⏱ 30秒サマリー
- 何をする反応か — ジヨードメタン(CH₂I₂)と亜鉛から発生させる(ヨードメチル)亜鉛カルベノイド(IZnCH₂I など)でアルケンに CH₂ を1つ付け、シクロプロパンをつくる。遊離カルベンを経ない。
- 何ができるか — アルケンの幾何(cis/trans)をそのまま保持して三員環を形成できる(立体特異的)。アリルアルコールの水酸基が亜鉛に配位して同じ面から環化させる「配向効果」が強力で、ジアステレオ選択的・エナンチオ選択的なシクロプロパン合成の基盤になっている。
- いつ使うか — 天然物・医薬品のシクロプロパン骨格を、ジアゾ化合物を使わずに構築したいとき。均一系で再現性のよい古川法(Et₂Zn/CH₂I₂)が現在の標準。ただし Et₂Zn は自然発火性で、カルベノイド生成は発熱的。近年は Co・Ni・Bi を用いる触媒的・電気化学的な代替法や、フロー化も進んでいる。
概要
シモンズ・スミス反応(Simmons-Smith Reaction)は、1958年、DuPont 社の H. E. Simmons と R. D. Smith によって報告された、亜鉛–銅カップルとジヨードメタンをオレフィンと反応させてシクロプロパンを得る反応である[1]。翌年の詳報[2]で反応の全体像が報告され、この反応は遊離のカルベンではなく有機亜鉛中間体(カルベノイド)を経て進み、アルケンの立体配置を保持することが知られるようになった[23,25]。シクロヘキセンからノルカランを得る手順は Organic Syntheses にも収載された[3]。
シクロプロパン環は天然物、農薬(ピレスロイドなど)、医薬品に広く見られる構造で、その効率的な構築法は今も需要が高い。天然物・医薬品合成での近年の適用例は総説[28]にまとめられている。Simmons–Smith 反応は官能基許容性が高く条件が温和で、ジアゾメタンのような爆発性・毒性の高い試薬を使わずにメチレンを導入できる点が最大の利点である。
改良の歴史は長い。1966年、古川らは不均一な Zn–Cu カップルの代わりにジエチル亜鉛(Et₂Zn)を用いる均一系(古川法)を報告し[4]、再現性と反応性が大きく向上した。Denis–Girard–Conia による改良法[5]、トリアルキルアルミニウム(丸岡・山本)[9]やサマリウム(Molander)[10]を用いる位置選択性の異なる試薬、さらに Shi らのtunableな RXZnCH₂I 型試薬[12,27]が続いた。1994年の Charette によるキラルジオキサボロラン配位子を用いるエナンチオ選択的反応[14]は、不斉シクロプロパン化の代表的手法として定着している。
2010年代後半以降は、量論量の亜鉛カルベノイドに依存しない触媒的・還元的シクロプロパン化(Co 触媒[15]、Bi 光触媒[16]、Ni 触媒フロー電解[17])と、プロセス化学における連続フロー化[18]が新しい潮流となっている。
反応機構
(1) 亜鉛カルベノイドの生成
Zn–Cu カップル法では、金属亜鉛表面への CH₂I₂ の酸化的付加によって(ヨードメチル)亜鉛ヨージド(IZnCH₂I)が生じる。古川法では Et₂Zn と CH₂I₂ の間のアルキル–ハロゲン交換により EtZnCH₂I(過剰の CH₂I₂ では Zn(CH₂I)₂)が均一に生成する[4]。溶液中のこれらの種は単一ではなく、エーテル配位や会合、そして Schlenk 平衡(2 IZnCH₂I ⇄ Zn(CH₂I)₂ + ZnI₂)の影響を受ける。
(2) メチレン移動 — 協奏的な三員環形成
カルベノイドの CH₂ 炭素は、亜鉛と(脱離基となる)ヨウ素の両方に結合しているため求電子的である。アルケンの π 電子がこの炭素を攻撃すると同時にヨウ化物が亜鉛へ移り、2本の C–C 結合がほぼ同時に形成される。Simmons らが提案したバタフライ型遷移状態がこの描像である[2]。
Nakamura らの DFT(B3LYP)計算は、①カルベノイドがアルケンに [2+1] でメチレンを渡す「メチレン移動経路」と、②C–Zn 結合がアルケンに付加してから分子内置換で閉環する「カルボメタル化経路」を比較し、亜鉛カルベノイドではメチレン移動経路が有利であると結論した[7]。メチレン移動は、アルケンによる脱離基の SN2 様置換と、それに続く C–Zn 結合の開裂という二段階的な性格をもつと解釈されている。なお、より分極した炭素–金属結合をもつリチウムカルベノイドではカルボメタル化経路が優位になりうるとされる。
(3) 立体特異性と電子効果
協奏的機構のため、アルケンの幾何は保持される。たとえば (Z)-2-ブテンからは cis-1,2-ジメチルシクロプロパンが、(E) 体からは trans 体が得られ、反応中にアルケンの異性化は起こらない[23,25]。
求電子的なカルベノイドが相手であるため、電子豊富なアルケンほど速く反応する。エノールエーテルやアリルアルコールは良好な基質だが、α,β-不飽和カルボニル化合物のような電子不足アルケンは古典的条件では反応しにくい。
(4) ルイス酸による加速と ZnX₂ の二面性
反応の進行とともに副生する ZnI₂ はルイス酸であり、反応系の性質を変える。Nakamura らは、ルイス酸がハロメチル亜鉛のハロゲン脱離を助けることで反応を加速するという理論的検討を報告している[6]。実際、BMS のプロセス研究では反応に誘導期が観測され、ブレンステッド酸型の添加剤がこの誘導期を短縮して反応を加速することが示されている[8]。一方で ZnI₂ のルイス酸性は、酸に弱い基質の分解や副反応の原因にもなる(後述)。
(5) 水酸基による配向効果
アリルアルコールやホモアリルアルコールでは、水酸基が亜鉛アルコキシドとなってカルベノイドを分子内に引き寄せ、水酸基と同じ面(syn)からメチレンを渡す。立体障害の大きい面であっても配向効果が優先することが多く、基質制御型反応の代表例として整理されている[24]。
特徴・適用範囲・類似反応との比較
強み
- アルケンの幾何を保持する立体特異的反応。
- 水酸基・エーテル・カルバマートなどの配位性官能基による高いジアステレオ制御が可能。
- ジアゾ化合物を使わない。試薬は市販品で調達できる。
- エステル、ケトン、ハロゲン化アルキル、シリルエーテルなど多くの官能基と共存できる。
- キラル配位子[14]や Shi 型キラル修飾剤[12,27]によるエナンチオ選択的変法が確立している。
弱み・注意点
- 亜鉛カルベノイドを量論量以上(多くは2〜5当量)必要とし、亜鉛塩の廃棄物が多い。水酸基やエノール化しうる基質では、その分だけ余計に試薬を消費する[21]。
- 古川法の Et₂Zn は自然発火性で、水と激しく反応する。カルベノイド生成は発熱的で、エタンガスも発生する[21]。
- 電子不足アルケンは古典的条件で反応しにくい(Shi 型試薬[12]や触媒的手法[15,17]で一部克服)。
- 副生 ZnI₂ のルイス酸性による酸感受性基質の分解。
- 過剰試薬・長時間反応で副生成物が増える[22]。β-ケトエステル基質では、カルベノイドが不足すると α-メチル化体が副生することも報告されている[21]。
- アリルスルフィドなど求核的なヘテロ原子をもつ基質では、カルベノイドがヘテロ原子を攻撃してイリドを生じ、[2,3]-シグマトロピー転位へ流れることがある[13]。
- 分子内に複数のアルケンがあると、古典的条件では電子的に豊富な(より置換された)アルケンが優先され、立体的に空いた末端アルケンだけを選ぶのは難しい[15]。
試薬系の使い分け
| 試薬系 | 主な特徴 | 選択性の傾向 |
|---|---|---|
| Zn–Cu(Zn–Ag)/ CH₂I₂(原法)[1–3] | 安価。不均一系で活性化(ヨウ素、超音波など)に左右される | 電子豊富アルケン優先、水酸基配向 |
| Et₂Zn / CH₂I₂(古川法)[4] | 均一系で再現性が高い。現在の標準 | 同上。配向効果が明瞭 |
| Et₂Zn / ClCH₂I(Denmark)[11] | (クロロメチル)亜鉛は (ヨードメチル)亜鉛より高反応性とされる | 反応性の低いアルケンに有効 |
| CF₃CO₂ZnCH₂I など RXZnCH₂I(Shi)[12,27] | RX 部の電子・立体で反応性を調節できる | 非官能基化・低求核性アルケンにも適用 |
| R₃Al / CH₂I₂(丸岡・山本)[9] | 強力な試薬 | 孤立アルケン選択的とされ、Sm 法と相補的 |
| Sm(Hg) / CH₂I₂(Molander)[10] | 温和 | アリルアルコール選択的。孤立アルケンは残る |
| Co 触媒 / Zn / CH₂Br₂(Uyeda)[15] | 触媒的に活性化。Co/Zn 二核カルベノイドを提案 | 立体支配:末端アルケン選択的 |
| Ni 触媒 / 電解 / CH₂Cl₂(Noël)[17] | 亜鉛不要、常温・空気許容、フロー | 電子豊富・不足アルケンの両方に適用 |
類似反応との比較
| 反応 | CH₂ 源・試薬 | 得意な基質 | 主な利点 | 主な弱点 |
|---|---|---|---|---|
| Simmons–Smith 反応 | CH₂I₂ + Zn(Et₂Zn) | 電子豊富アルケン、アリルアルコール | 立体特異的、配向効果、ジアゾ不要 | 量論亜鉛、Et₂Zn の危険性 |
| 金属カルベノイドによるシクロプロパン化 | ジアゾ化合物 + Rh/Cu など | 置換カルベン(エステル置換など)の導入 | 触媒的、置換シクロプロパン | ジアゾ化合物の取り扱い |
| Corey–Chaykovsky 反応 | スルホキソニウムイリド | α,β-不飽和カルボニル(電子不足) | 電子不足アルケンに強い | 単純アルケンには不適 |
| ジハロカルベン付加 | CHX₃ + 塩基 | 多くのアルケン | 安価、ジハロシクロプロパン | 脱ハロゲンが別途必要 |
| 還元的触媒シクロプロパン化 | CH₂X₂ + Co/Ni/Bi 触媒 | 末端アルケン、電子不足アルケン | 位置選択性の新しい制御軸、亜鉛削減 | 基質適用範囲は発展途上 |
使い分けの目安: 単純なアルケンやアリルアルコールに無置換のメチレンを立体特異的に入れるなら、まず古川法。電子不足アルケン(エノン)なら Corey–Chaykovsky、エステル置換シクロプロパンが欲しければジアゾ化合物の金属触媒反応が第一候補になる。ポリエンの末端だけを選びたい場合は Co 触媒法[15]が選択肢になる。
反応例
不斉シクロプロパン化(Charette 法)
酒石酸由来の N,N,N′,N′-テトラメチル酒石酸ジアミドとブチルボロン酸から調製するジオキサボロラン配位子は、分子内に酸性(ホウ素)と塩基性(アミドカルボニル)の両部位をもつ「両性二官能性配位子」として設計され、アリルアルコールの基質水酸基と亜鉛カルベノイドを同時に組織化して高いエナンチオ選択性を与える[14]。アリルアルコールの不斉シクロプロパン化の標準的手法として、全合成で繰り返し用いられている[25,26]。
(+)-Acetoxycrenulide の全合成
Paquette らは、シクロプロパン環を含むジテルペン (+)-acetoxycrenulide の全合成で Simmons–Smith 型シクロプロパン化を鍵工程の一つとして用いた[19]。
サキサグリプチン中間体のプロセス開発
2型糖尿病治療薬サキサグリプチン(DPP-4 阻害薬)は、シクロプロパンが縮環したプロリン(メタノプロリン)骨格をもつ。BMS のプロセス化学グループは、その鍵中間体であるジヒドロピロールの亜鉛カルベノイドによるシクロプロパン化を詳細に解析し、反応初期の誘導期、Schlenk 平衡における IZnCH₂I の優位性、ブレンステッド酸型添加剤による加速を明らかにした[8]。実験室の名反応がそのまま工業スケールで使われている例であり、同時に「なぜ再現性がばらつくのか」を機構から詰めた研究としても読み応えがある。
鎖延長反応:β-ケトエステル → γ-ケトエステル
Zercher らは、古川試薬が β-ケトエステルの亜鉛エノラートと反応してシクロプロポキシド様の中間体を経由し、メチレン1個分だけ炭素鎖が伸びた γ-ケトエステルを与えることを見いだした[21]。同じ鎖延長反応を基盤として、α,β-不飽和 γ-ケトエステル・アミドを得る手法も報告されている[20]。単純なアルケンのシクロプロパン化にとどまらない、亜鉛カルベノイドの「メチレン挿入」としての応用例である。
触媒的・位置選択的シクロプロパン化[15]
Werth と Uyeda は、ピリジンジイミン配位子をもつ Co 錯体([ⁱᴾʳPDI]CoBr₂, 6 mol%)、亜鉛(還元剤)、CH₂Br₂ を組み合わせ、立体的に最も空いたアルケン選択的なシクロプロパン化を報告した。活性種として Co/Zn 異種二核カルベノイドが提案されている。
亜鉛を使わない新手法(2024–2025)
- Bi 光触媒: Cornella らはビスマス光触媒による還元的シクロプロパン化を報告している[16]。
- Ni 触媒フロー電解: Noël らは、ジクロロメタン(および gem-ジクロロアルカン)をメチレン源とし、Ni 触媒と電解還元を組み合わせたシクロプロパン化を連続フローで実現した[17]。常温常圧で空気・水分に耐性があり、電子豊富・電子不足の両方のアルケンに適用でき、メチル・重水素・クロロ置換シクロプロパンも得られる。マルチグラムスケールに拡張可能とされる。機構研究からは電解生成した Ni カルベンが鍵中間体と考えられている。
連続フローによる Simmons–Smith 反応(2025)
Gruber-Wölfler らは、Zn–Cu カップルを充填したカラム内で亜鉛をフロー活性化してカルベノイドを発生させ、さらに後処理(クエンチ、亜鉛塩の抽出除去)まで二段のクロスフロー抽出で連続化した製造ラインを報告した[18]。Simmons–Smith 反応のボトルネックが「反応そのもの」よりも「亜鉛塩を含む後処理」にあることを正面から扱った例である。
実験手順
標準的な実施例:古川法による β-ケトエステルの鎖延長[21]
- 窒素雰囲気下、乾燥させた 3 L 三口フラスコ(撹拌子、圧力平衡滴下ロート、ガス排出用の大口径アダプター付き)に、P₂O₅ から蒸留した無水ジクロロメタン 1000 mL を入れる。滴下ロートには CH₂I₂ 12.1 mL(150 mmol, 3 当量) を無水ジクロロメタン 75 mL に溶かしたものを仕込む。窒素下で 1 時間撹拌したのち、フラスコを氷水浴で冷却する。
- Et₂Zn(neat)15.4 mL(150 mmol, 3 当量) をシリンジで加える。
- CH₂I₂ 溶液を 約 30 分かけて滴下する(発熱的。通常、白濁する)。
- 10 分後、4,4-ジメチル-3-オキソペンタン酸メチル 8.0 mL(50 mmol) を約 15 秒で一気に加える。
- 45 分撹拌する。TLC(ヘキサン–酢酸エチル 2:1, 原料 Rf ≈ 0.6)で原料消失を確認し、必要以上に反応を延ばさない。
- 飽和塩化アンモニウム水溶液 125 mL を数分かけて慎重に加えて反応を止め(発熱)、さらに 10 分撹拌して分液する。
- 有機層を濃縮し、残渣をエーテル 500 mL に溶かして、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、1 M チオ硫酸ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水で順に洗う。水層はエーテル(150 mL × 3)で再抽出し、合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥・濃縮する。
- 無水炭酸カリウムの存在下で減圧蒸留(58 ℃/1 mmHg)すると、5,5-ジメチル-4-オキソヘキサン酸メチルが無色液体として 7.63–8.09 g(89–94%) 得られる。
当量に関する注記: カルベノイドが 3 当量必要なのは、1 当量がエノラート形成(エタン発生)に、もう 1 当量が CH₂ の供給に使われるためである。2 当量では原料が残り、α-メチル化体が副生すると報告されている[21]。
変法A:原法(Zn–Cu カップル法)によるノルカランの合成[3]
- Zn–Cu カップルの調製: 亜鉛末(0.75 g-atom)を希塩酸、水、硫酸銅水溶液、エタノール、エーテルの順で洗い、吸引乾燥後、P₂O₅ 上で一晩保存する。
- 反応: 無水エーテル中、Zn–Cu カップルにヨウ素の小片を加えて褐色が消えるまで撹拌して活性化し、CH₂I₂(0.71 mol)とシクロヘキセン(0.65 mol)を加えて穏やかに還流する。30〜45 分後に穏やかな発熱が始まり、約 30 分で収まる。計約 15 時間還流する。
- 収率: ノルカラン 56–58%(bp 116–117 ℃)。
変法B:Shi 型試薬(CF₃CO₂ZnCH₂I)
Et₂Zn にトリフルオロ酢酸を作用させてから CH₂I₂ を加えると、より反応性の高いカルベノイドが得られる。RX 部(カルボン酸、フェノール、リン酸など)を替えることで反応性と選択性を調節でき、配向基をもたないアルケンにも適用できる[12,27]。
実験のコツ・テクニック
- Et₂Zn は自然発火性。 空気中で発火し、水と激しく反応する。窒素下、乾燥器具・乾燥シリンジで扱い、ニードル先端の残液にも注意する。市販のヘキサン溶液を使うと取り扱いはいくらか容易になるが、危険性がなくなるわけではない。
- カルベノイド生成は発熱的。 Organic Syntheses の手順でも、氷浴を外さず CH₂I₂ をゆっくり加えるよう、爆発の可能性に言及して注意喚起されている[21]。スケールを上げるほど除熱が律速になる。
- ガスの逃げ道を確保する。 Et₂Zn 由来のエタンが発生するため、窒素ラインには太いアダプターやバブラーを付け、密閉系にしない。
- クエンチも発熱する。 飽和 NH₄Cl 水溶液は少しずつ加える。
- 反応を延ばしすぎない。 過剰のカルベノイドに長く曝すと基質が分解し、メチル化などの副生成物が増える[21,22]。TLC で追跡して原料が消えたら止める。
- 水酸基をもつ基質では当量を増やす。 水酸基は最初の 1 当量で亜鉛アルコキシドになり、試薬を消費する。
- Zn–Cu カップル法では活性化が成否を分ける。 ヨウ素片の添加や超音波照射で亜鉛表面を活性化すると、誘導期が短くなり再現性が上がる。
- 再現性が悪いときは誘導期を疑う。 反応が「なかなか始まらず、始まると一気に進む」場合、カルベノイドの組成変化に伴う誘導期の可能性がある。工業的研究では酸性添加剤で誘導期を短縮できることが示されている[8]。
- 後処理で亜鉛塩を確実に除く。 チオ硫酸ナトリウム水溶液での洗浄はヨウ素由来の着色を除くのに有効。亜鉛塩はエマルションの原因になりやすい。
- CH₂I₂ は光で分解して着色しやすい。 遮光して保存し、着色が進んだものは使用前に精製を検討する。
参考文献
【原著】
- Simmons, H. E.; Smith, R. D. “A New Synthesis of Cyclopropanes from Olefins” J. Am. Chem. Soc. 1958, 80, 5323–5324. DOI: 10.1021/ja01552a080
- Simmons, H. E.; Smith, R. D. “A New Synthesis of Cyclopropanes” J. Am. Chem. Soc. 1959, 81, 4256–4264. DOI: 10.1021/ja01525a036
- Smith, R. D.; Simmons, H. E. “Norcarane” Org. Synth. 1961, 41, 72; Coll. Vol. 5, 855. DOI: 10.15227/orgsyn.041.0072
- Furukawa, J.; Kawabata, N.; Nishimura, J. “A novel route to cyclopropanes from olefins” Tetrahedron Lett. 1966, 7, 3353–3354. DOI: 10.1016/S0040-4039(01)82791-X
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【機構・理論】
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- Nakamura, M.; Hirai, A.; Nakamura, E. “Reaction Pathways of the Simmons−Smith Reaction” J. Am. Chem. Soc. 2003, 125, 2341–2350. DOI: 10.1021/ja026709i
- Ramirez, A.; Truc, V. C.; Lawler, M.; Ye, Y. K.; Wang, J.; Wang, C.; Chen, S.; Laporte, T.; Liu, N.; Kolotuchin, S.; Jones, S.; Bordawekar, S.; Tummala, S.; Waltermire, R. E.; Kronenthal, D. “The Effect of Additives on the Zinc Carbenoid-Mediated Cyclopropanation of a Dihydropyrrole” J. Org. Chem. 2014, 79, 6233–6243. DOI: 10.1021/jo500966m
【変法・改良法】
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【不斉化】
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【触媒化・新手法】
- Werth, J.; Uyeda, C. “Regioselective Simmons–Smith-type cyclopropanations of polyalkenes enabled by transition metal catalysis” Chem. Sci. 2018, 9, 1604–1609. DOI: 10.1039/c7sc04861k
- Ni, S.; Spinnato, D.; Cornella, J. “Reductive Cyclopropanation through Bismuth Photocatalysis” J. Am. Chem. Soc. 2024, 146, 22140–22144. DOI: 10.1021/jacs.4c07262
- Regnier, M.; Vega, C.; Ioannou, D. I.; Zhang, Z.; Noël, T. “Flow Electroreductive Nickel-Catalyzed Cyclopropanation of Alkenes Using gem-Dichloroalkanes” Angew. Chem. Int. Ed. 2025, e202500203. DOI: 10.1002/anie.202500203
- Moser, D. M.; Boehm, J.; Correia, L.; Soritz, S.; Neugebauer, P.; Kirschneck, D.; Pöchlauer, P.; Gruber-Wölfler, H. “A Continuous Manufacturing Line Generating Organozinc Species in Flow: Enhancing the Simmons-Smith Reaction Including Post-Reaction Processing” Org. Process Res. Dev. 2025, 29, 2361–2369. DOI: 10.1021/acs.oprd.5c00230
【応用例】
- Paquette, L. A.; Wang, T.-Z.; Pinard, E. “Total Synthesis of Natural (+)-Acetoxycrenulide” J. Am. Chem. Soc. 1995, 117, 1455–1456. DOI: 10.1021/ja00109a041
- Ronsheim, M. D.; Zercher, C. K. “Zinc Carbenoid-Mediated Chain Extension: Preparation of α,β-Unsaturated-γ-keto Esters and Amides” J. Org. Chem. 2003, 68, 4535–4538. DOI: 10.1021/jo026299g
- Ronsheim, M. D.; Hilgenkamp, R. K.; Zercher, C. K. “Formation of γ-Keto Esters from β-Keto Esters: Methyl 5,5-Dimethyl-4-oxohexanoate” Org. Synth. 2002, 79, 146. DOI: 10.15227/orgsyn.079.0146
【副反応】
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【総説】
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- Hoveyda, A. H.; Evans, D. A.; Fu, G. C. “Substrate-directable chemical reactions” Chem. Rev. 1993, 93, 1307–1370. DOI: 10.1021/cr00020a002
- Charette, A. B.; Beauchemin, A. “Simmons-Smith Cyclopropanation Reaction” Org. React. 2001, 58, 1–415. DOI: 10.1002/0471264180.or058.01
- Lebel, H.; Marcoux, J.-F.; Molinaro, C.; Charette, A. B. “Stereoselective Cyclopropanation Reactions” Chem. Rev. 2003, 103, 977–1050. DOI: 10.1021/cr010007e
- Feng, X.; Du, H. “Unveiling the Power of Tunable RXZnCH₂I Carbenoids for the Cyclopropanation of Olefins” Synthesis 2026, 58, 329–343. DOI: 10.1055/a-2733-3971
- Munir, R.; Zahoor, A. F.; Javed, S.; Parveen, B.; Mansha, A.; Irfan, A.; Khan, S. G.; Irfan, A.; Kotwica-Mojzych, K.; Mojzych, M. “Simmons–Smith Cyclopropanation: A Multifaceted Synthetic Protocol toward the Synthesis of Natural Products and Drugs: A Review” Molecules 2023, 28, 5651. DOI: 10.3390/molecules28155651
【書籍】
- Helquist, P. in Comprehensive Organic Synthesis, Vol. 4, Pergamon, 1991, p. 951.
- Pellissier, H.; Lattanzi, A.; Dalpozzo, R. Asymmetric Synthesis of Three-Membered Rings, Wiley-VCH, 2017.
関連反応
関連書籍
Metal Carbenes In Organic Synthesis (Topics in Organometallic Chemistry)
Cyclopropanes in Organic Synthesis (English Edition)
外部リンク
- Simmons–Smith reaction – Wikipedia(英語)
- シモンズ・スミス反応 – Wikipedia(日本語)
- Simmons-Smith Reaction – organic-chemistry.org
- Organic Syntheses, Coll. Vol. 5, p. 855(ノルカラン)
- Organic Syntheses, Vol. 79, p. 146(γ-ケトエステル)
- Cyclopropanation via Metal Carbenes/Carbenoids — ACS GCI Pharmaceutical Roundtable Reagent Guide
- Charette Asymmetric Cyclopropanation | Chem-Station Int. Ed.
- Howard Ensign Simmons Jr. – Wikipedia(英語)
- Cyclopropane – Wikipedia(英語)
- ピレスロイド – Wikipedia(日本語)
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