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ケムステまとめ

論文執筆ABC

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研究成果を発表できる媒体はいろいろありますが、もっとも権威と信頼性の高いものが原著論文であることは古今東西不変です。プロフェッショナルのアカデミック研究者として過ごすのであれば、論文のことを四六時中考えながら研究を進めなくてはなりません。とはいえ少しばかりの鍵となる一般知識があるだけで、理解と進め方は容易になってきます。

書き方、研究現場における位置づけ、掲載先であるジャーナル事情・・・などなど、「論文」にまつわる過去のケムステ記事を広くまとめて見ました。

論文執筆のノウハウ

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巷には「論文の書き方」指南文が山ほど溢れています。どれが適切なのか、まず最初は何を読むべきかは、なかなか難しい問題だと思います。ある程度内容が正しければ「自分の肌に合うものを選ぶ」ので良いとは思います。論文執筆はクリエイティブ作業なので、決まった習熟法があるわけではないからです。

しかし、科学論文における典型的な作法・形式・文章構成などは厳然として存在していますから、まずはそれを一通り学ぶのが良いやり方だとは思えます。他方、表層的なテクニック・TIPSではなく、科学研究の本質・原理原則に触れるような骨太の思想文には、折に触れ幾度も参照する価値があると思われます。

論文執筆のための書籍も、世の中には沢山出版されています。過去ケムステで紹介したものは以下の通り。

また最近では人目を引くことを意図して、キャッチーな概要図(TOC)や凝ったアイデアの表紙も多く作られているようです。技術と芸術センスがあれば一度はやってみたい・・・?ですね。

学術ジャーナルの現代事情

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論文を最大限の研究者にリーチさせるには、読者の多いジャーナルに掲載を目指すのが最も合理的なやり方です。しかしそのような人気雑誌は競争率が高く、掲載も容易ではありません。また専門家だけが読むわけでもないため、期待したような濃いフィードバックを得るに不向きなことも有ります。場合によってはトピックを絞ったジャーナルに投稿する方が好ましい場合もあります。いずれにせよジャーナルとその読者層に対する理解なしには、研究成果の優れたリーチは望めません。

ジャーナル事情も日進月歩で変化しています。編集部側の考え方や、最近の出版潮流を押さえておくことは、最適な投稿先選びの良い助けとなるのではないでしょうか。

最近の潮流として見逃せないのが、電子ジャーナルとインパクトファクター(IF)隆盛に後押しされたオープンアクセス化、ジャーナルの乱立増、良い論文の戦略的囲い込み、総説コンテンツの増加です。特にオープンアクセス化は避けては通れない一大潮流で、それに伴い多くの問題も勃発しています。日本の化学界は果たして今後切り込んでいくことができるのでしょうか・・・・?

2017年8月、満を持して化学系プレプリントサーバー「ChemRxiv」のベータ版が運用開始となりました。従来型出版システムに伴う諸々のデメリットを解消する手立てとなり得るか?目が離せない取り組みです。

論文引用数と研究潮流にまつわる話題

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引用数はその論文がどれだけ対外的に注目を集めているかを図る簡便な指標です。大きな引用数を稼ぐ論文を解析することで、各時代の研究潮流を見積もることが出来ます。引用数という単語から、自分の専門分野外に目を向けるきっかけにしてみるのも悪くないものです。

論文英語にまつわる話題

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世界の研究者に自分の成果を知って貰うには、英語での論文執筆が不可避です。しかしこれは苦手な人が本当に多い!英文添削サービスやノウハウ本なども溢れており、これだけで一つ大きなビジネスになってしまうほどです。お金を払ってこれらを使うことは日本人研究者に不可欠である一方、自分なりのやり方で英語力の改善に取り組む努力は継続していくべきと思います。

文献管理・検索を加速する

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昔ながらのEndnoteを使うだけでは時代遅れ?いまは論文管理と検索を効率化する便利ツールがあちこちに転がっています。無料のものも多くあります。上手く使って時間を節約しましょう。

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博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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