[スポンサーリンク]

ケムステニュース

ケムステニュース 化学企業のグローバル・トップ50が発表【2020年版】

[スポンサーリンク]

It’s no secret that the COVID-19 pandemic has thrown the global economy into the deepest recession in decades, wrecking big chemical end markets such as automotive, aerospace, and oil exploration. But as evidenced by C&EN’s latest Global Top 50 survey of chemical producers, which is based on data from the 2019 fiscal year, economic activity was slowing down before anyone had heard of the novel coronavirus. (引用:C&EN7月27日)

今年もC&ENより化学企業のグローバル・トップ50が発表されました。統計は、C&ENが調査した2019年の化学品の売上に基づいたもので、各社の化学品以外の売り上げを除いた結果になっています。

総評

2018年は成長の減速が全体的に見られましたが、2019年はトップ50社の売り上げは2018年比で5%の減少になり、コロナウィルスのパンデミック前から減衰に転じていたことになります。この減衰は、アメリカと中国の貿易摩擦の問題、中国の経済成長の減速、自動車産業といった主要産業の不活性化が原因として挙げられています。もちろん2020年の各社の業績が深刻になるのは明らかで、2019年よりもさらに業績が悪くなることが予測されています。

ランキングの変動

まず、昨年一位だったDowDuPontは、2019年は、DowDuPont,  CortevaAgriscienceとしての年間の売り上げとなり、Dowとしては3位、DuPontとしては14位にランクインしました。

DowDuPontのサイトを開くと3社へのリンクのみが表示される

Linde plcも同様にPraxairとの合併後の一年の売り上げになったため、10位にランクアップし産業ガスとしてはAir Liquideを抜き最大手になりました。

産業ガス大手のランク

トップ10では、IneosFormosa Plastics三菱ケミカルLyondellBasellが入れ替わりそれぞれランクを一つ上げ下げしました。2019年では、50位圏外からジャンプアップした企業はありませんでした。化学業界全体として売り上げが減少したことから、大きく売り上げを伸ばすことができた会社はなかったと推測されます。

5位と6位の順位が逆転

8位と9位の順位が逆転

長くにわたってトップに君臨してきたBASFですが、近年2位のSinopecとの売り上げ差は小さくなってきていて、数年以内にはSinopecが世界最大の化学企業となる可能性もあります。一方のBASFも生き残りをかけて色素事業をDICに売却する一方、Solvayのナイロン6,6のビジネスを購入するなどの事業の再編を行っているようです。

Shinopecのロゴ、中国国内ではガソリンスタンドも展開している。

ランクインした日本企業の動向

まず、日本企業による買収がいくつか報道されています。三菱ケミカルでは、Gelest社Mingerグループを買収すると発表しました。特にMingerグループでは、エンジニアリングプラスチックについて独自の優れたリサイクル技術を保有しているため、プラスチックのリサイクル事業をより進めるために買収したと考えられます。また住友化学は、Nufarm社の南米のビジネスを取得し、旭化成はDient社の自動車内装ファブリック事業を買収しました。DICは上記の通り、BASFの色素事業を引き継ぐため、このランキングで40位ほどの売り上げになると予想されています。

実際、C&ENのコメントの多くは、2019年についてではなく2020年におけるコロナウィルスの影響についてであり、各社の事業内容からそのインパクトの大小を予測しています。特に航空、自動車関連と石油・ガスに関わるビジネスが大きく影響を受けるとしていて、東レや三井化学は今年の業績が心配されています。大手の化学企業では、たくさんの製品群を持ち、その中で複数の事業に力を入れていることが多いですが、このコロナウィルスにより、重点的に投資を行う事業を大きく変える企業が出てくると予測します。

設備投資と研究投資の動向

記事の中盤には、設備投資と研究投資の実績が掲載させれています。2018年と比べて設備投資の割合を増やした企業が減らした企業より多いことがわかりますが、研究投資については、増やした企業の割合は若干多いにとどまります。売り上げが少なくなれば、投資を減らすのは自然なことですが技術開発に関わる者としては、より便利な未来のために研究投資を続けてほしいと思います。また、コロナウィルスの影響で生活様式が変化しているように化学における研究活動のスタイルもコロナウィルスの影響で変化すると感じます。具体的にはAIを駆使した新規物質の探索やスマートラボの導入が促進されるのではないでしょうか。

2020年も半年が過ぎましたが、コロナウィルスが収まる気配はありません。しかし、来年のこのニュースを取り上げる際には、復活の兆しが見えていることを切に願います。

関連書籍

グローバル・トップ5のケムステ過去記事

Zeolinite

投稿者の記事一覧

ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

関連記事

  1. 米ファイザー、感染予防薬のバイキュロンを買収
  2. 抗がん剤などの原料の新製造法
  3. 富士写、化学材料を事業化
  4. 新しい抗生物質発見:MRSAを1分で99.99%殺菌
  5. 超高性能プラスチック、微生物で原料を生産
  6. 関大グループ、カプロラクタムの新製法開発
  7. 「物質と材料のふしぎ」4/17&21はNIMS一般公開
  8. 世界初の「窒化タンタル光触媒」、可視光で水分解

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 光触媒に相談だ 直鎖型の一級アミンはアンモニア水とアルケンから
  2. 精密分子設計による高感度MRI分子プローブの開発 ~早期診断に向けたがん関連酵素活性の生体内リアルタイム計測~
  3. 第16回次世代を担う有機化学シンポジウム
  4. 植村酸化 Uemura Oxidation
  5. 動画で見れる!アメリカ博士留学生の一日
  6. 【PR】Chem-Stationで記事を書いてみませんか?【スタッフ・寄稿募集】
  7. 化学遺産財団
  8. ReadCubeを使い倒す!(2)~新着論文チェックにもReadCubeをフル活用!~
  9. 産学それぞれの立場におけるマテリアルズ・インフォマティクス技術活用
  10. ベロウソフ・ジャボチンスキー反応 Belousov-Zhabotinsky(BZ) Reaction

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年8月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

【太陽ホールディングス】新卒採用情報(2025卒)

■■求める人物像■■「大きな志と好奇心を持ちまだ見ぬ価値造像のために前進できる人…

細胞代謝学術セミナー全3回 主催:同仁化学研究所

細胞代謝研究をテーマに第一線でご活躍されている先生方をお招きし、同仁化学研究所主催の学術セミナーを全…

マテリアルズ・インフォマティクスにおける回帰手法の基礎

開催日:2023/12/06 申込みはこちら■開催概要マテリアルズ・インフォマティクスを…

プロトン共役電子移動を用いた半導体キャリア密度の精密制御

第582回のスポットライトリサーチは、物質・材料研究機構(NIMS) ナノアーキテクトニクス材料研究…

有機合成化学協会誌2023年11月号:英文特別号

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2023年11月号がオンライン公開されています。…

高懸濁試料のろ過に最適なGFXシリンジフィルターを試してみた

久々の、試してみたシリーズ。今回試したのはアドビオン・インターチム・サイエンティフィ…

細胞内で酵素のようにヒストンを修飾する化学触媒の開発

第581回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院 薬学系研究科 有機合成化学教室(金井研究室)の…

カルロス・シャーガスのはなし ーシャーガス病の発見者ー

Tshozoです。今回の記事は8年前に書こうと思って知識も資料も足りずほったらかしておいたのです…

巨大な垂直磁気異方性を示すペロブスカイト酸水素化物の発見 ―水素層と酸素層の協奏効果―

第580回のスポットライトリサーチは京都大学大学院工学研究科物質エネルギー化学専攻 陰山研究室の難波…

2023年度第1回日本化学連合シンポジウム「ヒューメインな化学 ~感覚の世界に化学はどう挑むか~」

人間の幸福感は、五感に依るところが大きい。化学は文明的で健康的な社会を支える物質を継続的に産み出して…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP