念し最後まで…

アゾ重合開始剤の特徴と選び方

ラジカル重合はビニルモノマーなどの重合に用いられる方法で、開始反応、成長反応、停止反応を素反応とする…

先端事例から深掘りする、マテリアルズ・インフォマティクスと計算科学の融合

開催日:2023/12/20 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足の影…

最新の電子顕微鏡法によりポリエチレン分子鎖の向きを可視化することに成功

第583回のスポットライトリサーチは、東北大学大学院 工学研究科 応用化学専攻 陣内研究室の狩野見 …

\脱炭素・サーキュラーエコノミーの実現/  マイクロ波を用いたケミカルリサイクル・金属製錬プロセスのご紹介

※本セミナーは、技術者および事業担当者向けです。脱炭素化と省エネに貢献するモノづくり技術の一つと…

【書籍】女性が科学の扉を開くとき:偏見と差別に対峙した六〇年 NSF(米国国立科学財団)長官を務めた科学者が語る

概要米国の女性科学者たちは科学界のジェンダーギャップにどのように向き合い,変えてきたのか ……

【太陽ホールディングス】新卒採用情報(2025卒)

■■求める人物像■■「大きな志と好奇心を持ちまだ見ぬ価値造像のために前進できる人…

細胞代謝学術セミナー全3回 主催:同仁化学研究所

細胞代謝研究をテーマに第一線でご活躍されている先生方をお招きし、同仁化学研究所主催の学術セミナーを全…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP