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分子内ラジカル環化 Intramolecular Radical Cyclization

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概要

ハロゲン(もしくはカルコゲニド化合物)とラジカル開始剤から生成する炭素ラジカルは求核的性質を帯びる。分子内の適切な位置にα,β-不飽和カルボニル化合物やアルケン、アルキンが存在すれば反応を起こし、環化成績体を与える。

特にハロアセタールを合成してからラジカル環化を行う手法をUeno-Stork環化と呼ぶ。

 

基本文献

  • Ueno, Y.; Chino, K.; Watanabe, M.; Moriya, O.; Okawara, M. J. Am. Chem. Soc. 1982, 104, 5564. DOI: 10.1021/ja00384a082
  • Stork, G.; Mook, R.Jr.; Biller, S. A.; Rychnovsky, S. A. J. Am. Chem. Soc. 1983, 105, 3741. DOI: 10.1021/ja00349a082

<review>

 

反応機構

多くの炭素ラジカルは求核的性質を帯びるため、電子不足オレフィンに対する環化が起こりやすい。radical_cycle_8.gif

5-exo環化は6-endo環化のおよそ5倍速く、ほとんどが5-exo選択的に進行する。

5-exo環化の立体選択性に関しては、Beckwithモデルにて説明される。ただし極性官能基やヘテロ原子が置換するばあいはこのモデルから外れることが多い。(参考:Aust. J. Chem. 1983, 36, 545.)

radical_cycle_9

反応例

混み合った位置の炭素-炭素結合導入に威力を発揮する。
12a-deoxytetracyclineの合成[1]: Ueno-Stork環化を効果的に活用している。
radical_cycle_1.gif
Merrilactone Aの合成[2] radical_cycle_2.gif
Merrilactone Aの合成[3] radical_cycle_3.gif
Salinosporamideの合成[4]:ケイ素部を後に玉尾酸化でアルコールに変換。CH2OHユニットの導入法の一つ。
radical_cycle_4.gif
Stephacidin Bの合成[5]:Jacksonらによって開発されたアシルラジカル前駆体[6]を用いている。

radical_cycle_5.gif
(-)-Cyanthiwigin Fの全合成[7]:アルデヒド-オレフィン間のラジカル環化[8]が鍵反応。反応は完全な立体選択性で進行する。
radical_cycle_6.gif

タンデム環化で一挙に多数の環を構築出来ることも特長。[9]

radical_cycle_10

実験手順

 

実験のコツ・テクニック

ラジカル開始剤としては過酸化ベンゾイル(BzOOBz)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、Et3B/O2などが用いられる。特にEt3B/O2条件は、低温でラジカルを生成させることができるため、複雑化合物合成において有用性が高い。VA-061(半減期温度61℃)やVA-044(半減期温度44℃)といった水溶性ラジカル開始剤も最近ではポピュラーになりつつある。

参考文献

[1] Stork, G.; La Clair, J. J.; Spargo, P.; Nargund, R. P.; Totah, N.. J. Am. Chem. Soc. 1996, 118, 5304.DOI: 10.1021/ja960434n
[2] (a) Birman, V. B.; Danishefsky, S. J. J. Am. Chem. Soc. 2002, 124, 2080.DOI: 10.1021/ja012495d (b) Meng, Z.; Danishefsky, S. J. Angew. Chem. Int. Ed. 200544, 1511. doi:10.1002/anie.200462509
[3] (a) Inoue, M.; Sato, T.; Hirama, M. J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 10772. DOI: 10.1021/ja036587+ (b) Inoue, M.; Sato, T.; Hirama, M. Angew. Chem. Int. Ed. 2006, 45, 4843. doi:10.1002/anie.200601358 (c) Inoue, M.; Lee, N.; Kasuya, S.; Sato, T.; Hirama, M.; Moriyama, M.; Fukuyama, Y. J. Org. Chem. 2007, 72, 3065. DOI: 10.1021/jo0700474
[4] Corey, E. J. et al. J. Am. Chem. Soc. 2004126, 6230. DOI: 10.1021/ja048613p
[5] Herzon, S. B.; Myers, A. G. J. Am. Chem. Soc. 2005127, 5342. DOI: 10.1021/ja0510616
[6] (a)Jacson, L. V.; Walton, J. C. Chem. Commun. 2000, 2327. DOI: 10.1039/b007454n (b) Bella, A. F.; Jacson, L. V.; Walton, J. C.Org. Biomol. Chem. 2004, 2, 421. DOI: 10.1039/b313932h
[7] Enquist, J. A.; Stoltz, B. M. Nature 2008453, 1228. doi:10.1038/nature07046
[8] Yoshikai, K.; Hayama, T.; Nishimura, K.; Yamada, K.; Tomioka, K. J. Org. Chem. 2005, 70, 681. DOI: 10.1021/jo048275a
[9] Curran, D. P; Chen, M.-H. Tetrahedron Lett. 1985, 26, 4991. doi:10.1016/S0040-4039(01)80834-0

関連反応

 

関連書籍

外部リンク

Radical Cyclization – Wikipedia

cosine

cosine

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博士(薬学)。Chem-Station副代表。現在国立大学教員として勤務中。専門は有機合成化学、主に触媒開発研究。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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