[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

ChemRxivへのプレプリント投稿・FAQ

[スポンサーリンク]

ケムステでも何度か取り上げている通り、化学系プレプリントが活用され始めています。

とはいえプレプリントについての未知事項の多さも手伝ってか、活用を敬遠される方も少なくないようです。

本記事では、プレプリントについての問い合わせが個人的にも増えていることを踏まえ、ChemRxivのFAQページ(2020年5月12日現在)を和訳のうえ、一般公開しておきます。

邦人化学者の皆さんがプレプリントを活用し、投稿する際の参考情報になれば幸いです。

1.  ChemRxivに掲載されたプレプリントは査読済みですか?公開前に確認されていますか?

ChemRxivに掲載されたプレプリントは、査読・編集・版組のいずれもなされていません。すべてのプレプリントは、投稿後に基本的なスクリーニングを受け、盗用・攻撃性・危険・非科学的な内容が含まれていないかどうか確認されます。プレプリントに含まれる、またはそこからリンクされている情報には、ChemRxivとしてお墨付きを与えることはありません。

2.  プレプリントとは何ですか?

プレプリントとは、投稿して正式な査読を受け、出版される前の原稿を一般公開したものに当たります。新たな研究成果・データが含まれる場合があります。研究成果の草稿、または最終版のいずれを投稿しても構いませんが、出版が認められていない段階の原稿でなくてはなりません。ChemRxivへの掲載には、すべての著者が同意していなくてはなりません。

3. ChemRxiv にはどのような情報が掲載されますか?

ChemRxivは、化学領域とその関連分野をカバーする技術的・科学的情報を中心に掲載します。ニュース・広告・政策論などの情報はフォーラムにふさわしくないため、受け取っても掲載を拒否しています。

物理学、数学、生命科学の分野に明らかに該当する知見については、arXivbioRxivなどの、補完的プレプリントサービスをご利用いただけます。

注:ChemRxivでは現在、未発表の書籍チャプターやレビュー記事は受け付けていません。博士論文に掲載済の成果でも、元論文と独立した原稿として書かれた内容であれば、受け入れが可能です。
注2:2022年3月より、ChemRxivではレビュー記事も受付けるようになりました。

4. ChemRxivにプレプリントを投稿したり、読んだりするには料金がかかりますか?

かかりません。ChemRxiv上のプレプリントは、著者・読者ともに無料で使用できます。

5.  投稿からChemRxivに掲載されるまでにどのくらいの期間がかかりますか?

プレプリントは通常、投稿されてから1-2営業日で掲載されます。

6. ChemRxivに投稿するには、特定のファイル形式が必要でしょうか?ChemRxivに投稿されたプレプリントは、どのようなファイル形式でダウンロードできますか?

ドラッグ&ドロップ機能を利用し、任意のファイル形式(最大ファイルサイズ 5GB)でプレプリントを投稿できます。ChemRxivでは、確認および投稿プロセスを通じ、元ファイルの情報・形式を保持します。掲載後、読者はウェブブラウザを通じて閲覧したり、元ファイルの形式でプレプリントをダウンロードすることもできます。

PDF版の論文を元ファイルと一緒に作成して投稿しておくと、読者は助かります。PDFを受け取っていない場合、掲載の過程で作成するようにはしますが、校正に送ることはしません。

また、他のトピックに適したリポジトリ(例えば、Protein Data BankCambridge Crystallographic Data Centre(CCDC)など)を利用し、プレプリント投稿フォームのReferenceセクションにこれらリポジトリへのリンクを記載するといいでしょう。これらのリンク情報は、ChemRxivのレコード欄に表示されます。

7. プレプリントはどの言語で投稿できますか?

現在のところ、プレプリントは英語でのみ受け付けています。

8. プレプリントを ChemRxivに投稿した後は、どのように処理されますか?

ChemRxivに投稿されたプレプリントは、そのすべてが優先順位付けに基づき、盗用・攻撃性・危険・非科学的な内容がないかでスクリーニングされます。

このプロセスはPhD化学者によって行われますが、査読ではありません。ChemRxivは正確性・完全性・科学的重要性についての評価を行いません。プレプリントサーバの目的は、科学的発見を迅速に掲載し、コミュニティによる広範な議論に利用してもらうことにあります。

著者が元ファイルにPDF版を添付していない場合、ChemRxivの管理者はPDF版を作成し、著者校正なしのバージョンを読者がダウンロードできるようにします。ChemRxivは、管理者が不適切と判断したプレプリントを掲載拒否する権利を有します。

9. すでにジャーナルに論文を投稿しています。ChemRxivにも投稿できますか?

ChemRxivには、ジャーナルに投稿済だが受理されていない論文も受け付けます。ジャーナルへ投稿した後にChemRxivへ投稿する場合は、ジャーナルの編集者とともに以下のことを確認する責務があります。

  1. ジャーナルの先行出版ポリシーを妨げないこと。
  2. 既に査読中の原稿に影響がないこと。

10. すでにChemRxivに投稿されているプレプリントを削除できますか?

これはできません。ChemRxivへの投稿過程でプレプリントにDOIが付与されるため、完全に引用可能な状態となり、科学的記録の一部となります。加えて、Chemical Abstracts ServicesCrossRefGoogle Scholarによって目録化されます。出版倫理ガイドラインでは、この時点でファイルを保存することが求められています。しかしながら、プレプリントサーバの管理者が致命的と考える著作権侵害や他の問題が生じた場合には、ChemRxivはプレプリントを削除する権利を有しています。

11. ChemRxiv のオープン API は存在していますか?

はい、ChemRxivはオープン API と互換性があります。ドキュメント全文の確認、Open API Swagger 仕様をダウンロードすることができます。またChemRxivOAuth 2.0 Authorization Frameworkをサポートしています。 注意点として、ChemRxiv固有の OAuth トークンはまだ利用できません。将来的に対応予定です。

12. ChemRxivのインパクトファクターはいくつですか?ChemRxivには他にどのような指標がありますか?ChemRxivのプレプリントはどこで目録化されていますか?

ChemRxivはジャーナルではなくプレプリントサービスなので、arXivbioRxivなど他のプレプリントサーバと同様、インパクトファクターはありません。

プレプリントベースの利用状況とオルトメトリクス(ブログ、ツイート、ニュース記事、その他のメディアに基づきプレプリントへの注目度を追跡する指標)はリアルタイムで更新され、プレプリントレコードの右側に表示されます。

ChemRxivのプレプリントは、Chemical Abstracts ServicesCrossRefGoogleGoogle Scholar、その他の検索ツールによって目録化されます。Web of Scienceでは目録化されていません。

13. ChemRxivの運営方法と具体的な内容は誰が決めているのですか?

ChemRxivはコミュニティを中心とした取り組みであり、その範囲、ガバナンス、運営原則は広く協議を経て定義されました。米国化学会中国化学会日本化学会ドイツ化学会英国王立化学会をはじめ、他のプレプリントサービス、非営利団体、大規模な化学コミュニティのメンバー、出版社、資金提供機関など、多くの組織から意見が寄せられました。

これらの協議をフィードバックとして利用し、ChemRxivを立ち上げるための具体的要件を見いだしました。コミュニティとの協議も継続的に行い、サービスの将来像づくりに役立てています。

我々はガバナンスと科学委員会(ChemRxivの戦略的方向性の監督責務を有します)両方の形成をほぼ終えようとしています。これについては、今後数ヶ月のうちに詳しく説明します(訳注:科学委員会は既に構成員が発表されています)。

ChemRxivに雇用されている、または契約しているPhD化学者のグループがトリアージプロセスに従事しており、ChemRxivの出版マネージャーであるMarshall Brennan博士が日々の運営を監督しています。

14. ChemRxivは地域限定サービスですか、それともグローバルなサービスですか?

ChemRxivはグローバルなサービスです。興味のある著者は誰でもプレプリントを投稿することができ、プレプリントは世界中の読者がダウンロードして閲覧することができます。

15. 化学プレプリントサーバーは著者にとってどのようなメリットがありますか?

化学プレプリントサーバーを利用することで、多様な分野で研究を行っている研究者は、正式な査読や出版に先立って、初期の成果やデータを同僚の科学者と共有することができ、他の科学者からの非公式なフィードバックを得て、研究の形を整えるのに役立ちます。また著者が優先順位を設定し、科学的発見と普及のペースを早めることにも役立ちます。

16. 化学分野のジャーナルは、プレプリント投稿済の著者が投稿できるようになっているのでしょうか?

現在、化学分野のジャーナルの大部分は、プレプリントを投稿することを著者に許可しています。この情報は、特定のジャーナルポリシー(たいていの場合、先行出版やプレプリントについてのポリシー)に記載されているか、ジャーナルの編集者に問い合わせれば分かります。研究者にとっては、こちらの情報が出版社のポリシーを評価するに有益かも知れません。

17. なぜ化学に特化したプレプリントサーバーが必要なのでしょうか?化学者はarXivbioRxivを使えないのでしょうか?

化学は”セントラル・サイエンス“です。究極的には、主要分野それぞれに分野固有のプレプリントサーバーが存在するべきだと考えます。arXivbioRxivとの共通点を見いだしたり、共通するリソースやツールの活用も模索してはいますが、化学の著者・読者は、属する分野およびニーズに特化したスペースからメリットを享受できると理解しています。物理学や数学にarXivが、生命科学にbioRxivが存在するのと同様です。

18. プレプリントを改訂したり、誤りを修正するにはどうすればいいですか?

ChemRxivに掲載されるまでは、いつでも自由にプレプリントを編集することができます。

掲載後は、改訂版を提出することができます。これを行うには、アカウントにログインしてMy Submissionsに移動し、画面右に表示される鉛筆型のEditアイコンをクリックして、修正するプレプリントを選択します。新しいファイルを追加したい場合は、このペインにドラッグ&ドロップします。ファイルを再提出したり削除するには、右上の「Manage」をクリックします。

投稿著者は、必要に応じて何度でもプレプリントを改訂いただくことをお勧めしますが、出版マネージャーの判断で改訂をお断りする場合があります。このような場合には、改訂拒否理由を投稿者に送付します。

ジャーナルの先行出版ポリシー次第では、査読中のプレプリントの改訂に制限がかかる場合があります。改訂作業がが出版検討中のジャーナルの方針に沿うものかどうかは、投稿者の責任で確認して下さい。

注:こうして提出された改訂版は、ChemRxivの管理者が新規なプレプリントとみなすに妥当かつ十分な改変であると判断した場合を除き、元のプレプリントと同じ DOI番号のもと、適切なバージョン表示を付けて掲載されます。すべての元ファイルには適切なタイムスタンプが付与され、以前のバージョンへもアクセス可能な状態が維持されます。

19. ChemRxiv上のプレプリントは、どのような形で対応するジャーナルの公開論文にリンクされますか?

ChemRxivでは、ジャーナル掲載後数週間以内にプレプリントへのリンクが自動的に追加されます。そのタイミングは、ジャーナル側がファイルをCrossRefに投稿するタイミングに依ります。ChemRxivはプレプリントと公開論文をチェックして双方の一致を確認できます。プレプリントが公開論文と適切に一致しているか心配な場合には、出版マネージャーにメールでご連絡いただければ、手動でリンクすべく全力を尽くします。

20. ChemRxivはテキストデータのマイニングを許可していますか?許可されている場合、どのような条件で許可されていますか?

ChemRxivはメタデータのマイニングを許可しており、関連するすべてのファイルのダウンロードを許可しています。興味のある方はOpen API文書を参照してください。

プレプリントのマイニングに適用される条件は、著者が選択するクリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CC-BY-NC-ND、CC-BY-NC、CC-BYなど)によって決定されます。利害関係者は、特定の再利用ニーズを満たすために、特定のライセンス様式に検索を制限することができます。

21. ChemRxiv のライセンス オプションにはどんな権利がありますか?自分の著作権はChemRxivに譲渡しなければなりませんか?

ChemRxivに著作権を譲渡する必要はありません。結果として、ChemRxivが提供するクリエイティブ・コモンズ・ライセンスを使用することで、ACS Publications、RSC Publishing、Wiley-VCHがGDChと提携して発行するジャーナルなど、ほとんどの出版社と出版契約を結ぶことができます。 ただし、プレプリント投稿前には、投稿先のジャーナルポリシーを確認することをお勧めします。

著者がChemRxivにプレプリントを投稿する際には、次に示す3つのライセンスから1つを選択できます。

  • CC-BY 4.0:適切な帰属表示のもとに、あらゆる種類の再利用を許可するクリエイティブ・コモンズ・ライセンスです。
  • CC-BY-NC 4.0:適切な帰属表示のもと、非営利目的の再利用を認めるライセンスです。ここでいう「非営利」とは、主に商業的な利益や金銭的な対価を目的としておらず、利用者の身元に依らない応用のことです。つまり営利企業でも、非営利目的であれば、ライセンス条項に違反することなく、NCライセンスのもとにプレプリントを使用することができます。
  • CC-BY-NC-ND 4.0:CC-BY-NCの条件を全て含むライセンスですが、二次著作物への改変は認めていません。ここでいう「二次著作物」には、ある言語から別の言語へのプレプリントの翻訳、プレプリントへの注釈の追加、もしくは作品の再変成が含まれますが、これらに限るものではありません。「二次著作物」とは一般に、独立した実体として著作権を備えるに足る、十分な創造性をもって改変されていない著作物のことを指します。

もし興味があるようでしたら、ASAPbioが提供しているとても詳細なライセンスFAQを参照下さい。

参考文献

プレプリントに関わる疑問点は、下記の記事を併せて読めばほとんど解消できます。

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 【書籍】10分間ミステリー
  2. 有機合成化学協会誌2021年6月号:SGLT2阻害薬・シクロペン…
  3. 銀を使ってリンをいれる
  4. マイクロ波の技術メリット・事業メリットをお伝えします!/マイクロ…
  5. 私が思う化学史上最大の成果-1
  6. 分子構造を 3D で観察しよう (1)
  7. 【速報】2012年ノーベル化学賞発表!!「Gタンパク質共役受容体…
  8. 水素社会実現に向けた連続フロー合成法を新開発

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 誰もが憧れる天空の化学研究室
  2. コンラッド・リンパック キノリン合成 Conrad-Limpach Quinoline Synthesis
  3. ダイセルが開発した新しいカラム: DCpak PTZ
  4. MEDCHEM NEWS 31-3号「ケムステ代表寄稿記事」
  5. 2016年2月の注目化学書籍
  6. ヒドラジン
  7. 話題のAlphaFold2を使ってみた
  8. メチオニン選択的タンパク質修飾反応 Met-Selective Protein Modification
  9. トマス・リンダール Tomas R. Lindahl
  10. アビシェック・チャッタージー Abhishek Chatterjee

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年5月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

注目情報

注目情報

最新記事

マテリアルズ・インフォマティクスにおけるデータの前処理-データ整理・把握や化学構造のSMILES変換のやり方を解説-

開催日:2022/10/12 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足の影…

【いまさら聞けない?】アジドの取扱いを学んでおこう!

今年のノーベル化学賞とも深く関連する、アジド化合物。受賞対象となったクリックケミストリーに加えて、ア…

【技術系スタートアップ合同フォーラムのお知らせ】 ディープテックのリアル-業界ならでは魅力と社会課題解決への想い

ディープテックに関心がある方、スタートアップへのジョインに興味のある方、スタート…

【速報】2022年ノーベル化学賞は「クリックケミストリーと生体直交化学」へ!

2022年のノーベル化学賞は「クリックケミストリーと生体直交化学」の開発業績で、バリー・シャープレス…

in-situ放射光X線小角散実験から明らかにする牛乳のナノサイエンス

第425回のスポットライトリサーチは、高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所(物構研)の高木…

アセトアミノフェン Acetaminophen

 アセトアミノフェン (acetaminophen) は、有機化合物の一つ。海外ではパラセタ…

不安定な高分子原料を従来に比べて 50 倍安定化することに成功! ~水中での化学反応・材料合成に利用可能、有機溶媒の大幅削減による脱炭素に貢献~

第424回のスポットライトリサーチは、京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科 バイオベースマテリアル学…

【10月開催】マイクロ波化学ウェブセミナー

<内容>今月もテーマを分けて2回開催いたします。第一…

越野 広雪 Hiroyuki Koshino

越野 広雪(こしの ひろゆき)は、NMRやマススペクトルなどのもとにした有機分子の構造解析を専門とす…

bassler ボニー・L.・バスラー Bonnie L. Bassler

ボニー・L.・バスラー (Bonnie Lynn Bassler , 1962年XX月XX日-)は、…

Chem-Station Twitter

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP