[スポンサーリンク]

I

アイルランド・クライゼン転位 Ireland-Claisen Rearrangement

[スポンサーリンク]

カルボン酸誘導体→カルボン酸

 

概要

アリルエステルをケテンシリルアセタールとした後、Claisen転位を行い、γ,δ-不飽和カルボン酸へと導く反応。

ケテンシリルアセタールのE/Z幾何異性が自在に制御でき、比較的低温で反応が進行するために、転位体の立体構造を高度に制御できる。

アリルエステルエノラートを経由するClaisen転位反応の類似系として、亜鉛エノラート(Reformatsky-Claisen転位)、アセト酢酸エノラート(Carroll転位)を用いる方法が知られている。

ケテンシリルアセタール調整時には強塩基性条件が必要とされる。酸性条件で転位を行いたい場合にはJohnson-Claisen転位、中性条件ではEschenmoser-Claisen転位という風に、基質により使い分けることができる。

基本文献

 

反応機構

LDAで脱プロトン化を行う際に、HMPA非共存下ではZ-体、共存下ではE-体のエノラートが生じるため、ケテンシリルアセタールの幾何異性を高度に制御することができる。(参考:有機化学反応と溶媒)

ケテンシリルアセタール形成後はClaisen転位と同じ[3,3]シグマトロピー機構で進行する。Claisen転位の系列反応は、いす型6員環遷移状態を経るため、一般に高い立体特異性が発現する。

Claisen3.gif

反応例

Claisen転位は、容易に調整できるキラルなアリルアルコールを足がかりとして不斉四級炭素中心を得ることができる強力な手法であり、複雑な立体構造を有する化合物の合成に頻用される。以下の例ではCBS還元と組み合わせることで、Aspidophtineの不斉四級炭素を高効率的に合成している。[1]

ene-ac3.gifIreland-Claisen法ではエノラートの幾何異性を高度に制御できるため、Vicinal位に存在する2つの不斉四級炭素中心をも合成できる。以下はその適用例の一つである。[2]

ireland_claisen_4.gif

実験手順

 

実験のコツ

 

参考文献

[1] Corey, E. J. et al. J. Am. Chem. Soc. 1999121, 6771. DOI: 10.1021/ja9915201

[2] Gilbert, J. C. et al. J. Org. Chem. 199358, 6255. DOI: 10.1021/jo00075a020

 

関連反応

 

関連書籍

[amazonjs asin=”4759808752″ locale=”JP” title=”ペリ環状反応―第三の有機反応機構”][amazonjs asin=”3527308253″ locale=”JP” title=”The Claisen Rearrangement: Methods and Applications”]

 

外部リンク

関連記事

  1. 金属水素化物による還元 Reduction with Metal…
  2. ウォルフ・キシュナー還元 Wolff-Kishner Reduc…
  3. ボーチ還元的アミノ化反応 Borch Reductive Ami…
  4. ジョンソン オレフィン合成 Johnson Olefinatio…
  5. ファヴォルスキー転位 Favorskii Rearrangeme…
  6. バイヤー・ビリガー酸化 Baeyer-Villiger Oxid…
  7. クラウソン=カース ピロール合成 Clauson-Kaas Py…
  8. エノラートのα-アルキル化反応 α-Alkylation of …

注目情報

ピックアップ記事

  1. 第四回 分子エレクトロニクスへの展開 – AP de Silva教授
  2. 2010年化学10大ニュース【Part2】
  3. 東大、京大入試の化学を調べてみた(有機編)
  4. 2023年度 第23回グリーン・サステイナブル ケミストリー賞 候補業績 募集のご案内
  5. 第87回―「NMRで有機化合物の振る舞いを研究する」Daniel O’Leary教授
  6. フリー素材の化学イラストを使ってみよう!
  7. 第148回―「フッ素に関わる遷移金属錯体の研究」Graham Saunders准教授
  8. 鉄触媒によるオレフィンメタセシス
  9. 超分子カプセル内包型発光性金属錯体の創製
  10. 危険物データベース:第6類(酸化性液体)

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年7月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

注目情報

最新記事

アクリルアミド類のanti-Michael型付加反応の開発ーPd触媒による反応中間体の安定性が鍵―

第622回のスポットライトリサーチは、東京理科大学大学院理学研究科(松田研究室)修士2年の茂呂 諒太…

エントロピーを表す記号はなぜSなのか

Tshozoです。エントロピーの後日談が8年経っても一向に進んでないのは私が熱力学に向いてないことの…

AI解析プラットフォーム Multi-Sigmaとは?

Multi-Sigmaは少ないデータからAIによる予測、要因分析、最適化まで解析可能なプラットフォー…

【11/20~22】第41回メディシナルケミストリーシンポジウム@京都

概要メディシナルケミストリーシンポジウムは、日本の創薬力の向上或いは関連研究分野…

有機電解合成のはなし ~アンモニア常温常圧合成のキー技術~

(出典:燃料アンモニアサプライチェーンの構築 | NEDO グリーンイノベーション基金)Ts…

光触媒でエステルを多電子還元する

第621回のスポットライトリサーチは、分子科学研究所 生命・錯体分子科学研究領域(魚住グループ)にて…

ケムステSlackが開設5周年を迎えました!

日本初の化学専用オープンコミュニティとして発足した「ケムステSlack」が、めで…

人事・DX推進のご担当者の方へ〜研究開発でDXを進めるには

開催日:2024/07/24 申込みはこちら■開催概要新たな技術が生まれ続けるVUCAな…

酵素を照らす新たな光!アミノ酸の酸化的クロスカップリング

酵素と可視光レドックス触媒を協働させる、アミノ酸の酸化的クロスカップリング反応が開発された。多様な非…

二元貴金属酸化物触媒によるC–H活性化: 分子状酸素を酸化剤とするアレーンとカルボン酸の酸化的カップリング

第620回のスポットライトリサーチは、横浜国立大学大学院工学研究院(本倉研究室)の長谷川 慎吾 助教…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP