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大幸薬品、「クレベリン」の航空輸送で注意喚起 搭載禁止物質や危険物に該当

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大幸薬品は、同社が展開する「クレベリンシリーズ」の航空輸送について、注意喚起を行っている。  (引用:TRAICY2月13日)

大鵬薬品工業から発売されているクレベリンシリーズは、ノロウイルス対策でよく使われる市販の薬剤ですが、航空輸送で規制されている化合物が含まれているとしてメーカーが注意喚起を行っています。

クレベリンにはいくつか種類がありますが、クレベリン 置き型とクレベリン スプレーには、二酸化塩素が含まれていて、それがウィルスやカビを減少させたり、悪臭成分のアンモニアなどを分解すると報告されています。しかしながら、二酸化塩素は腐食性物質であり、大鵬薬品のサイトでは、

成分の『二酸化塩素』が 航空法上の『搭載禁止物質』に指定されているため、航空機に載せることはできません。

と書かれていて、貨物航空機も含めて積載できないとしています。この積載禁止の根拠を考えるうえでは国連番号が重要で、化合物の品名によって輸送手段や輸送に使う容器が決められています。純粋な二酸化塩素は、航空機による爆発物等の輸送基準等を定める告示に航空機には積載禁止と明記されていますが、二酸化塩素の水溶液については明記されていません。

また、クレベリンにはスティック ペンタイプもあり、こちらには亜塩素酸ナトリウムが使われていますが、

成分の『亜塩素酸ナトリウム』は『危険物』にあたるので、手荷物および預け荷物のいずれでも機内持ち込みはできません。

と書かれていて、旅客機に積載できないとしています。純粋な亜塩素酸ナトリウムは固体でUN1496となり、旅客機も含めて航空機で運搬することができます。しかしながら、クレベリンには亜塩素酸ナトリウム水溶液として含まれているため、UN1496ではなくなります。

この二つの水溶液の航空輸送をルールに則って考えると、品名が記載されていない化学品については危険性評価試験の結果によって分類されます。試験によって危険区分に該当されると、国連番号の品名としては、Not Otherwise Specified(NOS:他に品名が明示されているものを除く)に分類され、危険度に応じた輸送のルールが適用されます。二酸化塩素と亜塩素酸ナトリウムの水溶液は、酸化性物質と腐食性物質に該当する可能性があり、区分は試験次第だと考えられます。

実のところ、クレベリンのSDSは公開されていて、二酸化塩素のタイプは、国連分類に該当せず危険物ではないと記載されていて、亜塩素酸ナトリウムのタイプでもUN3266(その他の腐食性物質(無機物)(液体)(アルカリ性のもの))で危険等級区分3と記載されているため、航空機での輸送が可能だということになります。なぜ過去に作成したSDSの情報を覆して航空機で輸送できないと報告しているかはわかりませんが、上記の実験で最高レベルの危険区分になったとしても適切な容器と包装によって積載することができるわけであり、今回の注意喚起の表現には引っかかります。筆者の推測ですが、不用意に乗客が機内持ち込むことを防ぐためのメッセージである可能性があり、機内に持ち込んだクレベリンが漏れて客室に刺激臭が充満することは製造メーカーとして避けるべき事態であり、このような注意喚起になったのかもしれません。

リチウムイオン電池の普及により電子機器のバッテリーの持ちは飛躍に向上しましたが、それと同時に機内での発火が相次ぎ、積載に関するいろいろなルールが追加されています。スピードが求められる昨今のビジネスでは、リスクがある化学品を飛行機で輸送することは当たり前に行われています。安全を守るために運送依頼時の正しい申告と正確なSDSの提出が必要であることは言うまでもありません。

追記:多くの国内航空会社(ANA、 JAL、 ピーチ、 スカイマーク、 AIRDO、 天草、 FDA、 IBEX、 ORC )が、この商品を名指しで持ち込み、預け荷物ともに不可であることをコロナウィルスの連絡とともに発表しています。SDSに基づく化学品の空輸のルールは貨物を対象にしており、乗客が持ち込むものについては、より厳しく包括的に設定されています。空港や航空会社のルールを確認し、書かれたルールで判断できないものをやむを得ず手荷物で運ぶ際には事前に相談し、トラブルを防ぐ必要があるかと思います。

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ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

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