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右田・小杉・スティル クロスカップリング Migita-Kosugi-Stille Cross Coupling

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概要

・パラジウム触媒を用い、有機ハロゲン化物or有機トリフラートと有機スズ化合物間でクロスカップリングを行う手法。パラジウムカップリングの中では相当にマイルドな条件(ほぼ中性条件)で反応が進むため、天然物合成・複雑化合物合成の最終段階で多用される。

・慢性毒性を示す有機スズ化合物を当量以上必要とする点が最大のデメリット。合成品を生理活性評価に使用する際には注意が必要。

基本文献

  •  Kosugi, M. Sasazawa, K.; Shimizu, Y.; Migita, T. Chem. Lett. 1977, 301. doi:10.1246/cl.1977.301
  •  Milstein, D.; Stille, J. K. J. Am. Chem. Soc. 1978100, 3636. doi:10.1021/ja00479a077
  •  Stille, J. K. Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 198625, 508. doi:10.1002/anie.198605081
  •  Farina, V.; Krishnamurthy, V.; Scott, W. J. Org. React. 1997, 50, 1.
  •  Mitchell, T. N. Synthesis 1992, 803. doi:10.1055/s-1992-26230
  •  Review for Pd-Catalyzed Cross Coupling in Total Synthesis: Nicolaou, K. C.; Bulger, P. G.; Sarlah, D. Angew. Chem. Int. Ed. 200544, 4442. doi:10.1002/anie.200500368

 

反応機構

・基本的な反応機構は他のパラジウムカップリングと大差ない。

通常トランスメタル化が律速段階。添加剤による加速効果はトランスメタル化過程の促進による。(参考:Angew. Chem. Int. Ed. 200443, 4704.)

・スズからのトランスメタル化速度はalkynyl > alkenyl > aryl > allyl benzyl > α-alkoxyalkyl > alkyl である。このため、有機トリブチルスズや有機トリメチルスズ上のブチル基・メチル基が反応に関与することは稀である。

x-ene-9.gif

反応例

近年のクロスカップリングの進歩はめざましく、低反応性のアリールクロライドも反応に用いることができるようになった。[1] x-ene-2.gif
LiClの添加効果。[2] x-ene-1.gif
Saudinの合成[3] stille_5.gif

実験手順

 

実験のコツ・テクニック

・スズ化合物残渣はカラムでテーリングして除去しにくく、精製に苦労することがある。KF水溶液を加えて一晩攪拌し、残渣をスズフルオライドに変換させると若干除去しやすくなる。

LiClの添加により反応が加速される。強いSn-Cl形成がトランスメタル化を促進させると言われている。

・過剰の配位子はトランスメタル化を阻害する。スカベンジャーとしてCuIを添加することで改善されることがある。この場合は有機銅がメディエータとして働く可能性も示唆されている。配位子として中程度の電子供与性配位子、例えばトリフェニルアルシン(Ph3As)を用いるとよい場合がある。

・ CsFなどのフッ素源も、反応を促進させる効果を持つ。有機スズと反応して難溶性のスズフルオライドを系外に放出するためといわれている。

 

参考文献

[1] Littke, A. F.; Fu, G. C.Angew. Chem. Int. Ed. 199938, 2411. [abstract]

[2] Piers, E. et al. Tetrahedron 1991, 47, 4555. doi:10.1016/S0040-4020(01)86462-0

[3] Winkler, J. D.; Doherty, E. M. J. Am. Chem. Soc. 1999121, 7425. DOI: 10.1021/ja9916198

 

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