[スポンサーリンク]

odos 有機反応データベース

カルボニル基の保護 Protection of Carbonyl Group

[スポンサーリンク]

 

概要

カルボニル化合物の保護目的には、アセタールとして保護することが一般的。保護は酸性条件下行われる。還元条件、塩基性条件、求核剤、非酸性酸化剤には安定。

基本文献

・Daignault, R. A.; Eliel, E. L. Org. Synth. 19735, 303.

 

反応機構

アセタール保護反応は可逆であり、反応を完結させるためにはアルコールを過剰に用いたり、副生する水を除去する工夫が必要となる。
PG_carbonyl_6.gif
カルボニルの反応性の順列はおよそ以下のとおり。
PG_carbonyl_8.gif

反応例

Saxitoxinの合成[1]:ハードルイス酸もしくはブレンステッド酸の親和性・活性化能はO>Sである。これを利用すれば、O-アセタールからS-アセタールへと一段階で掛け替えが可能。
PG_carbonyl_3.gif
野依法[2]:TMSOTfを触媒として、シリルエーテルとカルボニル化合物を反応させると、アセタール・ケタールが高収率で得られる。極低温でも反応が進行する強力な条件。副生するジシロキサン(TMSOTMS)が安定で反応性に乏しいため、逆反応は起こらず、速度論的支配下で保護が行える。
PG_carbonyl_5.gif

大寺触媒
を用いる方法[3]:以下に示すジスタノキサン触媒は強酸に不安定な基質にも用いることができる。穏和なルイス酸としてカルボニルを活性化するとともに、スズアルコキシドを生成し求核能を高めるという共同作用を行っている。また、脱水装置も不要である。
PG_carbonyl_4.gif
アルデヒド存在下におけるケトンの選択的アセタール化[4]:ジメチルスルフィド-TMSOTfで処理したあとに野依法を行う方法が知られている。
PG_carbonyl_9.gif

実験手順

エチレングリコールアセタール保護[5] PG_carbonyl_7.gif

実験のコツ・テクニック

もっともポピュラーな保護基を以下に挙げる。6員環アセタールは5員環アセタールよりも加水分解速度が速い。
PG_carbonyl_2.gif
※チオアセタールの脱保護は主に次の3通りが知られる。①メチル化→加水分解 ②酸化(超原子価ヨウ素など)→加水分解 ③水銀(II)による加水分解

 

参考文献

[1] Tanino, H.; Nakata, T.; Kaneko, T.; Kishi, Y. J. Am. Chem.
Soc.
1977, 99, 2818. DOI: 10.1021/ja00450a079
[2] Noyori, R.; Murata, S.; Suzuki, M. Tetrahedron 1981,
37, 3899. doi:10.1016/S0040-4020(01)93263-6

[3] Otera, J.; Dan-oh, N.; Nozaki, H. Tetrahedron 1992,
48, 1449. doi:10.1016/S0040-4020(01)92233-1
[4] Kim, S.; Kim, Y. G.; Kim, D. Tetrahedron Lett. 1992,
33, 2565. doi:10.1016/S0040-4039(00)92243-3
[5] Daignault, R. A.; Eliel, E. L. Org. Synth. 1973,
5, 303.

 

関連反応

 

関連書籍

[amazonjs asin=”1118057481″ locale=”JP” title=”Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis”][amazonjs asin=”1588903761″ locale=”JP” title=”Protecting Groups”]

 

外部リンク

関連記事

  1. チャン転位(Chan Rearrangement)
  2. ステッター反応 Stetter reaction
  3. プラトー反応 Prato Reaction
  4. フォルハルト・エルドマン環化 Volhard-Erdmann C…
  5. バートン反応 Barton Reaction
  6. ゾムレ・ハウザー転位 Sommelet-Hauser Rearr…
  7. バルツ・シーマン反応 Balz-Schiemann Reacti…
  8. ハネシアン・ヒュラー反応 Hanessian-Hullar Re…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 生体医用イメージングを志向した第二近赤外光(NIR-II)色素:①単層カーボンナノチューブ
  2. マテリアルズ・インフォマティクスの導入・活用・推進におけるよくある失敗とその対策とは?
  3. ボロン酸エステルをモノ・ジフルオロメチル基に変える
  4. 高分子ってよく聞くけど、何がすごいの?
  5. フォトメカニカル有機結晶を紫外線照射、世界最速で剥離
  6. ニセクロハツの強毒原因物質を解明 “謎の毒キノコ” 京薬大准教授ら
  7. 原子力機構大洗研 150時間連続で水素製造 高温ガス炉 実用化へ大きく前進
  8. フリードレンダー キノリン合成 Friedlander Quinoline Synthesis
  9. 知の市場:無料公開講座参加者募集のご案内
  10. Igor Larrosa イゴール・ラロッサ

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年7月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

注目情報

最新記事

アクリルアミド類のanti-Michael型付加反応の開発ーPd触媒による反応中間体の安定性が鍵―

第622回のスポットライトリサーチは、東京理科大学大学院理学研究科(松田研究室)修士2年の茂呂 諒太…

エントロピーを表す記号はなぜSなのか

Tshozoです。エントロピーの後日談が8年経っても一向に進んでないのは私が熱力学に向いてないことの…

AI解析プラットフォーム Multi-Sigmaとは?

Multi-Sigmaは少ないデータからAIによる予測、要因分析、最適化まで解析可能なプラットフォー…

【11/20~22】第41回メディシナルケミストリーシンポジウム@京都

概要メディシナルケミストリーシンポジウムは、日本の創薬力の向上或いは関連研究分野…

有機電解合成のはなし ~アンモニア常温常圧合成のキー技術~

(出典:燃料アンモニアサプライチェーンの構築 | NEDO グリーンイノベーション基金)Ts…

光触媒でエステルを多電子還元する

第621回のスポットライトリサーチは、分子科学研究所 生命・錯体分子科学研究領域(魚住グループ)にて…

ケムステSlackが開設5周年を迎えました!

日本初の化学専用オープンコミュニティとして発足した「ケムステSlack」が、めで…

人事・DX推進のご担当者の方へ〜研究開発でDXを進めるには

開催日:2024/07/24 申込みはこちら■開催概要新たな技術が生まれ続けるVUCAな…

酵素を照らす新たな光!アミノ酸の酸化的クロスカップリング

酵素と可視光レドックス触媒を協働させる、アミノ酸の酸化的クロスカップリング反応が開発された。多様な非…

二元貴金属酸化物触媒によるC–H活性化: 分子状酸素を酸化剤とするアレーンとカルボン酸の酸化的カップリング

第620回のスポットライトリサーチは、横浜国立大学大学院工学研究院(本倉研究室)の長谷川 慎吾 助教…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP