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2023年化学企業トップの年頭所感を読み解く

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新年を迎え、企業各社はトップの年頭所感を発表しています。本記事では、各社の2023年の展望と関連する2022年のニュースをまとめました。

安全・健康

安全に事業を行い社員が健康でいられることは、どの会社でも常に求められることで、いくつかの年頭所感では、安全・コンプライアンスを守ることや健康管理への意識を高めることなどが触れられています。例えば、三菱ケミカルグループ社長 ジョンマーク・ギルソン氏の年頭挨拶では、コンプライアンスを遵守するために、声を上げること、問題を隠さないこと、問題が大きくなる前に対処することを心に留めておくことを求めています。残念ながら2022年末には化学工場での火災事故が発生しており、2023年は事故がないことを願います。

世界情勢

2022年も世界情勢は安定せず、経済成長に大きな影響を与えました。この影響を受けて2022年は、厳しい年だったというコメントと困難な状況でも営業利益を確保できたと発表しています。そしてこの不確実性が高い状況は2023年も同じであることを強調し、より一層、安定供給や価格適正化といった足元の課題に取り組んでいく必要があることを多くの年頭所感が示しています。住友化学社長 岩田 圭一 氏の年頭あいさつ要旨では、ウクライナ紛争の長期化、ゼロコロナ政策後の中国経済の不透明さなどを背景として景気後退のリスクが高まっており変化が速く、かつ不確実性の高い事業環境が本年も続くとが予想されています。研究レベルで使用する化学品や原料も依然として価格は高騰しており、現場でもいろいろな対応が求められると想定されます。

デジタル・DX

デジタルやDXに関する話題はだいぶ落ち着きましたが、その活用は依然として需要なテーマとなっているようです。実際、重要項目の一つとしてデジタルやDXが年頭所感の中で触れられています。三井化学株式会社 代表取締役社長執行役員 橋本 修氏は、今一度業務の標準化及び効率化を図り、DXの有効活用を進め、より付加価値の高い業務を創り上げていくよう訴えています。大企業にはいろいろな障壁があり、チャットツールすら導入には多くの困難があったと話を聞きます。一方でうまく使えば、研究部門に限らずどの部署でも業務の効率化できるチャンスがあるので今後、より一層の活用を期待します。

サステナビリティ

いくつかの年頭所感では、サステナビリティの実績を強調しています。例えば、積水化学工業株式会社 代表取締役社長 加藤 敬太氏は、サステナビリティ貢献製品の売上高比率は65%を超えるまでに伸長し、温室効果ガス排出量も2013年度比で20%超の削減を達成したと発表しています。このサステナビリティの世間からの関心は高く、サステナビリティの高い製品の開発、サステナビリティを踏まえた化学品生産などは、化学企業として避けられない課題のようです。

その他

年頭所感には、社員に対しての言葉が多く含まれており、特に挑戦・チャレンジすることが必要であると説いています。各社、2020年代も中盤に入ったからなのか、特に2030年の目標達成を意識した挑戦を呼び掛けています。DIC株式会社 代表取締役社長執行役員 猪野薫氏の年頭挨拶では、新たな挑戦の際には、失敗もあるでしょう。失敗から何を学ぶかが大事です。個の多様性の結集が、DICグループの未来を創る原動力になります。あなたの挑戦がDICの挑戦となると呼び掛けています。また他の内容として、各社の事業についての言及しており、今年はどの分野に注力していきたいかが分かる内容になっています。

ついに中国でのゼロコロナ政策を終了するものの経済後退の可能性が言われ、ウクライナの戦争についても続いていることから経済への影響は少なからず続くことが予想されています。この状況下で各社がどのような戦略で成長を目指すのか、2023年の動きから目が離せません。

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ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

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