[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第73回―「Nature Chemistryの編集者として」Gavin Armstrong博士

[スポンサーリンク]

第73回の海外化学者インタビューは、ガビン・アームストロング博士です。Nature Chemistry誌のAssociate Editor(訳注:2020年2月現在はSenior Editor)を務めています。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

それは確かに、ただ流されてなってしまうような職業ではないですね。学生時代に「化学者になりたい」と思ったことは確かにありませんでした。学校の化学は楽しかったので、大学でも続けました。物理的側面が複雑になっていくにつれて、ますます没頭するようになり、他のことをやろうとは思わなくなりました。

出版業に移った理由は、これ以上の時間を研究室で過ごす自分がイメージできないことに気付いたからです。自分の研究よりも他人の研究を読んでいる方が楽しかったのです。また、かなり専門的なプロジェクトを行うよりも、もっと多様な科学を読むことに時間を割きたいと思いました。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

常に出版業に落ち着いていたとは思いますが、もし自分で執筆できるものを選ぶとしたら、スポーツです。フットボール(サッカー)とクリケットが大好きで、観戦してお金をもらえるなら素晴らしいことです!

Q. 概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?

とても重要だと思うことが二つあります。一つ目は、現在文明が直面しているエネルギーや持続可能性などの大きな問題に取り組むだけでなく、まだ十分に理解されていない根本的な問題に取り組み続けることです。二つ目は、科学を熱心に教えたり、議論したりすることです。情熱的な教師は、専門家でない人や学生の関心を高めます。偉大な教師たちにインスパイアされ、科学の仕事に就くことになったと多くの化学者が話していますが、軽視すべきではない責務でしょう。

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

本心からの答えと「プロとして」の答えがあります。本心からの答えはブライアン・クラフです。70~80年代にフットボール(サッカー)ファンでなかった人のために説明すると、彼はいくつかのイングランドチームの監督(コーチ)でした。彼は優れた人間マネジメントを基本とすることで、任期中、(イギリスやヨーロッパの)あらゆる大会で勝利を収めました。彼はチームを信頼し、またチームは彼を信頼しました。彼がチームに頼みごとをしたら、なぜそうするのか彼らが理解していなかったとしても(大学院生なら気持ちがわかる?)、とにかくやるでしょう(大学院生ならわかる?)。

プロとしての答えはエド・ローレンツです。悲しいことについ最近亡くなりましたが、彼の遺産は永遠に残ります。気象システムにおける決定論的カオスの発見は、一部の気象学者にしか興味がないように思われますが、これらのシステムの背後にある固有の数学は、生物学者から経済学者に至るまで、非常に多くの研究者にとって重要で、決定論的システムに対する新しい見方を生み出しました。彼には「エウレカ」の瞬間があったでしょうから、その話を聞けるなら素晴らしいです!

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

実験室で行った最後の実験はよく覚えていません。博士課程の途中でコンピュータの仕事をするために研究室を出たのですが、戻るのを忘れてしまいました。シミュレーションを含めていいなら、最後に実行したバッチは、以前Belousov-Zhabotinsky反応で観察したある種の螺旋パタンに関連していました。実験は、これまで報告がない、明らかに説明できない振る舞いをしていました。シミュレーションでは、何をやってもその振る舞いを再現できませんでした。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

本はニック・ホーンビィの「ハイ・フィデリティ」です。史上最高のパブゲームである「トップ5」のコンセプトを教えてくれました(説明が必要かも知れませんが、基本的に、トップ5の曲、映画、論文、Nature誌の今年の論文、1970の刑事ショーなどを挙げていくだけです)。音楽に関しては、確実にオアシスでしょうか。古典です。

原文:Reactions – Gavin Armstrong

※このインタビューは2008年7月18日に公開されました。

 

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 第九回 均一系触媒で石油化学に変革を目指すー山下誠講師
  2. 第三回 ナノレベルのものづくり研究 – James …
  3. 第150回―「触媒反応機構を解明する計算化学」Jeremy Ha…
  4. 第三回 北原武教授ー化学と生物の融合、ものつくり
  5. 第32回「生きている動物内で生理活性分子を合成して治療する」田中…
  6. 第74回―「生体模倣型化学の追究」Ronald Breslow教…
  7. 第25回「ペプチドを化学ツールとして細胞を操りたい」 二木史朗 …
  8. 第151回―「生体における金属の新たな活用法を模索する」Matt…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. “関節技”でグリコシル化を極める!
  2. サイアメントの作ったドラマ「彼岸島」オープニングがすごい!
  3. 化学者の卵、就職活動に乗りだす
  4. 水蒸気侵入によるデバイス劣化を防ぐ封止フィルム
  5. セレンディピティ:思いがけない発見・発明のドラマ
  6. リンダウ島インセルホール
  7. ノーベル化学賞受賞者が講演 3月1日、徳島文理大学
  8. バートン トリフルオロメチル化 Burton Trifluoromethylation
  9. オゾンと光だけでアジピン酸をつくる
  10. カーボンナノチューブ /carbon nanotube (CNT)

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年3月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

注目情報

最新記事

紅麹問題に進展。混入物質を「プベルル酸」と特定か!?

紅麹問題に進展がありました。各新聞社が下記のように報道しています。小林製薬(大阪市)がつ…

【十全化学】新卒採用情報

当社は行動指針の一つとして、「会社と仕事を通じて自己成長を遂げ、仕事を愉しもう!…

【十全化学】核酸医薬のGMP製造への挑戦

「核酸医薬」と聞いて、真っ先に思い起こすのは、COVID-19に対するmRNAワ…

十全化学株式会社ってどんな会社?

私たち十全化学は、医薬品の有効成分である原薬及び重要中間体の製造受託を担っている…

化学者と不妊治療

これは理系の夫視点で書いた、私たち夫婦の不妊治療の体験談です。ケムステ読者で不妊に悩まれている方の参…

リボフラビンを活用した光触媒製品の開発

ビタミン系光触媒ジェンタミン®は、リボフラビン(ビタミンB2)を活用した光触媒で…

紅麹を含むサプリメントで重篤な健康被害、原因物質の特定急ぐ

健康食品 (機能性表示食品) に関する重大ニュースが報じられました。血中コレステ…

ユシロ化学工業ってどんな会社?

1944年の創業から培った技術力と信頼で、こっそりセカイを変える化学屋さん。ユシロ化学の事業内容…

日本薬学会第144年会付設展示会ケムステキャンペーン

日本化学会の年会も終わりましたね。付設展示会キャンペーンもケムステイブニングミキ…

ペプチドのN末端でのピンポイント二重修飾反応を開発!

第 605回のスポットライトリサーチは、中央大学大学院 理工学研究科 応用化学専…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP