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実験でよくある失敗集30選|第2回「有機合成実験テクニック」(リケラボコラボレーション)

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理系の理想の働き方を考える研究所「リケラボ」とコラボレーションとして「有機合成実験テクニック」の特集を10回に渡り配信しています。

さて、第二回目はタイトルにある通り、「実験でよくある失敗集30選」。

研究室に加入した新入生も、ようやく実験になれて、そろそろ結果がではじめたひともいるのではないでしょうか。そう収穫の秋が始まりました。個人的な意見ですが、秋はいままで積み重ねてきた実験により結果の花が咲き、実がなって収穫できるときです。気候もよく、湿度も低いので実験もはかどります。

でも、まだまだ操作に四苦八苦していることも多いのではないでしょうか。そんな1年目の皆様が良く陥りがちな失敗をまとめてみました。もうそんなことないよ!という方が多いかもしれませんが、その場合は来年の春にぜひ新入生に見せてあげてください。

1.分液ロートの栓をとらずに水層除去を開始してしまう。

ぷくぷくなるやつです。実験開始当初はかなりの割合でみられます。実損はあまり無いですが、栓は取ってから水層の除去をしましょう。

2.分液ロートのコックを閉め忘れたまま、反応溶液を分液漏斗に流し込んでしまう。しかも三角フラスコを受けておらず、ドラフトの中は反応溶液まみれ。

化合物を回収するしかありません。大きめの分液ロート、ロート、キムワイプ、溶媒を用意。キムワイプでこぼれた溶液を回収しましょう。私はこれを防ぐために、抽出溶媒を少量分液漏斗にいれてから反応溶液を注ぐようにしています。

3.分液ロートをオーバーナイトで放置。塩が析出しコックが取れなくなった。

内容物を除き、ソニケーションするか、水や有機溶媒で固化したものを溶かしたのちに、ヒートガンであぶったりしましょう。そもそも、分液漏斗のコックは完全に閉じるべきではなくて、閉じたい場合は紙を一枚挟んでおくなりしておきましょう。

4.分液の先っぽが長いことを忘れていて、ぶつけて折る

特に洗浄中に起きるあるあるです。周りに余裕をもって洗浄しましょう。

5.分液の際にスターラーバーを分液ロートに落としてしまう。面倒くさくて、そのまま振ったら分液漏斗が割れてしまった。

クエンチを終えたら、ネオジム磁石でフラスコの中のスターラーバーを捕まえておいたうえで、分液ロートに溶液を注ぎましょう。別件ですが、固体の浮遊物が入っている場合もそのまま無理して分液するとスリがだめになってしまう場合があります。

6. フラスコを洗っている間に小さなスターラーバーを流しに流してしまう。

台所などによく使われている網を買って流しの排水口に設置しましょう。私は何度もそれに救われています。

7. エバポレーターでクリップを使わなかったために池ポチャする。

池ぽちゃしないように必ずクリップは使いましょう。万が一池ぽちゃしてしまった時のために、バスの水は定期的に交換しましょう。池ぽちゃした場合は、頑張って大きな分液漏斗で回収しましょう。水層を個体のNaClで飽和させるとより少ない量の有機溶媒で化合物を回収することが可能です。(後でエバポが早い。)

8. フラスコすれすれに溶媒をいれて、エバポをかける

間違いなく突沸して後悔します。俺はテクニックがあるから突沸しないんだ!といっている君。時間をかければ可能ですが、エバポ待ち渋滞を引き起こしている原因となり、最終的には自分に返ってきます。半分ずつ溶媒を飛ばしましょう。

9. クリップをつけていたのに、破損していて池ポチャする

金属製もプラスチック製もたまに破損しています。クリップを信じすぎていることが原因です。クリップ意外と万能ではありません。減圧が行われるまで手で抑えていれば事は防げます。

10. プラスチックの実験眼鏡をアセトンで拭いてしまい、曇りガラスにしてしまう。

新しい実験メガネを買いましょう。実験メガネは水で拭くようにしましょう。(試したことはないけれど、最悪エタノールですかね。)

11. 水層にまだ化合物があるのに、十分抽出の際に回収できたと思い込み捨ててしまう。

思いの外水溶性が高くて。。。といったことはたまにあります。毎回、TLCで全ての化合物を回収できてるか水層若しくは三度目の抽出フラクションに化合物がいないことを確認しましょう。もし、まだ水層に化合物がいる場合は、水層をNaClで飽和する、抽出溶媒の極性を上げるなどの方策をとりましょう。

12. オイルバスに温度コントロール用のセンサー(温度計)を差さずに昇温してしまい、オイルバスを過熱してしまう。

日本ではオイルバスとスターラーが別々だった気がするので、こういった失敗は無いのかもしれませんが。。。。センサーに関する事故は多いので、温度計でしっかり測ったほうがよいかもしれないですね。

13. 温度計またはセンサーがヒーティングバスの底もしくは過熱する管についておりオイルバスの温度が正確に測れていない。

ヒーター機能付きのスターラーをお使いの場合は、センサーの位置にもご注意ください。また、冷却用の塩-氷バスなどの場合は特に温度が均一になりづらいので定期的にかき混ぜるなど、注意しましょう。

14. 加熱還流にフラスコと還流管の間をプラスチックのクリップでとめてしまう。プラスチックが馬鹿になってすぐに割れる。

金属のクリップを使いましょう。蒸留時のフラスコと還流管の接続部も同様です。ただし、クリップは補助であり、固定器具なのでしっかりクランプでとめましょう。

15. オイルバスのオイルの量を気にせず勢いよく漬けたらオイルバスがあふれてしまった。

当たり前ですが、フラスコの分かさ増えますからね。注意しましょう

16. 還流菅とホースの接続部が緩くなっており、水漏れ。オイルバスに水が入る。

しっかりと還流実験の前には配管を確認しましょう。そして、還流の水流は通常たくさん流さなくても大丈夫なものです。また、水の出口が排水溝に入っているかも要確認です。流しすぎて、圧力で夜中のうちに栓が外れ、フロアが水浸し、若しくは水の出口がしっかりと排水溝に入っておらず、下の階まで水が漏った。という話はいくつも聞いたことがあります。

17. 実験を重ねるうちに、いつの間にか、スターラーバーの数が減っている。

特に小さいものは無くしやすいので、反応が終わったら、どこかスターラーバーをまとめておきましょう。尚、センシティブな触媒反応などではスターラーバーも使い捨てにすべきです(参考:撹拌子が金属触媒反応のコンタミを引き起こす話|有機化学研究所)。

18. 自動精製カラムの圧力異常で対応。圧力が急に解放され、顔に溶媒を浴びる。

防護メガネは必須です。圧力異常の時は溶媒が飛び出す可能性がかなり高いです。特に注意しましょう。

19. 液体窒素バスのデュアーを転かして、割ってしまう。高い。うるさい。

デュアーって僕も割ったことがありますが、実はかなりするんですよね。。。防護策としては、まず大きいデュアーなどは部屋の隅に置く。小さいものは必ず机の上に置く。倒れても大丈夫なように、周囲をスポンジのような緩衝材で巻いておくなど、すると万が一の時にも救われるかもしれません。

20. プラスチックのNMRチューブクリップをオーブンで乾熱する。異臭騒ぎ。

普通NMRチューブやクリップは、アセトンで洗ったのちに、風乾、その後、高真空で引いておけば、大丈夫です。そもそも、NMRチューブなどはあまり熱をかけるべきではありません。(先日シゲミチューブを乾熱している学生がいて、驚いたのを覚えています。)

21. HPLCの溶媒を枯らしてしまう。

溶媒残存量の設定ができる場合はしっかりとしたうえでHPLCを使いましょう。私は、HPLCの場合はタイマーを首から下げています。万が一溶媒を枯らしてしまった場合、上司に報告したうえで、溶媒を通してできるだけ早い回復処置を試みましょう。

22.手袋をせずにグロボに手をいれてしまい、リーク。

大変高価です。交換も面倒で、さらにはグローブボックスの中に住んでいる化合物たちにかわいそうです。注意しましょう。

23. デシケーターにグリースを塗りすぎ、しかも乾燥する前にスリとスリをずらしておくのを忘れて乾燥後化合物を取り出せなくなった。

学生実験でよく見るのは、グリースを塗りたくるパターン。グリースはスリとスリを合わせたときに透明になるくらいの量で充分ですよ。くっついて取れない場合は、圧力が解放されている状態にしたのちに、ヒートガンなどで温めてみるのが功を奏する場合があります。

24. 三方コックを落として、二方コックにしてしまう。

使える二方コックならばまだ救いがありますが、スリの部分が破れてしまった場合、用無し二方コックになります…お気をつけて。

25. マニフォールドのグリースを塗るのが面倒で、固くなりすぎて力を入れて破損してしまう

固くなってくたら定期的にグリースを塗ってメンテナンスしてあげてください。基本的に怠惰と油断がこのような事例を誘います。

26. 長針で溶媒を取るときに1点しか持たず、力がかかりすぎて根本が折れてしまう

寿命で折れてしまうことも多々ありますが、しっかり支えていないと変な力のかかり方によりすぐに根本が折れます。晴れて両針(カニュラー)として人生を出発されるかもしれないですが…

27. ドラフトの溝に落下。永遠に保存することとなる

手前に溝があるドラフトがあります。そこにものを落としてしまうとなかなかとれません(スターラーバー)など。そこにためておいてもなんの得もないので気をつけてください。

28. 白衣の前ポケットにいれて、前かがみになる

ペンやピンセットぐらいなら落とすだけですみますが、NMRサンプルなど入れていた場合、あなたの貴重なサンプルを失う可能性もあります。

29. 低温バスを作成しようとして、溶媒に液体窒素を注ぎ低温温度計でかきまぜる

温度計が切れてしまうのでやめましょう。危険を承知でドライヤーで温めて再生を試みることとなります。

30. TLCを3点打ちしない

失敗ではないですが、原料だと思っていたスポットが原料じゃなかった。なんてこと往々にしてあります。しっかり、原料と反応系を3点打ちしましょう。

まとめ

皆様心当たりはありましたか?私もいくつかこの中でやってしまったことがあります。できればこういった失敗をしないように、毎日の実験では気を付けたいものですね。自戒をこめて。ここに出した失敗はほんの一例で、まだまだあると思いますので、化学専用オープンコミュニティケムステSlackにて紹介していただければ幸いです。特に自作作品に関しては、#b03 雑談にて紹介していただけると助かります。

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他のコラボレーション記事(全10回予定)

第一回有機合成に活躍する器具5選

第二回:本記事

第三回使っては・合成してはイケナイ化合物

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東京の大学で修士を修了後、インターンを挟み、スイスで博士課程の学生として働いていました。現在オーストリアでポスドクをしています。博士号は取れたものの、ハンドルネームは変えられないようなので、今後もGakushiで通します。

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Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

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