[スポンサーリンク]

odos 有機反応データベース

シモンズ・スミス反応 Simmons-Smith Reaction

[スポンサーリンク]

 

概要

CH2I2-Zn系を用いるオレフィンのシクロプロパン化反応。 シクロプロパン環をもつ化合物は天然物・合成品問わず生理活性化合物および医薬品に数多く存在する。効率的合成法の開発は今もって高い需要がある。

通常、亜鉛を銅もしくは銀と合金にして用いる。ハロゲン化有機亜鉛がオレフィンと反応し、結果として遊離のカルベン類から得られる生成物と同一物を生成する。亜鉛の代わりにEt2Zn,
Cu, R3Al, Sm(Hg)等を用 いたり、CH2N2-ZnI2系試剤を用いる方法もあり、それぞれ生成物の位置選択性、立体選択性が異なる。特に均一系のCH2I2-Et2Zn条件(古川法)は再現性の観点で優れている。

一般にオレフィンの反応性は電子供与性の置換基をもつ化合物ほど高い。BF3などのLewis酸を加えると一般に反応は加速される。官能基選択性が高く、条件も穏和であり、副反応もほとんどおこらない。

基本文献

  • Simmons, H. E.; Smith, R. D. J. Am. Chem. Soc. 195880, 5323. DOI: 10.1021/ja01552a080
  • Simmons, H. E.; Smith, R. D. J. Am. Chem. Soc. 195981, 4256. DOI: 10.1021/ja01525a036
  • Smith, R. D.; Simmons, H. D. Org. Synth. 196141, 72. [website]
  • Furukawa, J.; Kawabata, N.; Nishimura, J. Tetrahedron Lett. 1966, 7, 3353. DOI: 10.1016/S0040-4039(01)82791-X
  • Denis, J. M.; Girard, J. M.; Conia, J. M. Synthesis 1972, 549.
  • Simmons, H. E. et al. Org. React. 197320, 1.
  • Joska, J.; Fajkos, J.; Czech. C. Chem. Commun. 1981, 46, 2751.
  • Helquist, P, Comprehensive Organic Synthesis 19914, 951.

 

反応機構

まずジヨードメタンが亜鉛と反応して有機亜鉛化合物が生成し、これが協奏的にオレフィン付加およびハロゲン脱離をおこし、立体特異的に三員環を構築する。アルケンの異性化は起こらない。(参考: J. Am. Chem. Soc. 1998120, 5844; J. Am. Chem. Soc. 2003125, 2341.)
ene-ane13.gif

反応例

ヒドロキシル基などの極性官能基が存在すると、配位によって立体選択性が発現する(directing effect)。[1] ene-a22.gif
金属サマリウムを用いるシクロプロパン化反応は活性が高く、種々アリルアルコール誘導体に適用されている。
ene-an2.gif
不斉シクロプロパン化(Charette法)[2] simmons_smith_3.gif
(+)-acetoxycrenulideの合成[3] simmons_smith_6.gif
1,3-ジケトンから1,4-不飽和ジケトンへの変換[4] simmons_smith_7.gif

実験手順

β-ケトエステルからγ-ケトエステルへの変換[5] simmons_smith_8.gif

バブラー、攪拌子、滴下漏斗(125mL)を備えた3L三径丸底フラスコに、窒素雰囲気下、無水ジクロロメタン(1000mL)を加えて1時間攪拌しながら氷冷する。neatのジエチル亜鉛(15.4
mL, 150 mmol)を加えて溶液にし、そこにヨウ化メチル(12.1mL, 150mmol)のジクロロメタン(75mL)溶液を30分かけて滴下する。さらに10分攪拌後、methyl
4,4-dimethyl-3-oxopentanoate (8.0mL. 50mmol)をシリンジで15秒かけて加える。45分攪拌後、飽和塩化アンモニウム水溶液(125mL)を注意深く加えて反応を停止させる。10分攪拌後、有機層を分取し、エバポレータで溶媒を留去する。残渣をジエチルエーテル(500mL)で希釈し、飽和重曹水(125mL)、1Mチオ硫酸ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄する。水槽をジエチルエーテル(3×150mL)で抽出し、有機層を合わせて無水硫酸ナトリウムで乾燥させる。ろ過し、エバポレータで濃縮したのちに無水炭酸カリウムを加えて減圧蒸留精製(58℃、1mmHg)することで目的物を無色油状物質として得る(7.63-8.09
g, 収率89-94%)。

 

実験のコツ・テクニック

※ジエチル亜鉛は発火性があるので注意して取り扱うこと。

 

参考文献

[1] Review of Henbest Rule: Hoveyda, A. H.; Evans, D. A.; Fu, G. C. Chem. Rev. 1993, 93, 1307. DOI:10.1021/cr00020a002

[2] Charette, A. B.; Juteau, H. J. Am. Chem. Soc. 1994116, 2651.DOI: 10.1021/ja00085a068

[3] Paquett, L. A.; Wang, T.-Z.; Pinard, E. J. Am. Chem. Soc. 1995, 117, 1455. DOI: 10.1021/ja00109a041

[4] Ronsheim, M. D.; Zercher,C. K. J. Org. Chem. 200368, 4535. DOI: 10.1021/jo026299g

[5] Ronsheim, M. D.; Hilgenkamp, R. K.; Zercher, C. K. Org. Synth. 2002, 79, 146. [PDF]

 

関連反応

 

関連書籍

 

外部反応

関連記事

  1. 有機亜鉛試薬 Organozinc Reagent
  2. 歪み促進逆電子要請型Diels-Alder反応 SPIEDAC …
  3. コーンブルム酸化 Kornblum Oxidation
  4. 水素化ホウ素ナトリウム Sodium Borohydride
  5. ヴィドマン・ストーマー シンノリン合成 Widman-Stoer…
  6. 芳香族メタ光環化付加 Aromatic meta-photoc…
  7. 2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル保護基 Teoc Pr…
  8. アシル系保護基 Acyl Protective Group

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 銀の殺菌効果がない?銀耐性を獲得するバシラス属菌
  2. 【Vol.1】研究室ってどんな設備があるの? 〜ロータリーエバポレーター〜
  3. 2021年、ムーアの法則が崩れる?
  4. 簡単に扱えるボロン酸誘導体の開発 ~小さな構造変化が大きな違いを生んだ~
  5. 学部4年間の教育を振り返る
  6. ギ酸ナトリウムでconPETを進化!
  7. セイファース・ギルバート アルキン合成 Seyferth-Gilbert Alkyne Synthesis
  8. トップ・ドラッグ―その合成ルートをさぐる
  9. 橋頭位二重結合を有するケイ素化合物の合成と性質解明
  10. 疑惑の論文200本発見 米大が盗作探知プログラム開発

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年6月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

注目情報

最新記事

5/15(水)Zoom開催 【旭化成 人事担当者が語る!】2026年卒 化学系学生向け就活スタート講座

化学系の就職活動を支援する『化学系学生のための就活』からのご案内です。化学業界・研究職でのキャリ…

フローマイクロリアクターを活用した多置換アルケンの効率的な合成

第610回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院理学研究科(依光研究室)に在籍されていた江 迤源…

マリンス有機化学(上)-学び手の視点から-

概要親しみやすい会話形式を用いた現代的な教育スタイルで有機化学の重要概念を学べる標準教科書.…

【大正製薬】キャリア採用情報(正社員)

<求める人物像>・自ら考えて行動できる・高い専門性を身につけている・…

国内初のナノボディ®製剤オゾラリズマブ

ナノゾラ®皮下注30mgシリンジ(一般名:オゾラリズマブ(遺伝子組換え))は、A…

大正製薬ってどんな会社?

大正製薬は病気の予防から治療まで、皆さまの健康に寄り添う事業を展開しています。こ…

一致団結ケトンでアレン合成!1,3-エンインのヒドロアルキル化

ケトンと1,3-エンインのヒドロアルキル化反応が開発された。独自の配位子とパラジウム/ホウ素/アミン…

ベテラン研究者 vs マテリアルズ・インフォマティクス!?~ 研究者としてMIとの正しい向き合い方

開催日 2024/04/24 : 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足…

第11回 慶應有機化学若手シンポジウム

シンポジウム概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大…

薬学部ってどんなところ?

自己紹介Chemstationの新入りスタッフのねこたまと申します。現在は学部の4年生(薬学部)…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP