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有機合成化学協会誌2020年10月号:ハロゲンダンス・Cpルテニウム–Brønsted酸協働触媒・重水素化鎖状テルペン・エラスティック結晶・複核ホウ素ヘテロ環

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有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2020年10月号がオンライン公開されました。

後期が始まりましたね。年度末に向けてどんどん忙しくなる今日この頃、有機合成化学協会誌を読んで気合いを入れましょう。

今月号も充実の内容です。

キーワードは、「ハロゲンダンス・Cpルテニウム–Brønsted酸協働触媒・重水素化鎖状テルペン・エラスティック結晶・複核ホウ素ヘテロ環です。

今回も、会員の方ならばそれぞれの画像をクリックすればJ-STAGEを通してすべてを閲覧することが可能です。

巻頭言:有合協の師匠たち

今月号は、静岡県立大学薬学部の菅 敏幸 教授による巻頭言です。

改めて考えてみれば、有機合成化学協会がどんなところか知りませんでした。菅先生の巻頭言から、とても楽しそうなところだと感じます。オープンアクセスです。

ハロゲンダンスを用いる多置換ヘテロ芳香族化合物の合成

岡野健太郎*

2016年度有機合成化学奨励賞

神戸大学大学院工学研究科

本総合論文では、「ハロゲンダンス」と呼ばれる芳香環上のブロモ基の移動反応について、最近の成果が述べられています。ブロモ基はさまざまな変換反応の起点となる重要な官能基であり、従来の芳香族求電子置換では導入が難しい位置にブロモ基を移動させられる本反応は、官能基導入された芳香環を自在に合成するための一味違う手法として利用できそうです。芳香族化合物の官能基化でお困りの方は是非ご一読ください。

Cpルテニウム–Brønsted酸協働触媒を用いる脱水型分子内不斉アリル化によるキラルヘテロ環化合物の合成

田中慎二*

2017年度有機合成化学奨励賞受賞

名古屋大学物質科学国際研究センター

本総合論文は,キラルなピリジン-2-カルボン酸誘導体が配位したCpルテニウム錯体を触媒とする脱水型分子内不斉アリル化反応による,キラルヘテロ環化合物の合成について述べています。また,反応基質の活性化や不斉誘起に必要な配位子の構造の調査,反応機構の考察も行っています。

重水素化鎖状テルペンを用いたテルペン生合成反応機構の解析

品田哲郎*

大阪市立大学大学院理学研究科

“渋い”、“愚直な”、“いぶし銀的な” 有機合成がいかに生合成経路の解明研究に決定的な証拠を与えることができるのかということを示していて、有機合成でなければ達成できない研究課題の1つだと思います。生合成にも興味のある学生諸氏におすすめです。

柔軟で稠密なπ造形システム共役系分子からなるエラスティック結晶の創生

林 正太郎*

*高知工科大学環境理工学群

分子・分子集合構造をうまくデザインすることで「柔らかく、曲がる」エラスティックな性質をもつ結晶材料を創り出すことができます。本総合論文では、エラスティック結晶を得るための合理的な分子デザイン戦略とともに、エラスティック結晶にπ電子機能を付与することで実現できる機能物質科学への展開が記述されています。ぜひご一読下さい!

特異なB3NO2組成6員環を有する複核ホウ素ヘテロ環の設計,合成,およびアミド化触媒への展開

野田秀俊、柴﨑正勝*、熊谷直哉*

*微生物化学研究所

本総合論文では著者らが近年取り組んできた特異なB3NO2組成を有するホウ素ヘテロ環について,特にアミド化触媒への展開に関して紹介しています。目を引く構造のこの分子がどのように誕生したか,ぜひご一読ください。

Review de Debut

今月号のRebut de Debutは1件です。オープンアクセスなのでぜひ。

フッ化スルフリル基を用いた硫黄(VI)フッ化物交換反応(SuFEx)とアジド化反応 (神奈川大学工学部) 澄本慎平

Message from Young Principal Researcher (MyPR):境界領域研究への憧れと合成化学者の役割

今月号のMyPRは、九州大学大学院薬学研究院の平井 剛教授による寄稿記事です。

平井剛教授

若いうちに有機合成の力を、という部分に筆者も強く共感します。オープンアクセスです!

感動の瞬間:天然物合成に魅せられて

今月号の感動の瞬間は、長崎大学の畑山 範教授による寄稿記事です。

天然物合成の醍醐味を、誌面から感じることができます。必見です。

 

これまでの紹介記事は有機合成化学協会誌 紹介記事シリーズを参照してください。

関連書籍

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博士(理学)。大学教員。娘の育児に奮闘しつつも、分子の世界に思いを馳せる日々。

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