[スポンサーリンク]

ケムステニュース

2010年化学10大ニュース【Part2】

[スポンサーリンク]

 

さて前半戦に引き続き、2010年化学ニュースは残り5つ!2010年もあと数時間で終わりを告げてしまうのでさっさと行きたいと思います。

5年に一回。常夏の学会

2010top10_6.png

当サイトブログ、化学者のつぶやきでもスタッフが記事にしているように【関連記事:PACIFICHEM2010に参加してきました! 】今年はオリンピックよりも開催間隔の長い⑤年に1会の常夏の学会、ハワイワイキキでの環太平洋国際科学会議が12月に行われました。

個人的には2回発表があったのと仕事がたまっていたので、ほとんどホテルで仕事をしているか、会場で講演を聞いていました。休日はスキューバーダイビング2ダイブと帰国前日の土砂降りの雨の中でのオアフ島一周ドライブしか楽しめませんでしたが、なかなか会えない人に会えるいい機会であったと思います。ポスドク時代の共同研究者と会えたのと、有機化学者の集まる謎の焼肉屋(元プロ野球選手の清原もいました。)で先生方とお話できたのがよかったかなと思います。ブログの方で体験記が続くようなのでぜひご覧になってください。

 

iPadと元素

2010top10_7.png
2010年5月に発売されたiPadはモバイル端末や書籍のあり方を変える一助になりました。そのiPadに当初から注目アプリとして搭載可能であった元素図鑑はビジュアルで訴える化学ということで大ヒットとなりました。後に日本語化、さらにスピンオフして書籍化され、高価であったもののこちらも大ヒット。元素というものは化学者だけでなく一般の方々も魅了する化学、科学のコミュニケーションツールであることが再認識されました。昨年112番目の元素が決定され、今年の初めに正式に「コペルニシウムCn」として周期表に掲載されました。113番目の元素ももうすぐでしょうか。こちらは日本が発見した元素であるので「大きな」話題を呼びそうですね。

 

中国とレアメタル危機

2010top10_8.png
上記の元素と関連がありますが、中国のレアメタル、レアアース(希土類)輸出規制に伴って、科学界でもこれらを代替する金属もしくはそれを凌駕する機能を有する材料の開発が求められています。これまでも元素戦略と名付けられた多種類の元素を活用する国家的なプロジェクトが走っていましたが、今年からまたいくつかのプロジェクトが立ち上げられ、さらに加速された感があります。日本の代表するエレクトロニクス製品全般に関わってくるためこれらの開発が科学者にとっても腕のみせどころといったところです。歴史的に、このように何かを窮乏した状況に新しい科学・技術は生まれる傾向がありますので、今後の科学者の努力に期待したいと思います。
 

未来に語り継がれる化学者たち

2010top10_9.png
今年も多くの化学者たちがこの世を去りました。お亡くなりになられたのは非常に残念なことですが、今後も彼らの残した化学は不滅であり語り継がれていくでしょう。個人的になってしまいますが、徳島文理大学の西沢麦夫先生がお亡くなりになったのは大変ショックな出来事でした。ケムステでも追悼企画、そして最近有機合成化学協会誌12月号にて大船泰史先生が同先生を偲んでエッセイを書いています。また、今年は化学史の編集に力を入れていた芝哲夫先生やノーベル化学賞受賞者のジョン・フェン教授もお亡くなりになられています。各先生方のご冥福をお祈りいたします。

2010年訃報ー化学者

2月9日 萩原久人(大阪府立大学名誉教授)
4月10日 山崎一雄(名古屋大学名誉教授)
4月25日 中垣正幸(京都大学名誉教授)
5月1日 西沢麦夫(徳島文理大学教授)
8月6日 塩川二朗(大阪大学名誉教授)
9月3日 西島安則(京都大学元総長・名誉教授)
9月9日 栗栖安彦(上智大名誉教授)
10月28日 芝哲夫 (大阪大学名誉教授)
12月10日 ジョン・フェン(2002年ノーベル化学賞受賞者)

 

2010年「キーワード」「分子」

2010top10_10.png

2010年の化学界の注目キーワードはどうだったでしょうか。筆者が有機化学者のため有機化学ばかりになりますが、以下のキーワードが今年の1つの化学界の潮流であったように思われます。昨年とかぶっているものもありますが、研究は1年で終わるものではないのでご容赦ください。来年はどのような新キーワードがくるか楽しみです。

「フッ素化反応」「C-H官能基化」「MOF」「NHC」「太陽電池」「有機EL(OEL)」

また、2010年分子も昨年に続いてあげてみました。今年は昨年のように10大分子騒ぎがなかったため、思いつくままに記載してみました。

パラウアミン:昨年12月29日に報告された前人未到化合物全合成。来年発売されるClassics Total SynthesisIIIの中でもラストを飾る合成化学のマイルストーン化合物
両末端デンドロン化高分子(アクアマテリアル):東大相田卓三先生によって合成された面白い材料のリードとなる分子。各方面で話題となりました。
ジリチオプルンボール:鉛の入った5員環化合物。発想は単純だがつくるのは難しい。
マンザミンA:これまでもいくつが全合成が報告されてきましたが、東大福山透先生の芸術的な合成。
ビフェニル(ビアリール化合物):今年のノーベル化学賞の技術のアウトプット先の中核となる化合物。これが簡単に作れるようになって、製薬、化学会社は新製品を数多く生み出した。
エリブリン:昨年から今年にかけて天然物化学、合成化学、創薬化学界の話題をさらった新規医薬品。
グラフェン:今年のノーベル物理学賞受賞化合物。カーボンナノチューブが受賞なるかと期待されたが、こちらも応用が期待できる一品。
フラーレン:実は今年で発見25周年。Googleのロゴが一瞬フラーレンに変わりました。
ビタミンB1:発見100周年。日本発の化合物ですね。オルニチン(ビタミンB1)配合で「1杯で70個分

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. リサイクルが容易な新しいプラスチックを研究者が開発
  2. 被ばく少ない造影剤開発 PETがん診断に応用へ
  3. タンニンでさび防ぐ効果 八王子の会社
  4. 高知市で「化学界の権威」を紹介する展示が開催中
  5. 田辺三菱 国内5番目のDPP-4阻害薬承認見通し
  6. 理系が文系よりおしゃれ?
  7. 黒よりも黒い? 「最も暗い」物質 米大学チーム作製
  8. ノーベル賞・田中さん愛大で講義

注目情報

ピックアップ記事

  1. 特許取得のための手続き
  2. 不安定な高分子原料を従来に比べて 50 倍安定化することに成功! ~水中での化学反応・材料合成に利用可能、有機溶媒の大幅削減による脱炭素に貢献~
  3. 第48回―「周期表の歴史と哲学」Eric Scerri博士
  4. Googleの面接で話した自分の研究内容が勝手に特許出願された
  5. 第138回―「不斉反応の速度論研究からホモキラリティの起源に挑む」Donna Blackmond教授
  6. 東大、京大入試の化学を調べてみた(有機編)
  7. 第99回日本化学会年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part II
  8. 第38回ケムステVシンポ「多様なキャリアに目を向ける:化学分野のAltac」を開催します!
  9. 色素・樹脂材料処方設計におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用とは?
  10. 172番元素までの周期表が提案される

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2010年12月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

注目情報

最新記事

7th Compound Challengeが開催されます!【エントリー〆切:2026年03月02日】 集え、”腕に覚えあり”の合成化学者!!

メルク株式会社より全世界の合成化学者と競い合うイベント、7th Compound Challenge…

乙卯研究所【急募】 有機合成化学分野(研究テーマは自由)の研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

大森 建 Ken OHMORI

大森 建(おおもり けん, 1969年 02月 12日–)は、日本の有機合成化学者。東京科学大学(I…

西川俊夫 Toshio NISHIKAWA

西川俊夫(にしかわ としお、1962年6月1日-)は、日本の有機化学者である。名古屋大学大学院生命農…

市川聡 Satoshi ICHIKAWA

市川 聡(Satoshi Ichikawa, 1971年9月28日-)は、日本の有機化学者・創薬化学…

非侵襲で使えるpH計で水溶液中のpHを測ってみた!

今回は、知っているようで知らない、なんとなく分かっているようで実は測定が難しい pH計(pHセンサー…

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

圧力に依存して還元反応が進行!~シクロファン構造を活用した新機能~

第686回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機化学第一研究室(鈴木孝…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP