[スポンサーリンク]

ケムステニュース

112番元素にコペルニクスに因んだ名前を提案

[スポンサーリンク]

element112_2.gif

 112番元素は、1996年に独・重イオン科学研究所の加速器で初めて合成された。しかし、新元素としての認定に必要な再実験と検証がじゅうぶんで
なかったため、暫定名「ウンウンビウム」がつけられていた。その後2007年に、理化学研究所の仁科加速器研究センターで原子番号30の亜鉛(Zn)原子
核を原子番号82の鉛(Pb)の原子核に衝突させる実験が実施され、合成された112番元素の観測に成功した。

このような経緯を経て、国際純正応用化学連合(IUPAC)は数週間ほど前に、112番元素を正式に新元素と認定したことを発表した。

この発表を受けて、112番元素の合成に成功した研究チームでは、元素名にポーランドの天文学者で地動説を唱えたコペルニクスに因んだ「Copernicium(コペルニシウム)」を提案した。(引用:アストロアーツ)

以前ケムステニュースでもお伝えしましたが、112番元素が正式に認定され、その命名候補がIUPACにこのほど提出されました。提案名は上の引用にもあるとおり、コペルニシウム(Copernicium)

 

間近に名前が付けられた元素と由来は以下の通りです。およそ、発見地の地名か歴史的科学者の名前にちなんで付けられるのが慣例のようです。

104 ラザフォージウム (Rf):物理学者アーネスト・ラザフォードにちなむ
105 ドゥブニウム (Db):ロシア合同原子核研究所のある地名ドゥブナにちなむ
106 シーボーギウム (Sg):物理学者グレン・シーボーグにちなむ
107 ボーリウム (Bh): 物理学者ニールス・ボーアにちなむ
108 ハッシウム (Hs):ドイツ重イオン研究所のある州地名(ラテン語名)ハッシアにちなむ
109 マイトネリウム (Mt):物理/化学者 リーゼ・マイトナーにちなむ
110 ダームスタチウム (Ds):ドイツ重イオン研究所のある市名ダルムシュタットにちなむ
111 レントゲニウム (Rg):物理学者ヴィルヘルム・レントゲンにちなむ

コペルニクスはご存じの通り、それまで宗教的定説であった天動説を否定し、科学的見地からの地動説を提唱した偉大な天文学者です。彼の名と業績にちなみ、ものの見方が180度変わってしまうような出来事を比喩して、コペルニクス的転回と呼んだりします。(現代ではパラダイム・シフトという用語が一般的に使われています)。

しかしなぜコペルニクスなのか、と言われるとイマイチその理由付けが不明な気もします。コペルニクスの出身はポーランドで、ドイツではありませんし、彼の主要業績も天文学であって物理・化学ではありませんし。

筆者の想像ですが、おそらくは原子モデルを太陽系に見たてて、そこからコペルニクスを導き出したって思考経路なのでしょう・・・いやこれは絶対そうに違いないと思えてきた。これこそまさにコペルニクス的転回!?(笑)

bohr_atomic_model.gif

略称がCpになるのか、はたまた別のものになるのか・・・これもまだわかりませんが、周期表に新たな仲間が追加される日はすぐそこのようです。正式な受理を待ちたいと思います。

  • 関連書籍
完全図解周期表―自然界のしくみを理解する第1歩 (ニュートンムック―サイエンステキストシリーズ)
ニュートンプレス
発売日:2006-12
おすすめ度:4.5
おすすめ度5 素晴らし過ぎる
おすすめ度2 さらなる改善を願う
おすすめ度5 現代社会において元素を理解する重要性はますます高くなっている
おすすめ度4 すごく分かりやすい
おすすめ度5 とにかくわかり易い
図解入門 よくわかる最新元素の基本と仕組み―全113元素を完全網羅、徹底解説 (How‐nual Visual Guide Book)
秀和システム
発売日:2007-02
おすすめ度:4.5
おすすめ度4 非常に良い内容だと思いますただし……
おすすめ度5 最近 手に入れました
元素周期 萌えて覚える化学の基本
PHP研究所
スタジオハードデラックス(編集)満田 深雪(監修)
発売日:2008-11-01
おすすめ度:4.0
おすすめ度3 大人には用がない本?中高生にはいいかも。
おすすめ度4 意外と参考になります
おすすめ度5 元素周期 萌えて覚える科学の基本はいいね!!
おすすめ度4 面白い仕立て
おすすめ度4 いろいろ載ってます
元素111の新知識 第2版 (ブルーバックス)
講談社
桜井 弘(編集)
発売日:2009-01-21
おすすめ度:4.5
おすすめ度5 ボ?・・と眺め、ホ?!!と驚く☆☆
おすすめ度4 生物・化学寄りの解説。他書と併せて読みましょう。
  • 関連リンク

Element 112 shall be named “copernicium”

Visual Element Periodic Table

一家に一枚周期表 (文部科学省)

超重元素研究室112番元素の同位体2原子を合成──GSI(ドイツ)の初合成の追試に成功 (理研ニュース)

日本発・113番元素登場 (1) (2) (有機化学美術館)

 

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 化学コミュニケーション賞2022が発表
  2. セントラル硝子、工程ノウハウも発明報奨制度対象に
  3. 2017年10大化学ニュース
  4. ESI-MSの開発者、John B. Fenn氏 逝去
  5. 田辺三菱 国内5番目のDPP-4阻害薬承認見通し
  6. 可視光全域を利用できるレドックス光増感剤
  7. 超微細な「ナノ粒子」、健康や毒性の調査に着手…文科省…
  8. 使い方次第で猛毒、薬に

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 投票!2013年ノーベル化学賞は誰の手に??
  2. 秋の褒章2009 -化学-
  3. 関大グループ、カプロラクタムの新製法開発
  4. Arborisidineの初の全合成
  5. 光と熱で固体と液体を行き来する金属錯体
  6. 米国版・歯痛の応急薬
  7. 研究者/研究力
  8. 荷電π電子系が発現するジラジカル性をイオンペア形成によって制御
  9. ノーベル賞化学者と語り合おう!「リンダウ・ノーベル賞受賞者会議」募集開始
  10. 2010年人気記事ランキング

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年7月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

注目情報

最新記事

第8回 学生のためのセミナー(企業の若手研究者との交流会)

有機合成化学協会が学生会員の皆さんに贈る,交流の場有機化学を武器に活躍する,本当の若手研究者を知ろう…

UBEの新TVCM『ストーリーを変える、ケミストリー』篇、放映開始

UBE株式会社は、2023年9月1日より、新TVCM『ストーリーを変える、ケミストリー』篇を関東エリ…

有機合成化学協会誌2023年9月号:大村天然物・ストロファステロール・免疫調節性分子・ニッケル触媒・カチオン性芳香族化合物

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2023年9月号がオンライン公開されています。…

ペプチドの精密な「立体ジッパー」構造の人工合成に成功

第563回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院 工学系研究科応用化学専攻 藤田研究室の恒川 英…

SNS予想で盛り上がれ!2023年ノーベル化学賞は誰の手に?

さてことしもいよいよ、ノーベル賞シーズンが到来します!化学賞は日本時間 10月4日(水) 18時45…

ケムステ版・ノーベル化学賞候補者リスト【2023年版】

各媒体からかき集めた情報を元に、「未来にノーベル化学賞の受賞確率がある、存命化学者」をリストアップし…

DMFを選択的に検出するセンサー:アミド分子と二次元半導体の特異な相互作用による検出原理を発見

第562回のスポットライトリサーチは、大阪府立大学(現:大阪公立大学)大学院 工学研究科 電子・数物…

イグノーベル賞2023が発表:祝化学賞復活&日本人受賞

今年もノーベル賞とイグノーベル賞の季節がやってきました。今年もケムステではどちらについても全速力で記…

ポンコツ博士の海外奮闘録XXII ~博士,海外学会を視察する~

ポンコツシリーズ国内編:1話・2話・3話国内外伝:1話・2話・留学TiPs海外編:1話・…

マテリアルズ・インフォマティクスの導入・活用・推進におけるよくある失敗とその対策とは?

開催日:2023/09/20 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足の影…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP