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2021年化学企業トップの年頭所感を読み解く

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2021年が本格始動し始めている中、化学企業のトップが年の初めに抱負や目標を述べる年頭所感を続々と発表しています。そこで各社トップの年始のメッセージを読み解き、化学メーカーの2021年を考えます。

2020年が幕を閉じ、2021年が始まってから一月ほど経過しました。通常であれば、新年参拝や新年会、賀詞交歓会などのイベントがありますが、今年はコロナウィルスの影響でほとんどが中止になったと思います。イベントはなくても将来に向けて走り始める必要があり、各社のトップはその方針を年頭所感でコメントしています。以下、その年頭所感で多くのトップが触れたトピックについて見ていきます。

コロナウィルス

ほとんどの年頭所感が、冒頭でコロナウィルスの影響について触れられています。影響は社会全体にあり製品の売り上げだけでなく社員の働き方にも影響を与えたことを強調しています。コロナの影響は当分続くとみられ、ポストコロナの中でどのような改革を進めていくのか、他の課題とともに言及しています。昨年は、マスクや消毒液といった感染対策の製品が不足する事態になり、これらの原料を使用した他の製品まで影響ができました。これらの品物の不足は一部を除いて解消しましたが、ワクチンに関して新たな動きがあり、コロナウィルスワクチンが完成し欧米では接種が始まっています。しかしながら、これらのワクチンは-70度以下という極低温で運搬・保管する必要があり、極低温冷蔵庫向けの冷媒やドライアイス、液体窒素の需要が大きくなる可能性があります。経済の回復が期待される中、コロナ対策向けの事業とそれ以外の事業を両立して推進することが求められていると思います。

多くの年頭所感において個別の案件については言及していませんが、デンカ株式会社の山本 学社長は、抗原迅速診断キットの製品化と抗ウイルス薬「アビガン」の原料「マロン酸ジエチル」の製造設備の再稼働を成果として挙げています。

2020年ケムステ過去記事

環境問題

環境問題に関する話題も多く、SDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字)をこれからの方向性として強調し、具体的な目標としてプラスチックのケミカルリサイクルやカーボンニュートラルに関するプロジェクトについて言及されています。欧州は元々環境への意識が高く脱炭素の活動をリードしてきましたが、アメリカも環境を重視するリーダーが現れ、日本政府も環境に対してかなり踏み込んだ政策を発表しているため、企業としてもこの環境問題をより重視する必要が出てきているようです。化学品の選定において、今までは要求される技術パフォーマンスを満たし、高い毒性がないことが最低条件でしたが、今後は最終製品の製造における環境負荷が低いことが必須となり、化学品においても技術と毒性に加えて製造における環境負荷が低いことも最低条件として加わる可能性があります。

出光興産株式会社の木藤俊一社長は、蓄電池材料事業や再生可能エネルギー電源の開発の拡大など次世代エネルギーに対する活動を大きく取り上げています。年頭所感の最後には、エネルギー企業にとっては逆風と思われるこの風潮に対して、出光興産が持つCO2に関する知見とインフラをさらに進化させ、成長していくための好機にしたいとコメントしています。

2020年ケムステ過去記事

デジタル化

DX(デジタルトランスフォーメーション)に言及している年頭所感も多く見受けられます。そもそもデジタルトランスフォーメーションとは「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させること」で、例えば手作業で実験結果をエクセルにまとめていたのを自動でデータを集約するようなシステムを導入することが簡単なDXの例だと言えます。化学企業ではDXのツールそのものを開発することはなく、どう新しいITツールを活かしてDXを進めるかが重要だと思います。DXはコロナの影響で普及したリモートワークの更なる促進と効率化にも貢献できるトピックであり、製品のためだけでなく働く社員のためにもDXの推進を強く希望します。

JSR株式会社のエリック・ジョンソンCEOは、JSRはマテリアルズインフォマティクスやバイオインフォマティクス、量子化学計算技術に対して投資を行ってきたとコメントしています。

2020年ケムステ過去記事

その他

最後に気になったトピックを取り上げます。まず、三菱ケミカルホールディングスの越智 仁社長は、4月から三菱ケミカルでは、ジョブ型の人事制度が始まることについて言及しています。ジョブ型雇用とは決められた仕事に対して人員の枠があり、その仕事を遂行できる人を採用する人事制度のことです。これまでの日本で一般的なのは、総合職として新卒を一括採用しいろいろな部署を回ってキャリアを形成するメンバーシップ型雇用であり、ジョブ型雇用とは対極であると言われています。個々の企業で詳細は異なるものの、いきなり新卒一括採用を辞めて欧米のようなジョブ型雇用になるとは考えにくいですが、少なくとも自分の意志で異動やポジションを選択するようになっていくと考えられます。また中途採用では、ある程度決まった職務内容で募集しているためすでにジョブ型雇用に近く、違い職種の仕事をしたいと思った時に、転職という選択も容易に考えられるようになるかもしれません。

昨年4月に日立化成をグループ化した昭和電工株式会社の森川宏平社長は、統合計画について言及しお互いに協力して会社の発展に貢献できるよう激励しています。一方、三洋化成工業との経営統合の中止を発表した日本触媒株式会社の五嶋祐治朗社長は、冒頭でこの点について触れています。企業はさらに経営の合理化を進める必要があり、化学企業の合併や経営統合は考えられます。また、上記で取り上げたプラスチック削減やカーボンニュートラルといった新たな問題に挑戦するため、競合他社とでも共同研究共同や協業を行う事例が増えてくると思います。

2020年はコロナの影響を社会は強く受けましたが、ケムステニュースではコロナに関係ない新しい研究成果をいくつも紹介してきました。2021年は、より多くの明るい話題を紹介できればと思います。

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ただの会社員です。某企業で化学製品の商品開発に携わっています。社内でのデータサイエンスの普及とDX促進が個人的な野望です。

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