[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

むずかしいことば?

[スポンサーリンク]

 

朝から晩まで研究室で過ごしていると、専門用語≒日常語になってきます。そういう生活を長期続けたあとに、たまーに他の世界の友人達と話すと、ついつい化学用語が飛び出てしまい、周りを( ゚д゚)ポカーンとさせてしまう・・・そういうことって、ないですか?
気をつけててもついつい使ってしまう、そんな「むずかしいことば」。私の場合、それは

「律速(りっそく)」

という言葉です。

このブログの読者だとご存知の方も多いでしょうが、「律速」とは「全体の反応速度を規定する」という意味の用語です。化学反応を各素反応に分解して考えた場合、一番反応速度の遅い箇所=「律速段階」になります。

この単語、日常的になにげに使いやすいんです。要は、「一番時間のかかるところ=律速」という使い方が何にでも応用可能なんですね。

「俺らが飯食いにいったらたいていAが律速になるからなぁ。あいつ常にしゃべりながら食ってるからよー」
「ラボ大掃除の律速?そりゃあ間違いなくドラフト掃除じゃないかな?」
「研究発表会の律速はいっつも教授の訳わからん質問なんだよね・・・」

といった具合に。 ラボのメンバーとは、そんな会話が日常茶飯事なのです。

すごく便利なんで、いつでもどこでも律速律速・・・とやってると、ある時「リッソクって何?」と反撃を食らうわけです。どうもこの単語、意外と世の中では知られていないみたい?

以前工学系の友人に聞いてみたところ、やはり「律速って言葉は知らん」、その代わり同じ意味で「ボトルネック」という単語をよく使うと。なるほどと思うも、これも世間的に伝わりにくい単語であるそうな。 世間は「むずかしいことば」を避ける傾向にあるようです。特にカタカナ語がだめな人は相当多いようで。
「むずかしいことば」が使えないので、一般の方には「足を引っ張る」とか「一番遅い」という表現を代用するのですが・・・冗長なので「律速」に慣れ親しんだ身にはどうにもしっくりこないのです。何とかならんもんでしょうか?(と解決しそうも無い、些細なことを書いてみました)

P.S. ちなみに、SE用語の「デフォルト」「ロバスト」なんかもあらゆる場面で大変使いやすいんですが、やっぱり通じてくれませんね・・・。

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 2013年ケムステ人気記事ランキング
  2. ⾦属触媒・バイオ触媒の⼒で⽣物活性分⼦群の⾻格を不⻫合成
  3. 無機物のハロゲンと有機物を組み合わせて触媒を創り出すことに成功
  4. 元素川柳コンテスト募集中!
  5. クリック反応に有用なジベンゾアザシクロオクチンの高効率合成法を開…
  6. 金属材料・セラミックス材料領域におけるマテリアルズ・インフォマテ…
  7. アズレンの蒼い旅路
  8. CEMS Topical Meeting Online 超分子ポ…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. R・スモーリー氏死去 米国のノーベル賞化学者
  2. 光エネルギーによって二酸化炭素を変換する光触媒の開発
  3. NMR解析ソフト。まとめてみた。①
  4. Carl Boschの人生 その4
  5. \脱炭素・サーキュラーエコノミーの実現/  マイクロ波を用いたケミカルリサイクル・金属製錬プロセスのご紹介
  6. 三枝・伊藤 インドール合成 Saegusa-Ito Indole Synthesis
  7. 第五回 超分子デバイスの開発 – J. Fraser Stoddart教授
  8. 【消臭リキ】マッチでトイレで消臭トライ 
  9. 化学Webギャラリー@Flickr 【Part4】
  10. (+)-11,11′-Dideoxyverticillin Aの全合成

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2007年7月
 1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
3031  

注目情報

最新記事

フローマイクロリアクターを活用した多置換アルケンの効率的な合成

第610回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院理学研究科(依光研究室)に在籍されていた江 迤源…

マリンス有機化学(上)-学び手の視点から-

概要親しみやすい会話形式を用いた現代的な教育スタイルで有機化学の重要概念を学べる標準教科書.…

【大正製薬】キャリア採用情報(正社員)

<求める人物像>・自ら考えて行動できる・高い専門性を身につけている・…

国内初のナノボディ®製剤オゾラリズマブ

ナノゾラ®皮下注30mgシリンジ(一般名:オゾラリズマブ(遺伝子組換え))は、A…

大正製薬ってどんな会社?

大正製薬は病気の予防から治療まで、皆さまの健康に寄り添う事業を展開しています。こ…

一致団結ケトンでアレン合成!1,3-エンインのヒドロアルキル化

ケトンと1,3-エンインのヒドロアルキル化反応が開発された。独自の配位子とパラジウム/ホウ素/アミン…

ベテラン研究者 vs マテリアルズ・インフォマティクス!?~ 研究者としてMIとの正しい向き合い方

開催日 2024/04/24 : 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足…

第11回 慶應有機化学若手シンポジウム

シンポジウム概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大…

薬学部ってどんなところ?

自己紹介Chemstationの新入りスタッフのねこたまと申します。現在は学部の4年生(薬学部)…

光と水で還元的環化反応をリノベーション

第609回のスポットライトリサーチは、北海道大学 大学院薬学研究院(精密合成化学研究室)の中村顕斗 …

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP