[スポンサーリンク]

A

有機亜鉛試薬 Organozinc Reagent

[スポンサーリンク]

 

概要

有機亜鉛試薬(organozinc reagent)は反応性が穏和であり、適切な配位子存在下にアルデヒド選択的に反応を起こすことが知られている。

触媒量のキラルアミノアルコールもしくはTi-TADDOL錯体を用いることで、アルデヒドへの不斉付加反応が行える。野依らによって開発されたDAIBが特に有名(上記スキーム)。

銅-キラルホスフィン触媒系を用いればα,β-不飽和カルボニル化合物に対する不斉1,4-付加も起こせる。

基本文献

  • Kitamura, M.; Suga, S.; Kawai, K.; Noyori, R. J. Am. Chem. Soc. 1986, 108, 6071. DOI: 10.1021/ja00279a083
  • Noyori, R.; Suga, S.; Kawai, K.; Okada, S.; Kitamura, M.; Oguni, N.; Hayashi, M.; Kaneko, T.; Matsuda, Y. J. Organomet. Chem. 1990, 382, 19. doi:10.1016/0022-328X(90)85212-H
  • Noyori, R.; Kitamura, M. Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 199130, 49. doi:10.1002/anie.199100491
  • Soai, K.; Niwa, S. Chem. Rev. 1992, 92, 833. DOI: 10.1021/cr00013a004
  • Erdik, E. Tetrahedron 1992, 48, 9577. doi:10.1016/S0040-4020(01)81181-9
  • Knochel, P.; Singer, R. D. Chem. Rev. 199393, 2117. DOI: 10.1021/cr00022a008
  • Knochel, P.; Perea, J. J. A.; Jones, P. Tetrahedron 199854, 8275. doi:10.1016/S0040-4020(98)00318-4
  •  Soai, K. Enantiomer 1999, 4, 591.
  • Frantz, D. E.; Faessler, R.; Tomooka, C. S.; Carreira, E. M. Acc. Chem. Res. 2000, 33, 373. DOI: 10.1021/ar990078o
  • Boudier, A.; Bromm, L. O.; Lotz, M.; Knochel, P. Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 2000, 39, 4415. [abstract]
  • Knochel, P.; Millor, N.; Rodriguez, A. L.; Tucker, C. E. Org. React. 2001, 58, 417.
  • Pu, L.; Yu, H.-B. Chem. Rev. 2001, 101, 757. DOI: 10.1021/cr000411y
  • Krasovskiy, A.; Malakhov, V.; Gavryushin, A.; Knochel, P. Angew. Chem. Int. Ed. 2006, 45, 6040. doi:10.1002/anie.200601450

 

反応機構

亜鉛試薬は会合しやすく、実際の反応挙動は複雑である。
不斉付加に関しては用いる不斉配位子のエナンチオ過剰率よりも高いエナンチオ選択性で成績体が得られる非線形効果(Non-Linear
Effect)
が観測されている。Kaganらによって提唱されたML2モデルが本現象をよく説明しうるものとして受け入れられている。

 

反応例

 

実験手順

organozinc_2.gif

実験のコツ・テクニック

Li-ナフタレニドなどで還元して用時調製されたRieke亜鉛[1]は活性が高く、有機亜鉛試薬の生成によく用いられる。

 

参考文献

[1] Rieke, R. D. Aldrichimica Acta 200033, 52.

 

関連反応

 

関連書籍

[amazonjs asin=”6136252449″ locale=”JP” title=”Organozinc Compound”][amazonjs asin=”0198501218″ locale=”JP” title=”Organozinc Reagents: A Practical Approach (The Practical Approach in Chemistry Series)”][amazonjs asin=”0849391512″ locale=”JP” title=”Organozinc Reagents in Organic Synthesis (New Directions in Organic & Biological Chemistry)”][amazonjs asin=”4759809368″ locale=”JP” title=”有機金属反応剤ハンドブック―3Liから83Biまで”]
Avatar photo

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 水素化ジイソブチルアルミニウム Diisobutylalumin…
  2. プラトー反応 Prato Reaction
  3. カルボニル基の保護 Protection of Carbonyl…
  4. 高井・内本オレフィン合成 Takai-Utimoto Olefi…
  5. シュガフ脱離 Chugaev Elimination
  6. パリック・デーリング酸化 Parikh-Doering Oxid…
  7. フェルキン・アーン モデル Felkin-Anh Model
  8. ブヘラ・ベルクス反応 Bucherer-Bergs reacti…

注目情報

ピックアップ記事

  1. ニセ試薬のサプライチェーン
  2. (1-ジアゾ-2-オキソプロピル)ホスホン酸ジメチル:Dimethyl (1-Diazo-2-oxopropyl)phosphonate
  3. 分子集合体がつくるポリ[n]カテナン
  4. 岩村 秀 Hiizu Iwamura
  5. ADEKAとAGCが女優出演の新作CMを放映
  6. ノーベル賞への近道?ー研究室におけるナレッジマネジメントー
  7. 平井 剛 Go Hirai
  8. ジイミド還元 Diimide Reduction
  9. 有機合成の進む道~先駆者たちのメッセージ~
  10. 群ってなに?【化学者だって数学するっつーの!】

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2010年1月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

注目情報

最新記事

ジョセップ・コルネラ Josep Cornella

ジョセップ・コルネラ(Josep Cornella、1985年2月2日–)はスペイン出身の有機・無機…

電気化学と数理モデルを活用して、複雑な酵素反応の解析に成功

第658回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院 農学研究科(生体機能化学研究室)修士2年の市川…

ティム ニューハウス Timothy R. Newhouse

ティモシー・ニューハウス(Timothy R. Newhouse、19xx年xx月x日–)はアメリカ…

熊谷 直哉 Naoya Kumagai

熊谷 直哉 (くまがいなおや、1978年1月11日–)は日本の有機化学者である。慶應義塾大学教授…

マシンラーニングを用いて光スイッチング分子をデザイン!

第657 回のスポットライトリサーチは、北海道大学 化学反応創成研究拠点 (IC…

分子分光学の基礎

こんにちは、Spectol21です!分子分光学研究室出身の筆者としては今回の本を見逃…

ファンデルワールス力で分子を接着して三次元の構造体を組み上げる

第 656 回のスポットライトリサーチは、京都大学 物質-細胞統合システム拠点 (iCeMS) 古川…

第54回複素環化学討論会 @ 東京大学

開催概要第54回複素環化学討論会日時:2025年10月9日(木)~10月11日(土)会場…

クソニンジンのはなし ~草餅の邪魔者~

Tshozoです。昔住んでいた社宅近くの空き地の斜面に結構な数の野草があって、中でもヨモギは春に…

ジアリールエテン縮環二量体の二閉環体の合成に成功

第 655回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院松田研究室の 佐竹 来実さ…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP