[スポンサーリンク]

一般的な話題

マイクロ波プロセスの工業化 〜環境/化学・ヘルスケア・電材領域での展開と効果〜(2)

[スポンサーリンク]

本シリーズでは、マイクロ波のアプリケーションに焦点を絞り、その原理や効果、経済的なメリット、新たなプロダクトの創出、スケールアップ事例について紹介する。前回の記事ではアプリケーションの具体的事例の一部を紹介した。本記事では、続いて具体的事例について紹介する。

エマルジョン系

マイクロ波は反応基質や触媒に直接エネルギー伝達できる。この性質を利用することで、水層と油層が混在するエマルジョン系の化学反応においても、水層の選択加熱によって反応促進や劣化抑制を行える。

外部加熱方式においては、水層と油層のいずれも溶解する溶媒の使用が必要となる。最終製品への溶媒残留を嫌い、反応の無溶媒化を試みたとしても、今度は高温伝熱面との接触による着色や劣化などの課題が発生してしまう。

しかし、基質や触媒を直接、選択的に加熱できるマイクロ波反応においては無溶媒化だけでなく、高温な伝熱面を必要としないので着色や劣化も回避できる(出願済み)。また、無溶媒化は、設備の小型化や連続化にも潜在的に寄与する。

乾燥、凍結乾燥

従来の乾燥/凍結乾燥プロセスにおいては、外部雰囲気や熱媒などのエネルギー媒体を通じて、蒸発・昇華に必要なエネルギーを乾燥対象物へ間接的に供給する。エネルギーは、乾燥対象物の外部表面から供給されるため、対象物内部での温度分布形成は避けられない。このため、内部乾燥効率の低下や、乾燥時間の増大、表面の過乾燥による品質劣化などが発生する。

一方で、波そのものがエネルギーの伝達媒体であるマイクロ波乾燥では、乾燥対象物(Ex. 氷、水、溶媒)へ直接エネルギーが伝達される。したがって、温度分布が形成されにくく、内部加熱も可能である。効果として、乾燥速度向上や均一乾燥、温度低下による品質向上を達成することができる。

以下に、セラミックスの乾燥事例をご紹介する。マイクロ波と大気炉による乾燥において、セラミックスの内部温度および表面温度をモニターした。通常乾燥 (大気炉)において生じる外側から内側にかけての温度分布が、マイクロ波乾燥では生じていないことが分かる。

また、凍結乾燥は極めて長い装置占有時間が必要であり、製造コストが一つの課題として知られる。こちらにおいても、マイクロ波の活用によって、氷分子への選択的なエネルギー伝達ができるため、凍結乾燥速度は2倍以上に向上することを確認している。

以下は、モデル実験による通常法とマイクロ波凍結乾燥との比較結果、および当社保有の検証設備である。グラフからも乾燥時間が格段に短縮されていることが読み取れる。

ナノ粒子合成(均一加熱)

ナノ粒子の合成は、温度依存的な粒子成長を伴うプロセスである。電材などの用途において粒子径分布の最適化は極めて重要だが、外部伝熱面からのエネルギー伝達に依存する通常加熱法においては、反応器内部に温度分布が生じ、合成されるナノ粒子の粒子径分布が課題となる。温度分布はスケールアップに伴い大きくなってしまうため、ナノ粒子合成のスケールアップは一般に困難であると言われる。

一方で、マイクロ波は反応液を直接、内部から加熱することができるため、反応器内部の温度分布を均一化できる。当社は、ナノ粒子の粒子径分布狭小化を実現しつつスケールアップも達成している。

フィルム加熱

実は、フィルム領域においてもマイクロ波は活用できる。用途は、乾燥、表面処理、剥離、接着など様々で、Roll to rollのようなフィルムが搬送された環境においても適用することが可能である。

例えば、フィルムの特定層の加熱・焼成や水の選択加熱による数倍以上の乾燥速度向上も可能である。

また、接着剤の選択加熱によって、基材への熱ダメージを低減することも可能である。

当社では、顧客所有のフィルム製造ラインにアドオンすることを想定した設備として、フィルム加熱装置を開発・保有している。マイクロ波の電磁界を任意の箇所に集中させ、乾燥や焼成を効率化することができる。

焼成

最後に、マイクロ波による固体焼成を紹介する。当社においても、1000℃を超える領域での焼成を扱っている。物質選択的な加熱を得意とするマイクロ波焼成においては、対象物質温度>>雰囲気温度の環境を作ることが可能である。外部雰囲気も含めて全体を加熱する通常加熱とは、この点で大きく異なる。

そのため、省エネ化や急速昇温、バルク温度低減による装置負荷低減、さらには新規物性発現が見られる例もある。

本記事はマイクロ波化学株式会社からの寄稿記事です。

会社プロフィール

マイクロ波化学株式会社

マイクロ波を活用した製造プロセスの開発や、従来技術では製造困難な新素材開発に取り組む阪大発ベンチャーです。この技術は、医薬、電子材料、食品、燃料など、幅広い分野における製造プロセスへ応用が可能で、弊社は国内外の様々なメーカーとの共同開発や独自プラント立ち上げを通し、化学産業のオープンイノベーションを推進しています。

大阪府吹田市山田丘2番8号テクノアライアンス棟3階

代表番号:06-6170-7595

メール:info@mwcc.jp

URL:https://mwcc.jp/

関連記事

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. ケムステタイムトラベル2010 ~今こそ昔の記事を見てみよう~
  2. Reaxys Ph.D Prize2014ファイナリスト45名発…
  3. ポンコツ博士の海外奮闘録XXIV ~博士の危険地帯サバイバル 筒…
  4. 近況報告PartI
  5. ケムステイブニングミキサー2026に参加しよう!
  6. 第21回ケムステVシンポ「Grubbs触媒が導く合成戦略」を開催…
  7. 電流励起による“選択的”三重項励起状態の生成!
  8. 多種多様な酸化リン脂質を網羅的に捉える解析・可視化技術を開発

注目情報

ピックアップ記事

  1. 分子間エネルギー移動を利用して、希土類錯体の発光をコントロール!
  2. 第15回ケムステVシンポジウム「複合アニオン」を開催します!
  3. 計算化学:DFT計算って何?Part II
  4. 日本化学会 第11回化学遺産認定、新たに4件を発表
  5. バイオマスからブタジエンを生成する新技術を共同開発
  6. タミフル(オセルタミビル) tamiflu (oseltamivir)
  7. 実験計画・試行錯誤プラットフォームmiHubの大型アップデートのご紹介 ー研究者を中心としたマテリアルズ・インフォマティクスの組織的活用ー
  8. 斬新な官能基変換を可能にするパラジウム触媒
  9. 塩基が肝!シクロヘキセンのcis-1,3-カルボホウ素化反応
  10. SFTSのはなし ~マダニとその最新情報 前編~

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年10月
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031  

注目情報

最新記事

アミトラズが効かなくなったアメリカのダニのはなし

Tshozoです。以前からダニに関し色々記事を書いていましたが(「ミツバチに付くダニのはなし」「飲む…

準備や実験操作が簡便な芳香環へのカルボラン導入法の開発

第 696回のスポットライトリサーチは、大阪大学大学院工学研究科 応用化学専攻 有機…

第 19 回 日本化学連合シンポジウム 「モビリティを支える化学」

開催趣旨人や物の移動を支えるモビリティは、持続可能で安全な社会の実現に不可欠な基…

CERNでは、なぜKNFのダイアフラムポンプを採用しているでしょうか―それは、粒子衝突実験のためにコン タミネーションの無い混合ガスを保証できるから

スイスとフランスをまたぐように設けられたCERNは、さまざまな円形および線形粒子加速器を運用して…

設定温度と系内の実温度のお話【プロセス化学者のつぶやき】

今回は設定温度と系内実温度の違いについて取り上げたいと思います。これは分野としてはプロセス化学に…

Carl Boschの人生 その12

Tshozoです。前回の続きをいきます。ここまでは第一次世界大戦がはじまる前のBoschたちの華…

逆方向へのペプチド伸長!? マラリアに効く環状テトラペプチド天然物の全合成

第695回のスポットライトリサーチは、北里大学大学院感染制御科学府(生物有機化学研究室)博士後期課程…

MOF の単一金属サイトで2分子の CO が “協働的” に吸着

金属–有機構造体(MOF)における金属サイトにおいて複数のガスが逐次的に吸着する際に、シグモイド型の…

令和7年度KISTEC教育講座 〜物質の付着はコントロールできる〜中間水を活かした材料・表面・デバイス設計

1 開講期間令和8年3月9日(月)、10日(火)2 コースのねらい、特色 本講座では、材…

リサイクル・アップサイクルが可能な植物由来の可分解性高分子の開発

第694回のスポットライトリサーチは、横浜国立大学大学院理工学府(跡部・信田研究室)卒業生の瀬古達矢…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP