[スポンサーリンク]

海外化学者インタビュー

第89回―「タンパク質間相互作用阻害や自己集積を生み出す低分子」Andrew Wilson教授

[スポンサーリンク]

第89回の海外化学者インタビューは、アンディ・ウィルソン教授です。リーズ大学化学科に所属し、タンパク質間相互作用、自己組織化、分子認識の阻害に取り組んでいます。それではインタビューをどうぞ。

Q. あなたが化学者になった理由は?

それなりのチューバ奏者だったので、音大に行くためオーディションを受けましたが、うまくいきませんでした。そして、数学と物理学はかなり出来るねと言われていました。改めて考えてみると、自分は化学が好きだし、(それが何であれ)研究にも興味があるのだから、大学の願書には(理由はよく覚えていませんが都市工学と並べて)化学と書くことにしました。二年目の夏になって、Dave Leighの研究室(その後マンチェスター大学)で休暇を過ごすことになったのですが、突然、分子を作って遊べる大きな可能性に目覚めました。自分が何をしたいのか理解し始めたのは、その時だと思います。

Q. もし化学者でなかったら、何になりたいですか?またその理由は?

さまざまです。フットボールのナショナルチームが勝てない時は、監督になろうと思います。一番いいラインやフォーメーションがわかると思っているからです。他には、ウェストエンドミュージカルに出演したいと思っています。ミュージカルの中でも、演技、歌、ダンスが含まれる最も素晴らしいライブエンターテイメントです。いつかは主夫になって、1歳になる娘と一緒にいたいと思っています。彼女と過ごす時間は、他の何よりも価値があります!

Q. 概して化学者はどのように世界に貢献する事ができますか?

社会が進化し続けることを可能にする理論や合成法を発展させ、新たな化学者を育てることによってです。科学的側面としては、リサイクル可能な物質の調製・分解、エネルギーの収集・貯蔵方法、大気・水の浄化、高齢化における医療など新たな課題を含みます。多くの楽しい理由から化学をしようと周囲に伝えていかねば成りませんが、こういった問題のいくつかは非常に大きな問題で、私はここに苦慮しています。化学者がどのように貢献すべきかは問題ではなく、化学者が何をしなければならないか、あるいは何が難しいかということが、私にとっては問題です。

Q.あなたがもし歴史上の人物と夕食を共にすることができたら誰と?またその理由は?

これはさほど頻繁に考えないことです―そして今、そのリストはすぐ長くなってしまいます―言うまでもなく、存命の有名人とディナーをしたいかどうか考え始めてしまいました。いずれにしても、レオナルド・ダ・ヴィンチはとても良いでしょう。自分の家族はこの夏、彼が生まれたトスカーナの近くのブドウ畑で休暇を過ごしていました。彼の活動の多様性には驚きました。特に何世紀も経って(素人目には)ほとんど変わらないかのような工学的業績に驚きました。トスカーナは料理もワインも最高でした!

Q. あなたが最後に研究室で実験を行ったのはいつですか?また、その内容は?

今日のことです。いくつかのサンプルでTLCやNMR・IR測定を行い、学部生実験の特徴を調べました。もっとまじめな話としては先月、仕上げをまだ必要としている論文のまとめ作業を少ししていました。自分は実験ごとから離れ、グループのメンバーに続けさせるべきなのでしょう。しかし、たとえ自分に時間がなくとも、メンバーがそれをあまり好ましく思わなくとも、ものごとが長期にわたってワークするかどうか、確かめたい誘惑には抗えないのです。

Q.もしあなたが砂漠の島に取り残されたら、どんな本や音楽が必要ですか?1つだけ答えてください。

本:『指輪物語』は優れた長い作品でもあるので、時間がたっぷりある中では役に立つでしょう。

CD:ソーラーパワーのCDプレーヤーがすぐ手に入ることを前提に、マーラーの『交響曲第2番《復活》』にします。でも、オアシスの『Definitely Maybe』のほうがよいでしょうか。iPodを丸ごとというのはだめでしょうか?

[amazonjs asin=”4566023826″ locale=”JP” title=”文庫 新版 指輪物語 全10巻セット (評論社文庫)”][amazonjs asin=”B002GKRSZW” locale=”JP” title=”マーラー:交響曲第2番《復活》”][amazonjs asin=”B00IN5KYR8″ locale=”JP” title=”Definitely Maybe (Remastered)”]

原文:Reactions – Andrew Wilson

※このインタビューは2008年11月7日に公開されました。

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 第118回―「糖鎖のケミカルバイオロジーを追究する」Caroly…
  2. 第152回―「PETイメージングに活用可能な高速標識法」Phil…
  3. 第120回―「医薬につながる複雑な天然物を全合成する」Richm…
  4. 第167回―「バイオ原料の活用を目指した重合法の開発」John …
  5. 第137回―「リンや硫黄を含む化合物の不斉合成法を開発する」St…
  6. 第164回―「光・熱エネルギーを変換するスマート材料の開発」Pa…
  7. 第九回 タンパク質に新たな付加価値を-Tom Muir教授
  8. 第30回 弱い相互作用を活用した高分子材料創製―Marcus W…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 複雑天然物Communesinの新規類縁体、遺伝子破壊実験により明らかに!
  2. エドマン分解 Edman Degradation
  3. サイエンスアゴラの魅力を聞くー「生活環境化学の部屋」本間先生
  4. ベロウソフ・ジャボチンスキー反応 Belousov-Zhabotinsky(BZ) Reaction
  5. 大学院生が博士候補生になるまでの道のり【アメリカで Ph.D. を取る –Qualification Exam の巻 前編】
  6. エリック・フェレイラ Eric M. Ferreira
  7. ブルック転位 Brook Rearrangement
  8. フェノールフタレイン ふぇのーるふたれいん phenolphthalein
  9. 有機合成化学協会誌2023年1月号:[1,3]-アルコキシ転位・クロロシラン・インシリコ技術・マイトトキシン・MOF
  10. 世界⼀包括的な代謝物測定法の開発に成功〜ワンショットで親⽔性代謝物を⾼感度かつ網羅的に測定!〜

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2020年5月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

注目情報

最新記事

アクリルアミド類のanti-Michael型付加反応の開発ーPd触媒による反応中間体の安定性が鍵―

第622回のスポットライトリサーチは、東京理科大学大学院理学研究科(松田研究室)修士2年の茂呂 諒太…

エントロピーを表す記号はなぜSなのか

Tshozoです。エントロピーの後日談が8年経っても一向に進んでないのは私が熱力学に向いてないことの…

AI解析プラットフォーム Multi-Sigmaとは?

Multi-Sigmaは少ないデータからAIによる予測、要因分析、最適化まで解析可能なプラットフォー…

【11/20~22】第41回メディシナルケミストリーシンポジウム@京都

概要メディシナルケミストリーシンポジウムは、日本の創薬力の向上或いは関連研究分野…

有機電解合成のはなし ~アンモニア常温常圧合成のキー技術~

(出典:燃料アンモニアサプライチェーンの構築 | NEDO グリーンイノベーション基金)Ts…

光触媒でエステルを多電子還元する

第621回のスポットライトリサーチは、分子科学研究所 生命・錯体分子科学研究領域(魚住グループ)にて…

ケムステSlackが開設5周年を迎えました!

日本初の化学専用オープンコミュニティとして発足した「ケムステSlack」が、めで…

人事・DX推進のご担当者の方へ〜研究開発でDXを進めるには

開催日:2024/07/24 申込みはこちら■開催概要新たな技術が生まれ続けるVUCAな…

酵素を照らす新たな光!アミノ酸の酸化的クロスカップリング

酵素と可視光レドックス触媒を協働させる、アミノ酸の酸化的クロスカップリング反応が開発された。多様な非…

二元貴金属酸化物触媒によるC–H活性化: 分子状酸素を酸化剤とするアレーンとカルボン酸の酸化的カップリング

第620回のスポットライトリサーチは、横浜国立大学大学院工学研究院(本倉研究室)の長谷川 慎吾 助教…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP