[スポンサーリンク]

A

アッペル反応 Appel Reaction

[スポンサーリンク]

アルコール→ハロゲン化合物

概要

第1・2級アルコールをハロゲン化物に変換することができる。中性条件下進行するため、酸や塩基に不安定なアルコールのハロゲン化に有用。

基本文献

・Downie, I.; Holmes, J.; Lee, J. Chem Ind. 1966, 22, 900.
・Calzada, J. G.; Hooz, J. Org. Synth. 1974, 54, 63. [PDF]
・Appel, R. Angew. Chem. Int. Ed. 1975, 14, 801. doi:10.1002/anie.197508011
・van Kalkeren, H. A.; van Delft, F. L.; Rutjes, F. P. J. T. Pure Appl. Chem. 2013, 85, 817. doi:10.1351/PAC-CON-12-06-13

反応機構

ホスフィンの酸素親和性の高さを利用した反応である。

ol-x-25.gif

開発の歴史

1960年代にドイツの無機化学者Rolf Appelが精力的に研究を行い、本反応を発見した。アルコールを1段階でハロゲン化アルキルへ変換できる有効な手法の開発によりApplelはリービッヒメダルを受賞している。

Rolf Appel

Rolf Appel

反応例

  • 立体化学は反転する。[1]

ol-x-26.gif

  • ヘキサクロロアセトン[2a]やヘキサブロモアセトン[2b]を用いる高活性な条件では、極低温でもAppel反応が進行する。アダマンタノールのような一部の三級アルコールにも用いることができる。

Appel反応を用いるホスフィンの不斉酸化[3]

Appel_4.gif

  • 近年では除去の難しいリン化合物を触媒量に減ずる研究も発展している。[4] Appel_6.gif

実験手順

ゲラニルクロライドの合成[5]

Appel_5.gif

実験のコツ・テクニック

※CBr4を用いるブロモ化は0℃~室温で進行するが、CCl4を用いるクロロ化は加熱還流条件が必要。
※ ホスフィンオキシドの除去がしばしば面倒となる。代替法としてメシル化→ハライド置換(Finkelstein反応)の二段階法がある。

 

参考文献

  1. Suzuki T. et al. Tetrahedron Lett. 2001, 42, 65. doi:10.1016/S0040-4039(00)01880-3
  2. (a) Magid, M. R.; Fruchey, S.; Johnson, W. L.; Allen, T. G. J. Org. Chem. 1979, 44, 359. DOI: 10.1021/jo01317a011 (b) Tongkatea, P.; Pluempanupata, W.; Chavasiri, W. Tetrahedron Lett. 2008, 49, 1146. doi:10.1016/j.tetlet.2007.12.061
  3. Bergin, E.; O’Connor, C. T.; Robinson, S. B.; McGarrigle, E. B.; O’Mahony, C. P.; Gilheany, D. G. J. Am. Chem. Soc. 2007, 129, 9566. DOI:10.1021/ja072925l
  4. (a) Denton, R.; An, J.; Adeniran, B.; Blake, A.; Lewis, W.; Poulton, A. J. Org. Chem. 2011, 76, 6749. doi:10.1021/jo201085r (b) van Kalkeren, H. A.; Leenders, S. H. A. M.; Hommersom, C. A.; Rutjes, F. P. J. T.; van Delft, F. L. Chem. Eur. J. 2011, 17, 11290. DOI: 10.1002/chem.201101563 
  5. Calzada, J. G.; Hooz, J. Org. Synth. 1974, 54, 63. [PDF]

関連反応

関連書籍

ウォ-レン有機化学 (上)

ウォ-レン有機化学 (上)

ジョナサン・クレイデン, ニック・グリ-ヴズ, ステュア-ト・ウォレン
¥7,150(as of 12/18 08:01)
Amazon product information
ウォ-レン有機化学 (下)

ウォ-レン有機化学 (下)

ジョナサン・クレイデン, ニック・グリ-ヴズ, ステュア-ト・ウォレン
¥6,930(as of 12/18 15:42)
Amazon product information

外部リンク

関連記事

  1. 福山クロスカップリング Fukuyama Cross Coupl…
  2. バートリ インドール合成 Bartoli Indole Synt…
  3. ダフ反応 Duff Reaction
  4. クラプコ脱炭酸 Krapcho Decarboxylation
  5. [2+2]光環化反応 [2+2] Photocyclizatio…
  6. グレーサー反応 Glaser Reaction
  7. FAMSO
  8. ジスルフィド架橋型タンパク質修飾法 Disulfide-Brid…

注目情報

ピックアップ記事

  1. A-Phosパラジウム錯体
  2. ちょっと変わったイオン液体
  3. 無保護カルボン酸のラジカル機構による触媒的酸化反応の開発
  4. 2016年8月の注目化学書籍
  5. カルボン酸、窒素をトスしてアミノ酸へ
  6. アジリジンが拓く短工程有機合成
  7. ワサビ辛み成分受容体を活性化する新規化合物
  8. Keith Fagnou Organic Chemistry Symposium
  9. 金属・ガラス・製紙・化学・土石製品業界の脱炭素化 〜合成、焼成、溶融、精錬、乾燥へのマイクロ波適用〜
  10. フラクタルな物質、見つかる

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年6月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

注目情報

最新記事

ブテンを原料に天然物のコードを紡ぐ ―新触媒が拓く医薬リード分子の迅速プログラム合成―

第 687回のスポットライトリサーチは、東京大学大学院 有機合成化学教室 (金井…

7th Compound Challengeが開催されます!【エントリー〆切:2026年03月02日】 集え、”腕に覚えあり”の合成化学者!!

メルク株式会社より全世界の合成化学者と競い合うイベント、7th Compound Challenge…

乙卯研究所【急募】 有機合成化学分野(研究テーマは自由)の研究員募集

乙卯研究所とは乙卯研究所は、1915年の設立以来、広く薬学の研究を行うことを主要事業とし、その研…

大森 建 Ken OHMORI

大森 建(おおもり けん, 1969年 02月 12日–)は、日本の有機合成化学者。東京科学大学(I…

西川俊夫 Toshio NISHIKAWA

西川俊夫(にしかわ としお、1962年6月1日-)は、日本の有機化学者である。名古屋大学大学院生命農…

市川聡 Satoshi ICHIKAWA

市川 聡(Satoshi Ichikawa, 1971年9月28日-)は、日本の有機化学者・創薬化学…

非侵襲で使えるpH計で水溶液中のpHを測ってみた!

今回は、知っているようで知らない、なんとなく分かっているようで実は測定が難しい pH計(pHセンサー…

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP