[スポンサーリンク]

odos 有機反応データベース

ファン・ロイゼン試薬 van Leusen Reagent (TosMIC)

[スポンサーリンク]

概要

p-トルエンスルホニルメチルイソシアニド(TosMIC)は、合成単位として非常に有用な試薬である。特に求電子剤と反応して、様々な複素環化合物を与える点で価値が高い。イソシアニドの多くは悪臭を放つが、TosMICは無臭である。

α位の酸性度が高いこと、Ts基が良好な脱離基になることを活かして様々な化学変換へと応用されている。

基本文献

<review>

開発の歴史

オランダ・フローニンゲン大学の化学者Daan van Leusen、Albert M. Van Leusenによって1972年に開発された。

反応機構

ケトンからはニトリル、アルデヒドからオキサゾールを得る変換が特に有用性が高い。それぞれの反応機構を記す。

反応例

上記以外にも、きわめて多様な反応形式を実現できる試薬である。アシルアニオン等価体として、1,3-ジチアンなどの代替試薬として用いることも出来る[1]。

天然物全合成への応用

(-)-Ushikulide Aフラグメントの合成[2]

Caribenol Bの全合成[3]

実験手順

2-シアノアダマンタンの合成[4]

アダマンタノン(15.0 g,0.10 mol)とTosMIC(25.0 g, 0.13 mol)をDME(350 mL)とEtOH(10 mL)の混合溶媒に溶かして攪拌し、t-BuOK(28.0 g, 0.24 mol)を5~10℃に保ちながら徐々に添加した。最初は冷却せず30分間、次に35〜40℃で30分間攪拌を行った。得られた懸濁液を撹拌しながら室温まで冷却した。沈殿物(Ts-K)を除去し、DMEで抽出した。合わせたDME溶液を25-35 mLに濃縮し、5cm厚のアルミナ層(約200g、ブフナー漏斗上)にマウントした後、250 mLの石油エーテル(bp 40-60℃)を流すことで精製した。溶媒を除去すると、ほぼ白色化合物として目的物が得られた。収率87-93%(14-15 g)。

参考文献

  1. Eger, W. A.; Grange, R. L.; Schill, H.; Goumont, R.; Clark, T.; Williams, C. M. Eur. J. Org. Chem. 2011, 2548. doi:10.1002/ejoc.201001680
  2. Yadav, J. S.; Reddy, N. M.; Rahman, M. N.; Prasad, A. R. Eur. J. Org. Chem. 2014, 5574. doi:10.1002/ejoc.201402196
  3. Hao, H.-D.; Trauner, D. J. Am. Chem. Soc. 2017, 139, 4117. doi:10.1021/jacs.7b00234
  4. Oldenziel, O. H.; Van Leusen, D.; Van Leusen, A. M. J. Org. Chem. 1977, 42, 3114. doi:10.1021/jo00439a002

関連反応

関連書籍

[amazonjs asin=”B00OLR0NWS” locale=”JP” title=”Multicomponent Reactions in Organic Synthesis (English Edition)”]

外部リンク

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. バートン・マクコンビー脱酸素化 Barton-McCombie …
  2. コーリー・ギルマン・ガネム酸化 Corey-Gilman-Gan…
  3. ジェイコブセン・香月エポキシ化反応 Jacobsen-Katsu…
  4. ホフマン・レフラー・フレイターク反応 Hofmann-Loffl…
  5. マッテソン増炭反応 Matteson Homologation
  6. アニオン重合 Anionic Polymerization
  7. 可逆的付加-開裂連鎖移動重合 RAFT Polymerizati…
  8. シャピロ反応 Shapiro Reaction

注目情報

ピックアップ記事

  1. 2024年の化学企業グローバル・トップ50
  2. 化学研究ライフハック:ソーシャルブックマークを活用しよう!
  3. 日本学士院賞・受賞化学者一覧
  4. オゾンと光だけでアジピン酸をつくる
  5. 治療薬誕生なるか?ジカウイルスのアロステリック阻害剤開発
  6. クライン・プレログ表記法 Klyne-Prelog Nomenclature System
  7. 【解ければ化学者】オリーブオイルの主成分の素はどれ?【脂肪の素ってどんな分子? そして脂と油の差は?】
  8. 芳香族求核置換反応 Nucleophilic Aromatic Substitution
  9. 麺の科学 粉が生み出す豊かな食感・香り・うまみ
  10. Dead Endを回避せよ!「全合成・極限からの一手」⑨

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2010年1月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

注目情報

最新記事

岩田浩明 Hiroaki IWATA

岩田浩明(いわたひろあき)は、日本のデータサイエンティスト・計算科学者である。鳥取大学医学部 教授。…

人羅勇気 Yuki HITORA

人羅 勇気(ひとら ゆうき, 1987年5月3日-)は、日本の化学者である。熊本大学大学院生命科学研…

榊原康文 Yasubumi SAKAKIBARA

榊原康文(Yasubumi Sakakibara, 1960年5月13日-)は、日本の生命情報科学者…

遺伝子の転写調節因子LmrRの疎水性ポケットを利用した有機触媒反応

こんにちは,熊葛です!研究の面白さの一つに,異なる分野の研究結果を利用することが挙げられるかと思いま…

新規チオ酢酸カリウム基を利用した高速エポキシ開環反応のはなし

Tshozoです。最近エポキシ系材料を使うことになり色々勉強しておりましたところ、これまで関連記…

第52回ケムステVシンポ「生体関連セラミックス科学が切り拓く次世代型材料機能」を開催します!

続けてのケムステVシンポの会告です! 本記事は、第52回ケムステVシンポジウムの開催告知です!…

2024年ノーベル化学賞ケムステ予想当選者発表!

大変長らくお待たせしました! 2024年ノーベル化学賞予想の結果発表です!2…

“試薬の安全な取り扱い”講習動画 のご紹介

日常の試験・研究活動でご使用いただいている試薬は、取り扱い方を誤ると重大な事故や被害を引き起こす原因…

ヤーン·テラー効果 Jahn–Teller effects

縮退した電子状態にある非線形の分子は通常不安定で、分子の対称性を落とすことで縮退を解いた構造が安定で…

鉄、助けてっ(Fe)!アルデヒドのエナンチオ選択的α-アミド化

鉄とキラルなエナミンの協働触媒を用いたアルデヒドのエナンチオ選択的α-アミド化が開発された。可視光照…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP