Chem-Station

|Sponsored Advert|

M

光延反応 Mitsunobu Reaction

光延反応 Mitsunobu Reaction
6月 08
20:16 2009
LINEで送る
Pocket

光延反応 Mitsunobu Reaction 

概要

第二級アルコールにアゾジカルボン酸ジエチル(DEAD)、トリフェニルホスフィン(Ph3P)、安息香酸を反応させると、立体反転(SN2経路)を伴って、対応するベンゾイルオキシ誘導体が生成する。続くアルカリ加水分解により、対応するアルコールに変換できる。すなわち、アルコールの立体反転法として用いられる。

穏和な条件で反応が進行するため、天然物・複雑化合物合成に頻用されている。しかしながら、目的物以外にも副産物が多く生成する為、TLCの検出作業および精製が困難になるケースも多い。

基本文献

  • Mitsunobu, O.; Yamada, M.; Mukaiyama, T. Bull. Chem. Soc. Jpn. 1967, 40, 935. doi:10.1246/bcsj.40.935
  • Mitsunobu, O.; Yamada, M. Bull. Chem. Soc. Jpn. 196740, 2380. doi:10.1246/bcsj.40.2380
  • Review: Mitsunobu, O. Synthesis 1981, 1.
  • Review: Hughes, D. L. Org. React. 199242, 335.
  • Review: Dandapani, S.; Curran, D. P. Chem. Eur. J. 200410, 3130. DOI: 10.1002/chem.200400363
  • Review: Dembinski, R. Eur. J. Org. Chem. 2004, 2763. DOI: 10.1002/ejoc.200400003
  • But,T. Y. S.; Toy, P. H. Chem. Asian. J. 20072, 1340. doi:10.1002/asia.200700182
  • Swamy, K. C. K.; Kumar, N. N. B.; Balaraman, E.; Kumar, K. V. P. P. Chem. Rev. 2009, 109, 2551. doi:10.1021/cr800278z

 

反応機構

アゾジカルボン酸ホスフィン付加体の塩基性が弱いため、求核剤には酸性プロトン(pKa<13)が必要とされる。単純にアルコールの反転目的で使用したい場合には、安息香酸よりも酸性度の高いp-ニトロ安息香酸を用いると収率が良い場合が多い。(参考:Chirality 2000, 12, 346)
ol-ol-004.gif

反応例

カルボン酸以外の求核剤も用いることができ、さまざまな化合物へと変換される。 以下に例をまとめておく。
mitsunobu_3.gif
大環状化合物合成にも適用可能であり、価値が高い。
mitsunobu_9.gif
角田試薬を用いる光延反応[1]:pKaが13より大きい弱酸においても光延反応を進行させることが可能。
mitsunobu_5.gif
PhI(OAc)2を再酸化剤にすれば、DEADを触媒量に減ずることが可能。[2]
mitsunobu_4.gif
Movassaghiらによって開発されたIPNBSH試薬を用いると、アルコールの脱酸素化が行える(Movassaghi脱酸素化)。
movassaghi_deoxi_1.gif

実験手順

混み合った位置にあるアルコールの立体反転[3] mitsunobu_8.gif

温度計、攪拌子を備えた250mL三径フラスコに(-)-メントール(3.00g, 19.2mmol)、4-ニトロ安息香酸(12.9g, 77.2mmol)、トリフェニルホスフィン(20.1g, 76.6mmol)、テトラヒドロフラン(150mL)を加える。溶液を氷冷し、ジエチルアゾジカルボキシレード(12.1mL, 77mmol)を、内温が10℃を超えないように注意しながら滴下していく。滴下終了後、氷浴を取り除き室温で一晩(14時間)攪拌し、引き続き40℃3時間攪拌する。室温に放冷し、ジエチルエーテル(150mL)で希釈、有機層を飽和重曹水(2×100mL)で洗浄する。水層を合わせてジエチルエーテル(100mL)で逆抽出する。有機層を合わせ、無水硫酸ナトリウムで乾燥する。溶媒と低沸点化合物をエバポレータ、真空ポンプ(0.2mmHg, 30℃, 3時間)で除去する。固体状物質をジエチルエーテル(40mL)に懸濁させ、一晩放置する。混合溶液を攪拌しながらヘキサン(20mL)をゆっくり加えると白色固体が生じるので、これを減圧ろ過し、50v/v%のジエチルエーテル/ヘキサンで洗浄する。ろ液をエバポレータで濃縮し、残渣の黄色油状物質をジクロロメタン(10mL)に溶解させ、8%ジエチルエーテル/ヘキサン(40mL)で希釈する。これをカラムクロマトグラフィ(展開系:8%ジエチルエーテル/ヘキサン)で精製することで目的物を白色結晶性固体として得る(5.03g, 収率85.6%)。

 

実験のコツ・テクニック

 

参考文献

[1] Tunoda, T. et al. Tetrahedron Lett. 199536, 2529.; ibid, 1996, 37, 2463. DOI: 10.1016/0040-4039(96)00318-8 ; 10.1016/0040-4039(96)00319-X

[2] But, T. Y. S.; Toy, P. H. J. Am. Chem. Soc. 2006128, 9636. DOI: 10.1021/ja063141v

[3] Dodge, J. A.; Nissen, J. S.; Presnell, M. Org. Synth. 1996, 73, 110. [PDF]

 

関連反応

 

関連書籍

 

関連リンク

関連記事:以下の記事も読んでみてください

  • 付設展示会へ行こう!ーWiley編付設展示会へ行こう!ーWiley編  毎年数万人が集まる日本化学会年会、今年は第91回目で神奈川大学で行われます。学会賞の講演をはじめ、多くの特別講演や一般講演が行われ、今回学会デビュー!の方も多いのではないでしょうか。そんな中密かに楽しみなのが、ポスター会場で行われる付設展示会(ブース会場)。数多くの […]
  • 向山アルドール反応 Mukaiyama Aldol Reaction向山アルドール反応 Mukaiyama Aldol Reaction   概要 通常酸・塩基で促進される古典的アルドール反応は可逆反応であり、エノラート生成時の立体制御が難しく、複雑な混合物を与える。 1970年代の向山らによる研究で、単離生成・長期保存可能なシリルエノールエーテル・ケテンシリルアセタールなどを求核剤に用い、交 […]
  • 向山酸化 Mukaiyama Oxidation向山酸化 Mukaiyama Oxidation アルコール→アルデヒド、ケトン 概要 Swern酸化は副反応も少なく実用性が高い一方で、低温無水条件が必要、有毒な一酸化炭素の生成、ジメチルスルフィド由来の悪臭などが懸念される。また、Dess-Martin試薬などに代表される高原子価ヨウ素試薬は、これらの心配はないが、潜在 […]
  • 芳香族メタ光環化付加  Aromatic meta-photocycloaddition芳香族メタ光環化付加 Aromatic meta-photocycloaddition   概要 芳香族化合物とアルケンは光照射下に[3+2]付加環化を起こす。通常の合成法では得られにくい骨格を短工程で得られる。位置選択性に優れる分子内反応のほうが合成的には有用性が高い。   基本文献 Cornelisse, J. […]
  • マクマリーカップリング McMurry Couplingマクマリーカップリング McMurry Coupling   概要 アルデヒドやケトンを低原子価チタン種で還元的にカップリングさせ、アルケンを合成する反応。オゾン分解の逆形式と捉えられる。分子内でも効率よく進行し、大環状化合物や天然物合成に広く用いられている。 基本文献 Tyrlik, S.; […]
  • 向山水和反応 Mukaiyama Hydration向山水和反応 Mukaiyama Hydration   概要 コバルト触媒とシラン還元剤、酸素雰囲気共存下において、オレフィンの水和反応を行う手法。位置選択性はマルコフニコフ則に従う。マンガン触媒を用いても反応が進行する。 基本文献 当量反応 Mukaiyama, T.; Isayama, […]
  • 活性二酸化マンガン Activated Manganese Dioxide (MnO2)活性二酸化マンガン Activated Manganese Dioxide (MnO2)   概要 活性二酸化マンガンを用いる酸化。通常の脂肪族アルコールの酸化はきわめて遅く、アリルアルコールやベンジルアルコール、プロパルギルアルコールのみが選択的に酸化される。一級アルコールの酸化はアルデヒドで停止し、カルボン酸は生成しない。 極性溶媒では反応が […]
  • メーヤワイン・ポンドルフ・ヴァーレイ還元 Meerwein-Ponndorf-Verley (MPV) Reductionメーヤワイン・ポンドルフ・ヴァーレイ還元 Meerwein-Ponndorf-Verley (MPV) Reduction   概要 Al(OiPr)3とイソプロパノール(IPA)を用いて、ケトンをアルコールに還元する方法。 可逆反応であり、IPAの代わりに過剰のアセトンを用いれば、アルコール部分が酸化されて、アルデヒドもしくはケトンが得られる(Oppenauer酸化)。このため […]
  • ミズロウ・エヴァンス転位 Mislow-Evans Rearrangementミズロウ・エヴァンス転位 Mislow-Evans Rearrangement   概要 アリルスルホキシドが熱的条件により転位を起こし、アリルスルフェナートとの平衡状態になる。本現象がMislowらによって発見された後、スルフェナートを捕捉するリン試薬などを添加することでアリルアルコールを合成できることがEvansらにより見出され、合成手法 […]
  • マーティンスルフラン Martin Sulfuraneマーティンスルフラン Martin Sulfurane アルコール→アルケン 概要 Martinスルフランは極めて穏和な条件にて、アルコールの脱水反応が行える試薬。第二級・第三級アルコールからアルケンを与える。第一級アルコールは脱水せず、エーテルを与える。 基本文献 Arhart, R. J.; […]
LINEで送る
Pocket

About Author

Hiro

Hiro