[スポンサーリンク]

H

ホーナー・ワズワース・エモンス反応 Horner-Wadsworth-Emmons (HWE) Reaction

[スポンサーリンク]

概要

ホスホン酸のイリドとアルデヒドが付加することにより、Wittig反応類似の機構を経てα、β-不飽和エステルが得られる。

基質はホスファイトとα-ハロエステルからMichaelis-Arbuzov反応によって合成できる。エステルの他に、ニトリル、アリール、ビニル、スルフィド、アミン、エーテルなどの官能基も利用できる。

反応は一般にE選択的であるが、反応例のような試薬を利用するとZ選択的になる。

反応副生物であるリン化合物は水溶性であり、分液操作などによって容易に除去できる。この点はWittig反応よりも優れている。

基本文献

  • Horner, L.; Hoffmann, H. M. R.; Wippel, H. G. Ber. 195891, 61.
  • Horner, L.; Hoffmann, H. M. R.; Wippel, H. G.; Klahre, G. Ber. 1959, 92, 2499.
  • Wadsworth, W. S., Jr.; Emmons, W. D. J. Am. Chem. Soc. 196183, 1733. doi:10.1021/ja01468a042
  • Boutagy, J.; Thomas, R. Chem. Rev. 197474, 87. doi:10.1021/cr60287a005
  • Wadsworth, W. S., Jr. Org. React. 197725, 73.
  • Maryanoff, B. E.; Reitz, A. B. Chem. Rev. 198989, 863. doi:10.1021/cr00094a007
  • Kelly, S. E. Comprehensive Organic Synthesis 19911, 729.

開発の歴史

Leopold HornerとWilliam D. Emmons

 

ドイツの化学者Hornerが1958年に開発。その後、WadsworthとEmmonsらが1961年に改良を行った。

反応機構

hwe_5.gif

反応例

ホスホナート部に(CF3CH2O)2P(O)-基を利用するとZ体が選択的に得られる(Still-Gennari法)[1]
hwe_2.gif
同様に、 (ArO)2P(O)-基を用いてもZ選択的になる(安藤法)[2]
hwe_3.gif
LiClを添加剤として用いると、DBUやHunig Base程度の弱塩基性条件で反応が進行する。NaHやLDAなどの強塩基性条件下で不安定な化合物の場合、特に有効である(Roush-正宗法)[3]
Liがルイス酸としてはたらき、活性プロトンの酸性度が上昇すると考えられている。
hwe_4.gif

実験手順

 

実験のコツ・テクニック

 

参考文献

  1. Still, W. C.; Gennari, C.Tetrahedron Lett., 198324, 4405. DOI: 10.1016/S0040-4039(00)85909-2
  2. (a) Ando, K. J. Org. Chem. 1997, 62, 1934. DOI: 10.1021/jo970057c
  3. Ando, K. J. Org. Chem. 1998, 63, 8411. DOI: 10.1021/jo981337a
  4. Ando, K. J. Org. Chem. 1999, 64 6815. DOI: 10.1021/jo9909150
  5. Blanchette, M. A.; Choy, W.; Davis, J. T.; Essenfeld, A. P.; Masamune,S.; Roush, W. R.; Sakai, T. Tetrahedron Lett. 198425, 2183. DOI: 10.1016/S0040-4039(01)80205-7

関連反応

 

関連書籍

[amazonjs asin=”352730634X” locale=”JP” title=”Modern Carbonyl Olefination: Methods and Applications”]

外部リンク

関連記事

  1. 1,2-/1,3-ジオールの保護 Protection of 1…
  2. NHPI触媒によるC-H酸化 C-H Oxidation wit…
  3. プラトー反応 Prato Reaction
  4. コーンブルム ニトロ化反応 Kornblum Nitoratio…
  5. 辻・ウィルキンソン 脱カルボニル化反応 Tsuji-Wilkin…
  6. チャン・ラム・エヴァンス カップリング Chan-Lam-Eva…
  7. クネーフェナーゲル ピリジン合成 Knoevenagel Pyr…
  8. マンダー試薬 Mander’s Reagent

注目情報

ピックアップ記事

  1. 2つの結合回転を熱と光によって操る、ベンズアミド構造の新たな性質を発見
  2. 化学五輪で日本の高校生2人が金メダル
  3. 子育て中の40代女性が「求人なし」でも、専門性を生かして転職を実現した秘訣とは
  4. 第52回「薬として働く人工核酸を有機化学的に創製する」和田 猛教授
  5. アルミニウム Aluminium 最も多い金属元素であり、一円玉やアルミホイルの原料
  6. タンパクの「進化分子工学」とは
  7. 【書籍】新版 元素の小辞典
  8. 高井・内本オレフィン合成 Takai-Utimoto Olefination
  9. タンパクの骨格を改変する、新たなスプライシング機構の発見
  10. 変異体鏡像Rasタンパクの化学全合成

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年6月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

注目情報

最新記事

OIST Science Challenge 2025 に参加しました

2025年3月15日から22日にかけて沖縄科学技術大学院大学 (OIST) にて開催された Scie…

ペーパークラフトで MOFをつくる

第650回のスポットライトリサーチには、化学コミュニケーション賞2024を受賞された、岡山理科大学 …

月岡温泉で硫黄泉の pH の影響について考えてみた 【化学者が行く温泉巡りの旅】

臭い温泉に入りたい! というわけで、硫黄系温泉を巡る旅の後編です。前回の記事では群馬県草津温泉をご紹…

二酸化マンガンの極小ナノサイズ化で次世代電池や触媒の性能を底上げ!

第649回のスポットライトリサーチは、東北大学大学院環境科学研究科(本間研究室)博士課程後期2年の飯…

日本薬学会第145年会 に参加しよう!

3月27日~29日、福岡国際会議場にて 「日本薬学会第145年会」 が開催されま…

TLC分析がもっと楽に、正確に! ~TLC分析がアナログからデジタルに

薄層クロマトグラフィーは分離手法の一つとして、お金をかけず、安価な方法として現在…

先端の質量分析:GC-MSおよびLC-MSデータ処理における機械学習の応用

キャラクタライゼーションの機械学習応用は、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)およびラボオートメ…

原子半径・電気陰性度・中間体の安定性に起因する課題を打破〜担持Niナノ粒子触媒の協奏的触媒作用〜

第648回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院工学系研究科(山口研究室)博士課程後期2年の松山…

リビングラジカル重合ガイドブック -材料設計のための反応制御-

概要高機能高分子材料の合成法として必須となったリビングラジカル重合を、ラジカル重合の基礎から、各…

高硬度なのに高速に生分解する超分子バイオプラスチックのはなし

Tshozoです。これまでプラスチックの選別の話やマイクロプラスチックの話、およびナノプラスチッ…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP