[スポンサーリンク]

odos 有機反応データベース

トリプトファン選択的タンパク質修飾反応 Trp-Selective Protein Modification

トリプトファン(Tryptophan, Trp)は90%のタンパク質中に含まれる疎水性アミノ酸である。一次配列中の存在比率および表面露出数は、天然アミノ酸20種の中でも最低である。また、その疎水性側鎖(インドール)は電荷を持たないため、修飾がタンパク質の物性に影響を与えづらい。このような特徴から、Trpは化学・位置選択的修飾反応の標的として魅力がある。

チロシンと同様、電子豊富な芳香環側鎖を持つため、その特性を利用する戦略にて選択的修飾法の開発が検討されてきた。しかしながら、重金属の使用や強い化学条件の使用がほとんどの既報例で要請される都合、実用観点では改善の余地が多い反応形式の一つでもある。

基本文献

<Chemist’s Guide>

反応例

電子豊富なインドールC2・C3位を狙う戦略が基本である。

C2位の反応条件は多くの場合、遷移金属触媒の使用を必要とする。とりわけ金属カルベノイド種を経る条件[1]は、しばしばN-H結合と反応したり、他残基との交差反応性も問題になりうる。

金触媒を用いるC-H活性化触媒法の応用[2]。TrpのN-H結合を適切に保護したり、小サイズのペプチドに実施する場合には、マンガン触媒[3]、パラジウム触媒[4]、ルテニウム触媒[5]でも同形式の反応が行えることが実証されている。

C3位での反応条件は求電子的条件が必要となるが、他アミノ酸残基との交差反応性が懸念される都合、事例は少ない。金属フリーな条件で行えるTrp選択的修飾法が開発されている[6]。

UV光照射でテトラゾールから生成する1,3-双極子との環化によっても修飾が行える[7]。

強酸性条件が必要だが、ペプチドレベルでは大環状環化への応用も検討されている[8]。

参考文献

  1. (a) Antos, J. M.; Francis, M. B. J. Am. Chem. Soc. 2004, 126, 10256. DOI: 10.1021/ja047272c (b) Antos, J. M.; McFarland, J. M.; Iavarone, A. T.; Francis, M. B. J. Am. Chem. Soc. 2009, 131, 6301. DOI: 10.1021/ja900094h (c) Popp, B. V.; Ball, Z. T. J. Am. Chem. Soc. 2010, 132, 6660. DOI: 10.1021/ja101456c (d) Poppa, B. V.; Ball, Z. T. Chem. Sci. 2011, 2, 690. doi: 10.1039/C0SC00564A 
  2. (a) Hansen, M. B.; Hubalek, F.; Skrydstrup, T.; Hoeg-Jensen, T. Chem. Eur. J. 2016, 22, 1572. DOI: 10.1002/chem.201504462 (b) Tolnai, J. G.; Brand, J. P.; Waser, J. Beilstein J. Org. Chem. 2016, 12, 745. doi:10.3762/bjoc.12.74
  3. Ruan, Z.; Sauermann, N.; Manoni, E.; Ackermann, L. Angew. Chem., Int. Ed. 2017, 56, 3172. DOI: 10.1002/anie.201611118
  4. (a) Ruiz-Rodriguez, J.; Albericio, F.; Lavilla, R. Chem. Eur. J. 2010, 16, 1124. DOI: 10.1002/chem.200902676 (b) Reay, A. J.; Williams, T. J.; Fairlamb, I. J. S. Org. Biomol. Chem. 2015, 13, 8298. doi: 10.1039/C5OB01174D
  5. Schischko, A.; Ren, H.; Kaplaneris, N.; Ackermann, L. Angew. Chem., Int. Ed. 2017, 56, 1576. doi:10.1002/anie.201609631
  6. Seki, Y.; Ishiyama, T.; Sasaki, D.; Abe, J.; Sohma, Y.; Oisaki, K.; Kanai, M. J. Am. Chem. Soc. 2016, 138, 10798. doi:10.1021/jacs.6b06692
  7. Siti, W.; Khan, A. K.; de Hoog, H. P.; Liedberg, B.; Nallani, M. Org. Biomol. Chem. 2015, 13, 3202. doi:10.1039/C4OB02025A
  8. Rose, T. E.; Curtin, B. H.; Lawson, K. V.; Simon, A.; Houk, K. N. Harran, P. G. Chem. Sci. 2016, 7, 4158. DOI: 10.1039/c5sc04612b

関連書籍

ケムステ関連記事

外部リンク

The following two tabs change content below.
cosine

cosine

博士(薬学)。Chem-Station副代表。現在国立大学教員として勤務中。専門は有機合成化学、主に触媒開発研究。 関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。 素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. コルベ・シュミット反応 Kolbe-Schmitt Reacti…
  2. 庄野酸化 Shono Oxidation
  3. アリルオキシカルボニル保護基 Alloc Protecting …
  4. Aza-Cope転位 Aza-Cope Rearrangemen…
  5. バージェス試薬 Burgess Reagent
  6. 高井・ロンバード反応 Takai-Lombardo Reacti…
  7. 金属水素化物による還元 Reduction with Metal…
  8. 生体共役反応 Bioconjugation

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 食品安全、環境などの分析で中国機関と共同研究 堀場製
  2. 超高性能プラスチック、微生物で原料を生産
  3. 「サイエンスアワードエレクトロケミストリー賞」が気になったので調べてみた
  4. 2つの触媒反応を”孤立空間”で連続的に行う
  5. 尿はハチ刺されに効くか 学研シリーズの回顧
  6. 3Dプリンタとシェールガスとポリ乳酸と
  7. 第24回「アルキル-πエンジニアリングによる分子材料創成」中西尚志 博士
  8. 米FDA立て続けに抗肥満薬承認:Qsymia承認取得
  9. 交差アルドール反応 Cross Aldol Reaction
  10. 独メルク、医薬品事業の日本法人を統合

関連商品

注目情報

注目情報

最新記事

【大阪開催2月26日】 「化学系学生のための企業研究セミナー」

2020年卒業予定の学生の皆さんは、3月から就活本番を迎えますが、すでに企業の選考がスタートしている…

Nature 創刊150周年記念シンポジウム:ポスター発表 募集中!

本年、Nature 創刊150周年を迎えるそうです。150年といえば、明治時代が始まったばかり、北海…

アルケニルアミドに2つアリールを入れる

ニッケル触媒を用いたアルケニルアミドの1,2-ジアリール化反応が開発された。フマル酸エステルを配位子…

蛍光標識で定性的・定量的な解析を可能に:Dansyl-GSH

反応性代謝物の存在を調べたい。代謝化学の実験をしていれば、ほとんどの人がそう思うのではないでしょうか…

アメリカで医者にかかる

アメリカの大学院に進学する際、とても悩んだのが、医療保険についてです。アメリカでは医療費がとても高い…

MOF 結晶表面の敏感な応答をリアルタイム観察

第178回のスポットライトリサーチは、東京大学の細野暢彦講師にお願いしました。細野先生は高分…

Chem-Station Twitter

PAGE TOP