[スポンサーリンク]

ケムステニュース

発展が続く新型コロナウィルス対応

[スポンサーリンク]

感染拡大が止まらない新型コロナウィルスですが、検査キットや治療薬などの開発や増産は化学業界の努力によって日々更新されています。最新の各社の動きをまとめてみました。

検査キット開発

日本はPCR検査数の少なさで世界を非難を浴びていますが、その状態を改善すべくPCR検査の前処理を少なくするキットが次々と発売を開始しています。

島津製作所は、「新型コロナウイルス検出試薬キット」を4月20日に発売しました。このキットではRNAの抽出・精製工程が省けるため、2時間以上かかっていたPCR検査の時間を1時間に短縮することができ、精度も従来のPCR検査との比較実験により確認されています。月間生産量は10万検体分で、国内から販売を開始するそうですが、PCR検査を支援するため、全国の都道府県および政令指定都市などの地方衛生研究所に100検体分を無償で提供することが発表しました。

新型コロナウイルス検出試薬キット(出典:島津製作所

遺伝子工学研究用試薬や診断薬の製造販売を手がけるニッポンジーンも、前処理の簡略化、高抽出効率化できるキット「NIPPONGENE ISOSPIN RNA Virus ~For coronavirus RNA extraction~」の販売を4月15日から開始しました。こちらも10万テスト分を国内の医療現場ならびに検査機関に無償提供することを発表しています。富士フイルム和光純薬では、RNAの逆転写とリアルタイムPCRを効率化し、合計約90分間反応時間を短縮できる検査キット「SARS-CoV-2RT-qPCR Detection kit」の販売を4月15日から初めています国内のPCR検査数は、曜日による変動はあるもののここ2週間は変化していないのが現状のようです。検査数が上がらない要因は、検査時間だけでなく複数のボトルネックがあるからのようですが、上記のようなキットを使えば工程が簡略化でき、作業者の負担を低減でき、検体の取違なども防げるため、積極的に採用してほしいと思います。

栄研化学では、独自の遺伝子増幅技術であるLAMP法の特徴を活かし35分で新型コロナウイルスが検出できる「Loopamp新型コロナウイルス 2019(SARS-CoV-2)検出試薬キット」を3月31日から販売開始しました。こちらは、リアルタイム濁度測定装置「LoopampEXIA」が必要ですが、すでに国内の医療関連施設に約500台設置されているとのことで、積極的な活用が期待されます。

LoopampEXIA(出典:栄研化学

ニュースでも頻繁に取り上げるようになった抗体検査ですが、多くの抗体検査キットはイムノクロマト法を使って血液中のウィルス抗体を検出する仕組みが使われています。免疫グロブリンMと免疫グロブリンGの有無を検出し、Mが検出されれば感染初期でGが検出されれば回復していると判断できます。

クラボウでは、中国で開発された「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)抗体検査試薬キット」の販売を3月16日から開始しました。医薬品開発支援を行うシミックグループのシミックヘルスケア・インスティテュートでは、ALFA SCIENTIFIC DESIGNS社が開発した「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2) IgG/IgM Antibody Test」の販売を5月7日より開始します。ヤマト科学では、韓国のGenBody Inc.が開発した「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)抗体迅速検出キット」の販売を4月13日から開始しました。極東製薬工業は、カナダのArtron Laboratories Inc. が開発した「新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)抗体(Artron)」の販売を4月22日から開始しています。医学生物学研究所では、中国のShenzhen YHLO Biotech Co., Ltdが開発した化学発光免疫測定法(CLIA)を測定原理とした試薬と検出機器の販売を4月20日から開始しています。

CLIAの検出原理(出典:厚生労働省

抗体検査についてはPCRと同等の正確性が出せるかが焦点となっていて、⽇本感染症学会では、海外製のキット4商品を使った比較実験を行いました。PCRで陽性と検出感度未満=陰性と判定されたそれぞれ5検体を使って各社のキットをテストし結果の違いを確認しました。結果、陰性はどのキットでも100%的中しましたが、陽性を100%的中されたキットはなく、どの検体でも陽性とならなかったキットもありました。そのため抗体検査による陽性の判定は正しくても、陰性の判定は不確定で、PCR検査前のスクリーニング検査として使用が限定されると考えられます。日本で抗体検査キットの開発を行っている各社には、陽性的中率が高い製品を完成させてほしいと思います。

キットの性能評価(上段がPCRで陽性だった検体の判定で下段が検出感度未満だった検体の判定)

アビガン製造支援

感染初期のアビガン服用により症状が改善することが報告されていて投与が急速に広まっています。そのため、各社の増産体制の準備が進んでいます。

宇部興産では、アビガンの原薬主骨格を成す中間体の製造及び供給を開始しました。デンカは、アビガンの原料となるマロン酸ジエチルの生産を5月より開始する予定です。2017年4月にマロン酸ジエチルの生産を中止しましたが、コロナウィルス拡大を受けて設備を再稼働させ生産を行うそうです。アクティブファーマカネカでは2020 年7月よりアビガンの原薬製造を開始することを富士フイルム株式会社と同意しました。これらの各社の取り組みにより富士フイルム富山化学による生産量は7月には約10万人分/月、同9月には約30万人分/月となると発表しています。感染が拡大が止まらなくなった今、治療薬が必要であることは確かなことであり、すべての感染者に投与できるような供給体制が日本国内で構築できるよう各社の協力体制が必要になっています。

このコロナウィルスが、インフルエンザなどと同様に感染したかどうか素早く判断でき感染したとしても薬によって治療できるようになることを、化学技術の寄与によって実現することが求められています。

関連書籍

[amazonjs asin=”4758101876″ locale=”JP” title=”原理からよくわかるリアルタイムPCR完全実験ガイド (実験医学別冊 最強のステップUPシリーズ)”] [amazonjs asin=”4827210608″ locale=”JP” title=”富士フイルムの『変える力』”]

コロナウィルスに関連するケムステ過去記事

    Avatar photo

    Zeolinite

    投稿者の記事一覧

    ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

    関連記事

    1. メリフィールド氏死去 ノーベル化学賞受賞者
    2. 旭化成の今期、営業利益15%増の1250億円に
    3. 第一製薬、仏サノフィに脳梗塞予防薬の営業権を返還
    4. 2011年ロレアル・ユネスコ女性科学者 日本奨励賞発表
    5. 炭素ボールに穴、水素入れ閉じ込め 「分子手術」成功
    6. 核酸・ペプチド医薬品CDMO市場について調査結果を発表
    7. 高脂血症治療薬の開発に着手 三和化学研究所
    8. 千葉大など「シナモンマスク」を商品化 インフル予防効果に期待

    注目情報

    ピックアップ記事

    1. 膨潤が引き起こす架橋高分子のメカノクロミズム
    2. アムロジンのデータ資料返還でファイザーが住友化学に仮処分命令申立
    3. コルベ電解反応 Kolbe Electrolysis
    4. ケミカルバイオロジーとバイオケミストリー
    5. 100兆分の1秒を観察 夢の光・XFEL施設公開
    6. ダイヤモンドは砕けない
    7. 「架橋ナノゲル」を応用したがんワクチンDDS
    8. 日本化学会 第100春季年会 市民公開講座 夢をかなえる科学
    9. 解毒薬のはなし その2 化学兵器系-2
    10. スキンケア・化粧品に含まれる有害物質を巡る騒動

    関連商品

    ケムステYoutube

    ケムステSlack

    月別アーカイブ

    2020年5月
     123
    45678910
    11121314151617
    18192021222324
    25262728293031

    注目情報

    最新記事

    タリンにいってきました BOS2026 前編

    みなさんこんにちは。ケムステ代表です。久々にまともに記事を書きます。さて、表題の通り、6月後…

    第6回鈴木章賞授賞式&第10回ICReDD国際シンポジウム開催のお知らせ

    計算科学、情報科学、実験科学の3分野融合による新たな化学反応開発に興味のある方はぜひご参加ください!…

    条件の「前後」も実験条件である【プロセス化学者のつぶやき】

    前回まで1. 設定温度と系内の実温度のお話2. 温度値をどう判断するか3. 反応操作をし…

    そのpH、“本当にその場所”の値ですか?ニードル式pHセンサーを使ってみた!

    突然ですが、「培養の再現性がなんか悪い」「同じ条件のはずなのに結果がズレる」といった経験はあ…

    「骨格編集」×「ナノカーボン合成」〜ナノカーボン合成の新戦略を実証〜

    第719回のスポットライトリサーチは、名古屋大学大学院工学研究科(忍久保研究室)博士後期課程2年の平…

    【書評】立体化学 はじめの一歩

    立体化学は,分子の三次元構造を理解するための重要な分野であり,有機化学や…

    水のシミュレーション入門 — 水分子を計算機の中でどう”描く”か —

    身近なのに、計算機にとって手強い"水"。本記事では、点電荷モデルから機械学習まで、その"描き方"の進…

    ◆◇◆◇ 第36回フォーラム・イン・ドージン開催のご案内 ◆◇◆◇

    同仁化学研究所が熊本から世界へ情報発信するフォーラム・イン・ドージンの開催ご案内です。今年は『な…

    『力』による円偏光発光のon/off制御を単一分子レベルで実現

    第718回のスポットライトリサーチは、東京科学大学 物質理工学院(相良研究室)博士後期課程2年の野中…

    数日かかっていた反応機構解析を、わずか数分に!

    機械学習ポテンシャルが変える計算化学の現在近年、DFT計算による反応機構解析は広く行われるよ…

    実験器具・用品を試してみたシリーズ

    スポットライトリサーチムービー

    PAGE TOP