[スポンサーリンク]

odos 有機反応データベース

ヴィルスマイヤー・ハック反応 Vilsmeier-Haack Reaction

[スポンサーリンク]

概要

ヴィルスマイヤー・ハック反応(Vilsmeier-Haack Reaction)は、オキシ塩化リン(POCl3)などの強力な脱水剤共存下、アミドと電子豊富多重結合の間で進行する求電子置換反応である。

特に電子豊富な芳香環・複素環にホルミル基を導入する目的に適した反応。操作が簡単で、反応条件も温和であり、電子供与基を持つアルケンにも適用可能である。

基本文献

<review>

開発の歴史

1925年、Fischer、Müller、Vilsmeierの3人は、オキシ塩化リンとN-メチルアセトアニリドの反応から、キノリニウム塩を含む多くの生成物を与える反応を原型として報告した。その後、1927年のVilsmeierおよびHaackのN-メチルホルムアニリドを用いる反応が報告され、本反応が確立された。

Anton Vilsmeier (こちらより引用)

反応機構

DMFとオキシ塩化リンPOCl3との反応により、求電子性の高いVilsmeier反応剤が生成し、これが芳香族求電子置換反応(SEAr反応)を進行させる。引き続く加水分解によりホルミル化体を与える。この場合は強いP-O結合の形成が反応の駆動力となっている。オキシ塩化リンの代わりに、塩化オキサリル(COCl)2や塩化チオニルSOCl2も用いることができる。

Vilsmeier試薬はカルボン酸と反応させると速やかに酸塩化物を与える。機構上、DMFが再生するので、触媒量のDMFと(COCl)2で反応を行う条件が良く用いられる。

反応例

電子豊富基質のホルミル化

ポルフィリン合成中間体への応用[1]

アズレンのホルミル化[2]

フェロセンのホルミル化[3]

電子豊富なアルケンもVilsmeier反応の対象となる[4]。

14-hydroxydihydrocodeinoneエノールエーテルとの反応[5]

塩素化剤としての活用

PyBOX配位子の合成[6]

糖アノマー位の塩素化[7]: 固相担持ホルムアミド触媒を用いて行っている。

ケトンのクロロホルミル化反応[8]

実験手順

p-ジメチルアミノベンズアルデヒドの合成[9]

攪拌子、滴下漏斗、塩化カルシウム管付き還流冷却器を備えた2リットルの三径丸底フラスコに、ジメチルホルムアミド(440 g, 6 mol)を加える。氷浴でフラスコを注意深く冷却しつつ撹拌しながら、オキシ塩化リン(253 g, 1.65 mol)を滴下する。オキシ塩化リンの滴下が完了し、反応熱が収まったところで、ジメチルアニリン(200 g, 1.65 mol)を撹拌しながら滴下する。ジメチルアニリンの滴下が完了すると、黄緑色の沈殿物が生成し始める。反応混合物をスチームバスで加熱し、2時間撹拌を続ける。加熱を開始すると、黄緑色の沈殿物が再度溶解する。その後、混合物を冷却し、5リットルのビーカーに入れた砕いた氷(1.5 kg)の上に注ぎ込む。フラスコ内に残った沈殿物は、冷水で氷の混合物に洗いこむ。この溶液を、激しく攪拌しながら飽和酢酸ナトリウム水溶液(約1.5リットル)を滴下してpH6-8に中和する。中性混合物(総量約4.5リットル)を冷蔵庫で一晩保存する。緑がかった結晶状の沈殿物を吸引濾過し、水で数回洗浄する。緑色は洗浄中に除去される。乾燥後、目的物は淡黄色~ほぼ無色の生成物として198~208g(80~84%収率)で得られる。融点73~74℃。

実験のコツ・テクニック

 

関連動画

参考文献

  1. Borbas, K. E.; Kee, H. L.; Holten, D.; Lindsey, J. S. Org. Biomol. Chem. 2008, 6, 187. doi:10.1039/B715072E
  2. Lash, T. D.; El-Beck, J. A.; Ferrence, G. M. J. Org. Chem. 2007, 72, 8402. doi:10.1021/jo701523s
  3. Sato, M.; Kono, H.; Shiga, M.; Motoyama, I.; Hata, K. Bull. Chem. Soc. Jpn. 1968, 41, 252. doi:10.1246/bcsj.41.252
  4. Singh, P. P.; Reddy, P. B.; Sawant, S. D.; Koul, S.; Taneja, S. C.; Kumar, H. M. S. Tetrahedron Lett. 2006, 47, 7241. doi:10.1016/j.tetlet.2006.07.126
  5. Lester, M. G.; Petrow, V.; Stephenson, O. Tetrahedron 1964, 20, 1407. doi:10.1016/S0040-4020(01)99134-3
  6. Totleben, M. J.; Prasad, J. S.; Simpson, J. H.; Chan, S. H.; Vanyo, D. J.; Kuehner, D. E.; Deshpande, R.; Kodersha, G. A. J. Org. Chem. 2001, 66, 1057. doi:10.1021/jo005652k
  7. Encinas, L.; Chiara, J. L. J. Comb. Chem. 2008, 10, 361. doi:10.1021/cc800022h
  8. Meesaloa, R.; Nagarajan, R. Tetrahedron Lett. 2006, 47, 7557. doi:10.1016/j.tetlet.2006.08.087
  9. Campigne, E.; Archer, W. L. Org. Synth. 1953, 33, 27.  DOI: 10.15227/orgsyn.033.0027

関連書籍

[amazonjs asin=”B079J4RBYS” locale=”JP” title=”Synthesis Using Vilsmeier Reagents (English Edition)”]

関連反応

外部リンク

Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 根岸試薬(Cp2Zr) Negishi Reagent
  2. 向山・鈴木グリコシル化反応 Mukaiyama-Suzuki G…
  3. ベロウソフ・ジャボチンスキー反応 Belousov-Zhabot…
  4. エンインメタセシス Enyne Metathesis
  5. ケック不斉アリル化 Keck Asymmetric Allyla…
  6. デーブナー・フォン=ミラー キノリン合成 Doebner-von…
  7. ジェイコブセン・香月エポキシ化反応 Jacobsen-Katsu…
  8. 重水素標識反応 Deuterium Labeling React…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 抗体ペアが抗原分子上に反応場をつくり出す―2つの抗体エピトープを利用したテンプレート反応の開発―
  2. 並外れた光可逆的粘弾性変化を示すシリコーンエラストマーの開発~市販のレーザーポインターをあてるだけで簡単にはがせる解体性粘接着剤用途に期待~
  3. 熱を効率的に光に変換するデバイスを研究者が開発、太陽光発電の効率上昇に役立つ可能性
  4. 日本電子の米国法人、有機物を非破壊検出できるイオン源を開発
  5. イオン液体のリチウムイオン電池向け電解液・ ゲル電解質への応用【終了】
  6. 日本酸素記念館
  7. 化学系必見!博物館特集 野辺山天文台編~HC11Nってどんな分子?~ 45 mミリ波電波望遠鏡(筆者撮影)
  8. フロー法で医薬品を精密合成
  9. 国際化学オリンピック2022日本代表決定/化学グランプリ2022応募始まる
  10. 速報! ノーベル物理学賞2014日本人トリプル受賞!!

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年6月
月 火 水 木 金 土 日
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

注目情報

最新記事

2026年ノーベル化学賞ケムステ予想当選者発表!

2026年のノーベル化学賞は、「不斉有機合成における非線形効果および自己触媒作用の発…

第64回ケムステVシンポ「データとともに進化する未来の化学」を開催します!

第64回ケムステVシンポの会告を致します。産業技術総合研究所主催の化学シンポジウムシリーズ(…

品質工学とマテリアルズ・インフォマティクス ― 両技術の概要と連携事例

開催概要材料開発やものづくりの現場では、探索すべき組成やプロセス条件が増えるほど組み合わせが爆発…

大学院留学してよかったこと, 悪かったこと【英語, 経済面, オーバードクターに関するお話】

海外の大学で、その大学に籍を置く大学 (院) 生として留学することは「学位留学」と呼ばれたりします。…

光前駆体法の活用によって、ヘプタセンで初の一重項分裂を観測!

第725回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院 理学研究科化学専攻 有機元素化学研究室(山田研…

【スタッフ・寄稿募集】Chem-Stationで、化学を「伝える側」になりませんか?

Chem-Station(ケムステ)は2000年に開設された国内最大の化学ポータルサイトです。大学・…

第17回大津会議―とある参加者の記録―

2026年9月28日~29日に開催された第17回大津会議についての、とある参加者の記録です。この記事…

第17回大津会議 -Otsu Conference- 2026 開催報告 ~新体制で紡ぐ「有機合成の夢」~

第17回大津会議が2026年9月28日(月)〜9月29日(火)びわ湖大津プリンスホテルにて開催されま…

有機合成化学協会誌2026年10月号:医薬品プロセス開発・σ芳香族性・含窒素複素環・メロテルペノイド二量体・高歪み化合物

有機合成化学協会が発行する「有機合成化学協会誌」2026年10月号がオンラインで公開されています。…

時代は水だ! セメントのように水と混ぜるだけで成形・硬化できる「水硬性」高分子

第724回のスポットライトリサーチは、東京科学大学物質理工学院(大塚研究室)博士前期課程2年の徳満玲…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP