[スポンサーリンク]

H

細見・櫻井アリル化反応 Hosomi-Sakurai Allylation

[スポンサーリンク]

概要

アリルシランを用いるアリル化反応。アリルシランは、アリルスズよりも毒性が低く、アリルGrignardやアリルリチウム試薬に比べて安定な有用合成試薬である。

ルイス酸やフッ化物イオンなどがプロモータとしてよく用いられている。特に、ルイス酸による反応はアリルリチウムやアリルマグネシウムの反応とは対照的にγ位選択的に進行し、基質によっては立体選択性が極めて高くなる。また、共役エノンのアリル化では共役付加のみが進行する。

基本文献

  • Hosomi, A.; Endo, M.; Sakurai, H. Chem. Lett. 1976, 941. doi:10.1246/cl.1976.941
  • Hosomi, A.; Sakurai, H. Tetrahedron Lett. 197617, 1295. doi:10.1016/S0040-4039(00)78044-0
  • Hosomi, A.; Sakurai, H. J. Am. Chem. Soc. 197799, 1673. DOI: 10.1021/ja00447a080
  • Wilson, S. R.; Price, M.F. J. Am. Chem. Soc. 1982104, 1124. DOI: 10.1021/ja00368a049
  • Review: Fleming, I. et al. Org. React. 198937, 57.
  • Review: Fleming, I. Comprehensive Organic Syntheis 19912, 563.

 

反応機構

シリルβ位のカルボカチオンは超共役効果により安定化されることが知られている。これをふまえて以下のような反応機構が提唱されている。ケイ素のルイス酸性は弱いため、反応は非環状遷移状態を経て進行するとされる。(Tetrahedron Lett. 198324, 2865.)
hosomi_sakurai_2.gif

反応例

Denmarkらは、独自に開発したキラルLewis塩基を使用することで、不斉アリル化を達成している。[1] hosomi_sakurai_3.gif
山本らは、フッ化銀およびキラルな不斉リン配位子をもちいることで、低反応性・低選択性であるケトンへの高エナンチオ選択的不斉アリル化を達成している。[2] hosomi_sakurai_4.gif
Furaquinocin Aの合成[3] hosomi_sakurai_5.gif
Halichlorineの合成[4] hosomi_sakurai_7.gif
環状オキソニウムカチオンへの細見-櫻井反応は高立体選択的に進行する。6員環の場合は4位、5員環の場合は3位の置換基効果に大きく依存する。[5] hosomi_sakurai_8.gif

実験手順

不飽和ケトンへの共役アリル化[6] hosomi_sakurai_6.gif

実験のコツ・テクニック

 

参考文献

[1] Denmark, S. E.; Coe, D. M.; Pratt, N. E.; Griedel, B. E. J. Org. Chem. 1994, 59, 6161. DOI: 10.1021/jo00100a013

[2] Wadamoto, M.; Yamamoto, H. J. Am. Chem. Soc. 2005127, 14556. DOI: 10.1021/ja0553351

[3] Trost, B. M.; Thiel, O. R.; Tsui, H.-C. J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 13155. DOI: 10.1021/ja0364118

[4] (a) Trauner, D.; Schwartz, J. B.; Danishefsky, S. J. Angew. Chem. Int. Ed. 1999, 38, 3542. [abstract] (b) Trauner, D.; Danishefsky, S. J. Tetahedron Lett. 199940, 6513. doi:10.1016/S0040-4039(99)01170-3

[5] (a) Woerpel, K. A. et al. J. Am. Chem. Soc. 1999121. 12208. DOI: 10.1021/ja993349z (b) Woerpel, K. A. et al. J. Am. Chem. Soc. 2003125, 14149. DOI: 10.1021/ja0375176 (c) Woerpel, K. A. et al. J. Am. Chem. Soc.
2003, 125, 15521. DOI: 10.1021/ja037935a (d) Woerpel, K. A. et al. J. Am. Chem. Soc. 2005127, 10879. DOI: 10.1021/ja0524043

[6] Org. Synth. 1984, 62, 84.

 

関連反応

 

関連書籍

 

関連リンク

関連記事

  1. 水素化ホウ素亜鉛 Zinc Bodohydride
  2. マイヤース・斉藤環化 Myers-Saito Cyclizati…
  3. NHPI触媒によるC-H酸化 C-H Oxidation wit…
  4. ルチッカ大員環合成 Ruzicka Large Ring Sy…
  5. コーリー・フックス アルキン合成 Corey-Fuchs Alk…
  6. トロスト不斉アリル位アルキル化反応 Trost Asymmetr…
  7. バーチ還元 Birch Reduction
  8. グロブ開裂 Grob Fragmentation

注目情報

ピックアップ記事

  1. ユニバーサル・フェーズセパレーター発売
  2. OIST Science Challenge 2025 に参加しました
  3. アメリカの研究室はこう違う!研究室内の役割分担と運営の仕組み
  4. ゴールドエクスペリエンスが最長のラダーフェニレンを産み出す
  5. フェントン反応 Fenton Reaction
  6. 海水から微量リチウムを抽出、濃縮できる電気化学セルを開発
  7. アメリカの大学院生だってパーティするっつーの! 【アメリカで Ph.D. を取る –Qualification Exam の巻 後編】
  8. The Journal of Unpublished Chemistry
  9. 自己実現を模索した50代のキャリア選択。「やりたいこと」が年収を上回った瞬間
  10. 長寿企業に学ぶたゆまぬ努力と挑戦

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年6月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

注目情報

最新記事

第42回メディシナルケミストリーシンポジウム

テーマAI×創薬 無限能可能性!? ノーベル賞研究が拓く創薬の未来を探る…

山口 潤一郎 Junichiro Yamaguchi

山口潤一郎(やまぐちじゅんいちろう、1979年1月4日–)は日本の有機化学者である。早稲田大学教授 …

ナノグラフェンの高速水素化に成功!メカノケミカル法を用いた芳香環の水素化

第660回のスポットライトリサーチは、名古屋大学大学院理学研究科(有機化学研究室)博士後期課程3年の…

第32回光学活性化合物シンポジウム

第32回光学活性化合物シンポジウムのご案内光学活性化合物の合成および機能創出に関する研究で顕著な…

位置・立体選択的に糖を重水素化するフロー合成法を確立 ― Ru/C触媒カートリッジで150時間以上の連続運転を実証 ―

第 659回のスポットライトリサーチは、岐阜薬科大学大学院 アドバンストケミストリー…

【JAICI Science Dictionary Pro (JSD Pro)】CAS SciFinder®と一緒に活用したいサイエンス辞書サービス

ケムステ読者の皆様には、CAS が提供する科学情報検索ツール CAS SciFind…

有機合成化学協会誌2025年5月号:特集号 有機合成化学の力量を活かした構造有機化学のフロンティア

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2025年5月号がオンラインで公開されています!…

ジョセップ・コルネラ Josep Cornella

ジョセップ・コルネラ(Josep Cornella、1985年2月2日–)はスペイン出身の有機・無機…

電気化学と数理モデルを活用して、複雑な酵素反応の解析に成功

第658回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院 農学研究科(生体機能化学研究室)修士2年の市川…

ティム ニューハウス Timothy R. Newhouse

ティモシー・ニューハウス(Timothy R. Newhouse、19xx年xx月x日–)はアメリカ…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP