[スポンサーリンク]

一般的な話題

無機材料ーChemical Times 特集より

[スポンサーリンク]

関東化学が発行する化学情報誌「ケミカルタイムズ」。年4回発行のこの無料雑誌の紹介をしています。

早いもので、今回のNo.4は今年の最終号ですね。無機材料というタイトルが付いてますが、めちゃくちゃ幅広いですね苦笑

キーワードをみてみると、いつかの元素を用いた無機固体材料(デバイス)、クラスター化学がメインのようです。今回は3つの記事が公開されており、毎回すべて無料で閲覧可能です。

それでは1つずつ簡単に紹介しましょう。(記事はそれぞれのタイトルをクリックしていただければ全文無料で閲覧可能です。PDFファイル

樹状高分子鋳型を利用した原子クラスターの 精密合成と機能開拓

東工大の山元公寿教授等による寄稿です。

ナノスケールをさらに小さくしたサブナノスケール(約1nm)の無機材料について述べています。小さくしても機能は同じ、といいたいところですが、実は小さくすると機能がまるで代わる材料が多いんですね。ナノ無機材料はたくさんあるけれども、サブナの無機材料(クラスター)はほとんどまだ研究がされていない手つかずの楽園。それゆえに、開拓は難しいところだと思いますが、独自のアプローチによりこの難関テーマに挑戦しています。

それが、筆者らが開発した「アトムハイブリッド法」。特殊な樹状高分子(デンドリマー)を鋳型としてクラスターを精密合成する試みです。本記事では、このアトムハイブリッド法によるクラスターの合成方法と、実際に合成したクラスター物質の物性解明や機能開拓の検討について紹介しています。

アトムハイブリッド法の概略図(出典:ケミカルタイムズ)

 

かなり直感的にも読みやすい内容だと思うので、ぜひ一読をおすすめします。

高付加価値デバイスの実現を担う常温接合技術

産総研の日暮栄治デバイス技術研究部研究グループ長による寄稿。

「半導体回路の集積密度は1年半~2年で2倍となる」

有名なMooreの法則ですが、それにノット形で半導体デバイスの微細化(More Moore)が進んできました。最近では、デバイスの多機能化、異機能融合の方向に進化する新たな開発軸(More than Moore)を追求するようになってきているそうです。つまり、小さくしながら異種材料・異種機能を付加する、ヘテロジニアス集積が現在の半導体産業成長の鍵となっていると述べています。

そのヘテロジニアス集積の重要技術に、常温・低温接合技術があります。デバイスをつなげる際に問題となる、熱損傷や、実装時の熱応力を低減するために、常温・低温で接合する技術の開発が必要というわけです。

本記事では、その接合技術に関して詳しく述べています。以下の図はその一例で、表面活性化接合というもの。物質の表面を覆っている酸化膜や有機物などの不活性な層を真空中で中世原資ビームなどの照射により除去、表面エネルギーの高い活性な清浄表面をそのまま真空中で蒸着させることで、原子間の凝着力を利用して、低温で接合する手法です。

表面活性化接合の模式図(出典;ケミカルタイムズ)

 

なかなかなれない内容でしたが、なんとか読むことができました。

GaNの光電気化学エッチング

最後の記事は、株式会社サイオクスによる寄稿。聞いたことなかったですが、この会社住友化学グループなんですね。日立無線として茨城の日立市でガリウム砒素の結晶成長の研究をしたとこからはじまっているらしいですが、2015年から住友化学グループの一員になったそうです。

 本記事では、同社が主力として扱っている窒化ガリウム(GaN)について、具体的には、GaNのエッチング技術について詳しく述べています。

エッチングとはエッチング液などの薬品による腐食作用を利用して金属を溶解加工する技術のこと。

記事では、最近注目されている光電気化学(PEC)によるエッチングについて紹介しています。

PECエッチングした窒化カリウム(出典:ケミカルタイムズ)

過去のケミカルタイムズ解説記事

外部リンク

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 分子間相互作用によりお椀反転の遷移状態を安定化する
  2. 細胞を模倣したコンピューター制御可能なリアクター
  3. 第5回鈴木章賞授賞式&第9回ICReDD国際シンポジウム開催のお…
  4. で、その研究はなんの役に立つの?
  5. 研究生活の心構えー修士課程、博士課程に進学したあなたへー
  6. 【7/28開催】第3回TCIオンラインセミナー 「動物透明化試薬…
  7. 第二回ケムステVシンポ「光化学へようこそ!」開催報告
  8. 【5月開催】 【第二期 マツモトファインケミカル技術セミナー開催…

注目情報

ピックアップ記事

  1. CYP総合データベース: SuperCYP
  2. 本多 健一 Kenichi Honda
  3. パーコウ反応 Perkow Reaction
  4. 有機ホウ素化合物を用いたSNi型立体特異的β-ラムノシル化反応の開発
  5. マイヤー・シュスター転位/ループ転位 Meyer-Schuster/Rupe Rearrangement
  6. 書店で気づいたこと ~電気化学の棚の衰退?~
  7. 塩野義 抗インフルエンザ薬製造・販売の承認を取得
  8. 有機電解合成のはなし ~アンモニア常温常圧合成のキー技術~
  9. ロバート・バーンズ・ウッドワード Robert Burns Woodward
  10. (-)-Cyanthiwigin Fの全合成

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2021年11月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

注目情報

最新記事

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

圧力に依存して還元反応が進行!~シクロファン構造を活用した新機能~

第686回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機化学第一研究室(鈴木孝…

第58回Vシンポ「天然物フィロソフィ2」を開催します!

第58回ケムステVシンポジウムの開催告知をさせて頂きます!今回のVシンポは、コロナ蔓延の年202…

第76回「目指すは生涯現役!ロマンを追い求めて」櫛田 創 助教

第76回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第75回「デジタル技術は化学研究を革新できるのか?」熊田佳菜子 主任研究員

第75回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第74回「理想的な医薬品原薬の製造法を目指して」細谷 昌弘 サブグループ長

第74回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第57回ケムステVシンポ「祝ノーベル化学賞!金属有機構造体–MOF」を開催します!

第57回ケムステVシンポは、北川 進 先生らの2025年ノーベル化学賞受賞を記念して…

櫛田 創 Soh Kushida

櫛田 創(くしだそう)は日本の化学者である。筑波大学 数理物質系 物質工学域・助教。専門は物理化学、…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP