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一般的な話題

累計100記事書きました

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私事 (?)ですが、ケムステのスタッフに参加してかれこれ5年、投稿した記事の数が100を超えていました(本記事が111記事目?)。本記事では、これまでの記事を振り返って、過去の人気作や、アクセスはあまり高くなかったけれど個人的な推し記事などを紹介しながら、それぞれの記事への思い入れなどをお話ししたいと思います。

有機反応を俯瞰するシリーズ

ケムステスタッフに参加した始めの1-2年間ほどに注力した連載記事です。アクセス数を考慮すると、代表作といってもいいと思います。有機反応をメカニズムごとに分類しているため、院試の勉強などに最適であるいう噂を各方面から聞いていたり聞いていなかったり。この記事の見どころは、反応の分類に加えて、電子の流れを言葉に落とし込んで”詠む”ところです。例えば反応機構を説明するときに、「電子がこう動いてこう動いてこうだよね」と抽象的な説明をされるよりも、「活性化されたカルボニルが引き寄せて、ヒドロキシ基のローンペアが脱理基を追い出すんだよね」という方が、分子の動きが活き活きと表現されて素敵ですよね。

ちなみに「俯瞰する」というタイトルは代表の山口先生につけていただきました。巨人の肩の上に立つ、という言葉がありますが、今、有機化学を学び始めた学生が最先端研究まで知識を追いつけるためには、人名反応の一つ一つをちまちまと学んでいては時間がかかります。有機反応を俯瞰するシリーズが、有機反応の本質的な部分を見失わずに、しかし楽しく学べる資料になっていると感じてくださったなら嬉しいです。

以下は、本シリーズの中でアクセス数が多い記事と個人的に好きな記事です。

有機反応を俯瞰する ー縮合反応
本シリーズ内のみならず、自分が書いたすべての記事の中で最もアクセス数が高い記事だそうです。公開から5年ほど経ちましたが、ここ数年は毎年 10 万程度のアクセスがあるらしいです。高校化学でも習うエステル化反応を記事の出発点にしているため、読者層が広いことが理由だと思います。

有機反応を俯瞰する ーシグマトロピー転位
ケムステスタッフとして加わったときに一番初めに書いた記事です。今見ると、やや粗削りな文章と説明な気もして恥ずかしいですね…。

有機反応を俯瞰する ーリンの化学 その 1 (Wittig 型シン脱離)
アクセス数はそんなに高くないのですが、個人的なお気に入りです。お気に入りの理由は、多くの有機化学の教科書では詳しく書かれていない、「リンと酸素の親和性」に関して説明を加えているからです。それまで、 C, H, N, O 以外が関わる有機化学反応に関して、苦手意識を持っていましたが、この記事を書くプロセスの中で、 「CHNO 以外の元素の性質も各論的に覚える必要はなくて、周期律で理解できる」ことに気づきました。

その他の記事は、こちらのまとめ記事からアクセスできます。
有機反応を俯瞰するシリーズ ーまとめ

アメリカでPhDを取るシリーズ

海外大学院受験と入学後の学生生活を綴ったブログです。今読み返すと恥ずかしくて読めないなぁというものもあります。勇気を出して読み返してみると、留学前の意気込みなどが書かれていて、やっぱり恥ずかしい気持ちになるものです。しかし、過去の自分に見られても恥ずかしくないような研究者にならねばならぬと気が引き締まるものでもあります。UC Berkeleyのようなアメリカのトップクラスの大学にいると、ときどき、「なぜ自分はこんな異次元な世界に紛れ込んでしまったのだろうか」インポスター症候群になることもあります。周りのポスドクも先輩も手の届かないスーパースターに見えるし、同期や後輩も尊敬できる化学者ばかりです。しかし、そんなときに自分でこれらの記事を読み返してみると、「あのときの自分がいたから今ここにいるんだ」と奮い立たせてくれる記事で、恥ずかしながらも、こういうデジタルタトゥーを残してよかったなぁと思う今日この頃です。

あと、これらの記事の影響が今頃になって出てきたのか、最近何かと留学志望の見知らぬ学部生/修士学生から相談を受けたり、「バークレーに立ち寄る機会があるのでお会いしたい」という光栄な言葉をかけていただくことが何度かありました。今のところはただの大学院生なので、相談したからと言って的を射た答えが返ってくるかどうかは分かりませんし、記念写真を撮ったところで出世するかは分かりませんのであしからず。しかし受け取った連絡は全てできる限り丁寧に返していますし、ケムステをきっかけに繋がりが増えることは嬉しいと思っているので、気軽にご連絡ください。

以下は、本シリーズの中でアクセス数が多い記事と個人的に思い入れがある記事です。

アメリカで Ph.D. をとる -結果発表ッーの巻-
出願準備シリーズの最後の記事です。新しい読者の方はご存知ないかもしれませんが、私はアメリカの大学院2年連続で出願して、1年目のときにはすべて不合格の通知を受け取りました。そのときの結果報告の記事です。留学を志した経緯や、当時の悔しい思いがありのまま書かれています。つらいときや落ち込んだ時にこの記事を読むと、昔の自分に恥ずかしくないように頑張ろうと思えるし、自分は今のボスに拾われた幸運な人間であることを再認識させてくれる記事です。この記事は公開にすごく勇気がいりましたが、今では書いてよかったと思えます。

Visiting Weekend 参加報告 (後編) 【UC Berkeley, Caltech 編】
私が大学院に出願したときは、研究内容と大学ランキングなどを主に参考にしながら出願先を選びました。そして visiting student として Berkeley で過ごした体験から、「UC Berkeley は化学の最高峰の大学である」と信じて、盲目的に UC Berkeley を進学先に選びました。しかし、大学院生をリクルートするためのイベントであるvisiting weekend に参加して「確かに Berkeley の化学は素晴らしいかもしれないけれど、UC Berkeley が化学を学ぶすべての学生にとって最適の選択肢なわけではない」ということに気づかされました。というのも、UC Berkeley では指導教官が大御所すぎて、指導スタイルが放任型になりがちだからです。放任主義な指導スタイルを逆手にとって、いい意味で自分のペースで自由奔放に研究することができる学生には天国のような場所かもしれません。私は学部時代の研究経験が乏しかったので、ある意味 Berkeley には “向いてない” 学生だったと思います (少なくとももしも似たような境遇の学生から 「Berkeley に行きたい」と相談を受けたなら、応援はしますがおすすめはしません)。実際、私は大学院に入学した直後の1,2年は研究方針について完全に迷子になっていましたし、今でも四苦八苦しています。そういった経験から「日本で修士を取ってから来た方がよかったのかもしれない」と思う日々もありました。

やや話はそれましたが、 Visiting weekend はアメリカの大学にはランキングでは表せない個性があることを教えてくれたイベントで、そのことをまとめた記事です。この記事は、これからアメリカの大学院を志願する学生に届けたい情報です。ちなみに、上では少しネガティブな感情を書いているように見えるかもしれませんが、今は、私は Berkeley を選んだことに関しては全く後悔していませんし、今の研究室で研究できることを誇りに思っています。知り合いの方がこの記事を読んでいたらご心配なさらずに。

大学院から始めるストレスマネジメント【アメリカで PhD を取る: オリエンテーションの巻】
これはお気に入りでもなく、思い入れがあるわけでもなくて、もう少し周知されてもいいのでは? と思っている記事です。大学院生活、とくに博士課程はストレスフルです。人がメンタルが弱っているときに陥りやすい思考の罠を知っておくことは、メンタルヘルスを維持するうえで重要かと思います。

アメリカの大学院生だってパーティするっつーの! 【アメリカでPhDを取る: Qualification Exam の巻】
ネタです。しかし、Beer pong や Thunderstruck などを紹介しており、アメリカに留学される方にはぜひ読んでほしい内容かもしれないです。

化学者だって数学するっつーの!シリーズ

「有機反応を俯瞰する」に並ぶ、量子化学と無機化学の基礎解説記事を作ろうと思って立ち上げたシリーズ記事です。筆が遅いので、第一弾が3年ほど前に出たにも関わらず、まだ累計5記事しかありません。当面の目標は群論を使って典型的な金属錯体(6配位八面体のみならず、三配位三角錐、二配位直線、二核パドルウィール、メタロセンなどなど)の分子軌道図を書けるようになることですが、このペースで行くと10年かかる??

最新論文解説シリーズ

2 年ほど前から不定期的に描き始めました。論文読解を加速するフォーマットに沿って、話題になった論文や筆者の好みの論文を解剖する記事です。基本的には自分の勉強のために書いていて、しかもマニアックなためアクセスは低めです。しかし読めば学びがある記事になっているはずだと自負していますこれらの記事が定期的には最新論文をチェックしないような学部生に最新研究を知る機会を与えたり、大学院生以上の研究者が分野外の研究を日本語で研究背景や分野の基礎知識も含めて勉強するのに資料になっていると幸いです。

ちなみに「勉強のため」というのは、化学の知識の勉強のためだけではなく、論文の書き方の勉強も含まれています。インパクトのある雑誌に論文を出したいならば、一流ジャーナルに掲載された論文がなぜそのジャーナルに受理されたのか、というメタな考察も必要なわけです。「もし同じ結果が得られていたときに、どういうストーリーを練ればよい雑誌に出せるだろうか」と考えてみたり、「この論文にどのような結果を足せば、さらにワンランク上の雑誌に出せるだろうか」と考える訓練も込めて、今後もこれらの記事を書いていこうと思います。

金属-有機構造体 (MOF) のデータベース

MOFは、1990年代後半から活発に研究されるようになった比較的新しい化合物群です。そのデータベースを作ろうと、地道に更新中です。2022年現在でも新しい MOF は続々と報告されていますが、実は有名で重要な MOF というのはほんの一握りです。10 種程度の代表的な MOF を知っていれば、最新論文を追跡出来るとさえ言ってもよいでしょう。しかし、分野外の人だと、どれがMOFがなぜ重要なのか、というのはわかりにくいものです。このデータベースでは、MOFの歴史的重要性と最新の研究例を、なるべく参考文献を挙げながら紹介しています。このデータベースは「MOFって流行ってるから少し興味あるけどよくわかんねぇよ」と思っている方のサポートになるのみならず、MOF研究をする人にも役立つ資料になると期待しています。

周期表あれこれ

シリーズというほどではないのですが、周期表に関する記事をいくつか投稿しています。結構お気に入りです。

他にも紹介したい記事はたくさんありますが、今回はこんなところにしておこうと思います。すべての記事の一覧は、記事最後の投稿者紹介の中の「投稿者の記事一覧」から見れます。というわけでこれからも継続的に面白い記事を書いていこうと思うので、よろしくお願いします。

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PhD候補生として固体材料を研究しています。学部レベルの基礎知識の解説から、最先端の論文の解説まで幅広く頑張ります。高専出身。

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