[スポンサーリンク]

odos 有機反応データベース

サレット・コリンズ酸化 Sarett-Collins Oxidation

[スポンサーリンク]

 

概要

1953年、Sarettらは、無水クロム酸のピリジン溶液をアルコールの酸化に用いる方法を報告し、その後1968年にCollinsらが、赤色のCrO3・2Pyを結晶として単離し、ジクロロメタン中で反応を行う改良法を見いだした。

酸に不安定なアルデヒド・ケトン合成に有用であるが、基質に対して大過剰(6当量以上)の酸化剤が必要となる。吸湿性に起因する試薬の不安定性ゆえ、用時調製の必要があるという欠点もある。

 

基本文献

  • Poos, G. I.; Arth, G. E.; Beyler, R. E.; Sarett, H. J. Am. Chem. Soc. 1953, 75, 422. doi:10.1021/ja01098a049
  • Collins, J. C.; Hess, W. W.; Frank, F. J. Tetrahedron Lett. 1968, 3363.
  • Collins, J. C.; Hess, W. W. Org. Synth. Coll. Vol. 6, 644 (1988) [website]
  • Ley, S. V.; Madin, A. Comprehensive Organic Synthesis 19917, 253. (Review)
  • Luzzio, F. A. Org. React. 1998, 53, 1. (Review)

 

反応機構

sarett_oxi_2.gif

反応例

Periplanone Bの合成[1] sarett_oxi_3.gif

実験手順

Sarett試薬の調製[2]

温度計、吸湿管、スターラーバーを備えた1L三方フラスコ中に、ピリジン(500mL)を入れ、氷浴で15℃程度に保つ。無水CrO3
(68g, 0.68 mol)を30分かけて徐々に加える(試薬を加えるにつれて黄色綿状沈殿と反応液の粘土向上が観測される)。温度は20℃を超えないように注意する。添加終了後、攪拌しながら室温に向上させる(1時間程度で反応液が深赤色になり、結晶の生成が観測される)。ピリジン上清をdecantationで除き、結晶を無水石油エーテル(250mL)で数度洗う。グラスフィルターで濾過しつつ、なるべく空気に触れないように石油エーテルで洗う。乾燥させて赤色結晶であるCrO3・2Py(150-160g,
85-91%)を得る。生成物は高吸湿性であり、0℃で保存する。

ヘプタナールの合成[2]

sarett_oxi_4.gif
スターラーバーを備えた乾燥1L三方丸底フラスコに無水ジクロロメタン(650mL)およびCrO3・2Py(77.5g,
0.300mol)を加えて室温で攪拌する。引き続き1-ヘプタノール(5.8g, 0.050mol)を一度に加える。20分攪拌後、上清溶液を茶色ガム状の不溶物からdecantationで別容器に移す。不溶物はエーテル(100mLx3)で洗う。有機層を5%水酸化ナトリウム水溶液(300mL)、5%塩酸(100mL)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100mLx2)、飽和食塩水(100mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥する。溶媒除去後、蒸留精製(80-84℃,
65mmHg)により、ヘプタナール(4.0-4.8g, 70-84%)を得る。

 

実験のコツ・テクニック

※Sarett試薬を調製する時には、必ず過剰のピリジンにクロム酸を少しずつ加える。逆を行うと爆発の危険があるので絶対に行ってはいけない。

 

参考文献

[1] Still, W. C. J. Am. Chem. Soc. 1979, 101, 2493. DOI: 10.1021/ja00503a048 [2] Collins, J. C.; Hess, W. W. Org. Synth. Coll. Vol. 6, 644 (1988) [website]

 

関連反応

 

関連書籍

 

外部リンク

関連記事

  1. ブレデレック ピリミジン合成 Bredereck Pyrimid…
  2. MAC試薬 MAC Reagent
  3. ウルツ反応 Wurtz Reaction
  4. クラブトリー触媒 Crabtree’s Cataly…
  5. マラプラード グリコール酸化開裂 Malaprade Glyco…
  6. アルキンジッパー反応 Alkyne Zipper Reacito…
  7. 求核的フルオロアルキル化 Nucleophilic Fluoro…
  8. N-オキシドの合成 Synthesis of N-oxide

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. いざ、低温反応!さて、バスはどうする?〜水/メタノール混合系で、どんな温度も自由自在〜
  2. 背信の科学者たち 論文捏造はなぜ繰り返されるのか?
  3. 炭素-炭素結合活性化反応 C-C Bond Activation
  4. 元素戦略 Element Strategy
  5. 粉いらずの指紋検出技術、米研究所が開発
  6. 【速報】2013年イグノーベル化学賞!「涙のでないタマネギ開発」
  7. 向山アルドール反応 Mukaiyama Aldol Reaction
  8. アハメド・ズウェイル Ahmed H. Zewail
  9. 化学コミュニケーション賞2022が発表
  10. マーティン・ウィッテ Martin D. Witte

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年8月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

十全化学株式会社ってどんな会社?

私たち十全化学は、医薬品の有効成分である原薬及び重要中間体の製造受託を担っている…

化学者と不妊治療

これは理系の夫視点で書いた、私たち夫婦の不妊治療の体験談です。ケムステ読者で不妊に悩まれている方の参…

リボフラビンを活用した光触媒製品の開発

ビタミン系光触媒ジェンタミン®は、リボフラビン(ビタミンB2)を活用した光触媒で…

紅麹を含むサプリメントで重篤な健康被害、原因物質の特定急ぐ

健康食品 (機能性表示食品) に関する重大ニュースが報じられました。血中コレステ…

ユシロ化学工業ってどんな会社?

1944年の創業から培った技術力と信頼で、こっそりセカイを変える化学屋さん。ユシロ化学の事業内容…

日本薬学会第144年会付設展示会ケムステキャンペーン

日本化学会の年会も終わりましたね。付設展示会キャンペーンもケムステイブニングミキ…

ペプチドのN末端でのピンポイント二重修飾反応を開発!

第 605回のスポットライトリサーチは、中央大学大学院 理工学研究科 応用化学専…

材料・製品開発組織における科学的考察の風土のつくりかた ー マテリアルズ・インフォマティクスを活用し最大限の成果を得るための筋の良いテーマとは ー

開催日:2024/03/27 申込みはこちら■開催概要材料開発を取り巻く競争や環境が激し…

石谷教授最終講義「人工光合成を目指して」を聴講してみた

bergです。この度は2024年3月9日(土)に東京工業大学 大岡山キャンパスにて開催された石谷教授…

リガンド効率 Ligand Efficiency

リガンド効率 (Ligand Efficacy: LE) またはリガンド効率指数…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP