[スポンサーリンク]

M

光延反応 Mitsunobu Reaction

[スポンサーリンク]

概要

第二級アルコールにアゾジカルボン酸ジエチル(DEAD)、トリフェニルホスフィン(Ph3P)、安息香酸を反応させると、立体反転(SN2経路)を伴って、対応するベンゾイルオキシ誘導体が生成する。続くアルカリ加水分解により、対応するアルコールに変換できる。すなわち、アルコールの立体反転法として用いられる。

穏和な条件で反応が進行するため、天然物・複雑化合物合成に頻用されている。しかしながら、目的物以外にも副産物が多く生成する為、TLCの検出作業および精製が困難になるケースも多い。

基本文献

  • Mitsunobu, O.; Yamada, M.; Mukaiyama, T. Bull. Chem. Soc. Jpn. 1967, 40, 935. doi:10.1246/bcsj.40.935
  • Mitsunobu, O.; Yamada, M. Bull. Chem. Soc. Jpn. 196740, 2380. doi:10.1246/bcsj.40.2380
  • Review: Mitsunobu, O. Synthesis 1981, 1.
  • Review: Hughes, D. L. Org. React. 199242, 335.
  • Review: Dandapani, S.; Curran, D. P. Chem. Eur. J. 200410, 3130. DOI: 10.1002/chem.200400363
  • Review: Dembinski, R. Eur. J. Org. Chem. 2004, 2763. DOI: 10.1002/ejoc.200400003
  • But,T. Y. S.; Toy, P. H. Chem. Asian. J. 20072, 1340. doi:10.1002/asia.200700182
  • Swamy, K. C. K.; Kumar, N. N. B.; Balaraman, E.; Kumar, K. V. P. P. Chem. Rev. 2009, 109, 2551. doi:10.1021/cr800278z
  • Fletcher, S. Org. Chem. Front. 2015, 2, 739. DOI: 10.1039/C5QO00016E

開発の歴史

光延旺洋

 

光延旺洋(みつのぶおうよう)により、1967年開発された。現在までに4500以上の本反応に関する文献が報告されている。

反応機構

アゾジカルボン酸ホスフィン付加体の塩基性が弱いため、求核剤には酸性プロトン(pKa<13)が必要とされる。単純にアルコールの反転目的で使用したい場合には、安息香酸よりも酸性度の高いp-ニトロ安息香酸を用いると収率が良い場合が多い。(参考:Chirality 2000, 12, 346)
ol-ol-004.gif

反応例

カルボン酸以外の求核剤も用いることができ、さまざまな化合物へと変換される。 以下に例をまとめておく(「有機反応を俯瞰する ーリンの化学 その 2 (光延型置換反応)」も参照) 。
mitsunobu_3.gif
大環状化合物合成にも適用可能であり、価値が高い。
mitsunobu_9.gif
角田試薬を用いる光延反応[1]:pKaが13より大きい弱酸においても光延反応を進行させることが可能。
mitsunobu_5.gif
PhI(OAc)2を再酸化剤にすれば、DEADを触媒量に減ずることが可能。[2]
mitsunobu_4.gif
Movassaghiらによって開発されたIPNBSH試薬を用いると、アルコールの脱酸素化が行える(Movassaghi脱酸素化)。
movassaghi_deoxi_1.gif

実験手順

混み合った位置にあるアルコールの立体反転[3] mitsunobu_8.gif

温度計、攪拌子を備えた250mL三径フラスコに(-)-メントール(3.00g, 19.2mmol)、4-ニトロ安息香酸(12.9g, 77.2mmol)、トリフェニルホスフィン(20.1g, 76.6mmol)、テトラヒドロフラン(150mL)を加える。溶液を氷冷し、ジエチルアゾジカルボキシレード(12.1mL, 77mmol)を、内温が10℃を超えないように注意しながら滴下していく。滴下終了後、氷浴を取り除き室温で一晩(14時間)攪拌し、引き続き40℃3時間攪拌する。室温に放冷し、ジエチルエーテル(150mL)で希釈、有機層を飽和重曹水(2×100mL)で洗浄する。水層を合わせてジエチルエーテル(100mL)で逆抽出する。有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥する。溶媒と低沸点化合物をエバポレータ、真空ポンプ(0.2mmHg, 30℃, 3時間)で除去する。固体状物質をジエチルエーテル(40mL)に懸濁させ、一晩放置する。混合溶液を攪拌しながらヘキサン(20mL)をゆっくり加えると白色固体が生じるので、これを減圧ろ過し、50v/v%のジエチルエーテル/ヘキサンで洗浄する。ろ液をエバポレータで濃縮し、残渣の黄色油状物質をジクロロメタン(10mL)に溶解させ、8%ジエチルエーテル/ヘキサン(40mL)で希釈する。これをカラムクロマトグラフィ(展開系:8%ジエチルエーテル/ヘキサン)で精製することで目的物を白色結晶性固体として得る(5.03g, 収率85.6%)。

実験のコツ・テクニック

 

参考文献

  1. Tunoda, T. et al. Tetrahedron Lett. 199536, 2529.; ibid, 1996, 37, 2463. DOI: 10.1016/0040-4039(96)00318-8 ; 10.1016/0040-4039(96)00319-X
  2. But, T. Y. S.; Toy, P. H. J. Am. Chem. Soc. 2006128, 9636. DOI: 10.1021/ja063141v
  3. Dodge, J. A.; Nissen, J. S.; Presnell, M. Org. Synth. 1996, 73, 110. [PDF]

関連反応

関連書籍

 

関連リンク

関連記事

  1. フィンケルシュタイン反応 Finkelstein Reactio…
  2. ヒュスゲン環化付加 Huisgen Cycloaddition
  3. ヒンスバーグ オキシインドール合成 Hinsberg Oxind…
  4. シャピロ反応 Shapiro Reaction
  5. 林・ヨルゲンセン触媒 Hayashi-Jørgensen Cat…
  6. ゴールドバーグ アミノ化反応 Goldberg Aminatio…
  7. クノール キノリン合成 Knorr Quinoline Synt…
  8. 野依不斉水素移動反応 Noyori Asymmetric Tra…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 吸入ステロイド薬「フルタイド」の調査結果を発表
  2. 「つける」と「はがす」の新技術|分子接合と表面制御 R4
  3. 春の褒章2011-化学
  4. 金よりも価値のある化学者の貢献
  5. カルシウムイオン濃度をモニターできるゲル状センサー
  6. ファンケルの身近な健康に関する研究開発
  7. ChemDrawからSciFinderを直接検索!?
  8. 水素移動を制御する精密な分子設計によるNHC触媒の高活性化
  9. メソポーラスシリカ(3)
  10. 二重芳香族性を示す化合物の合成に成功!

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年6月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

注目情報

最新記事

5/15(水)Zoom開催 【旭化成 人事担当者が語る!】2026年卒 化学系学生向け就活スタート講座

化学系の就職活動を支援する『化学系学生のための就活』からのご案内です。化学業界・研究職でのキャリ…

フローマイクロリアクターを活用した多置換アルケンの効率的な合成

第610回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院理学研究科(依光研究室)に在籍されていた江 迤源…

マリンス有機化学(上)-学び手の視点から-

概要親しみやすい会話形式を用いた現代的な教育スタイルで有機化学の重要概念を学べる標準教科書.…

【大正製薬】キャリア採用情報(正社員)

<求める人物像>・自ら考えて行動できる・高い専門性を身につけている・…

国内初のナノボディ®製剤オゾラリズマブ

ナノゾラ®皮下注30mgシリンジ(一般名:オゾラリズマブ(遺伝子組換え))は、A…

大正製薬ってどんな会社?

大正製薬は病気の予防から治療まで、皆さまの健康に寄り添う事業を展開しています。こ…

一致団結ケトンでアレン合成!1,3-エンインのヒドロアルキル化

ケトンと1,3-エンインのヒドロアルキル化反応が開発された。独自の配位子とパラジウム/ホウ素/アミン…

ベテラン研究者 vs マテリアルズ・インフォマティクス!?~ 研究者としてMIとの正しい向き合い方

開催日 2024/04/24 : 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足…

第11回 慶應有機化学若手シンポジウム

シンポジウム概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大…

薬学部ってどんなところ?

自己紹介Chemstationの新入りスタッフのねこたまと申します。現在は学部の4年生(薬学部)…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP