[スポンサーリンク]

化学書籍レビュー

最新 創薬化学 ~探索研究から開発まで~

[スポンサーリンク]

内容

医薬品開発に携わる多くの研究者にメディシナルケミストリーの本質と全体像を明らかにした本書は、この改訂第2版でポストゲノムからさらに次なる局面に進展しつつある創薬研究に新たな展望を指し示します。

対象

  • 企業もしくはアカデミアで低分子医薬探索に取り組む学生・ポスドク・研究者。
  • メディシナルケミストリーの経験に乏しい有機合成化学者。
  • 薬学部で創薬化学の講義を担当する教員。

解説

本書は40以上の章立て・上下巻という骨太の構成を採る「日本語で読める、メディシナルケミストリーの教科書」である。基本から応用まで幅広く体系だてて網羅され、各々には必要十分な記述がある。創薬化学者の座右の書・バイブルとして、長きにわたり高評価を受ける名著の一つである。

学生時代に有機合成化学の先端研究を行なったうえで製薬企業に入社した研究者のほとんどは、メディシナルケミストリーのバックグラウンドに乏しい。そのような研究者が最初に読むべき書籍と位置づけられている。創薬分野にも星の数ほどの専門書があるが、それぞれの有機的繋がりを理解するために必要となる、広汎な背景事項・歴史・文脈を学べる書籍は多くない。言い換えれば、創薬化学における入門書―専門書間のギャップを埋める役割を果たしてくれるのが本書である。実際、製薬企業内での勉強会などにもよく活用されているそうだ。

1998年の邦訳第1版から全面改定され、2006年に邦訳第2版が発刊された。伝統的な創薬化学全般を扱う教科書であるため、現代でも通用する原理原則的な記述がほとんどを占める。刊行年の古さは、思いの外問題にならないと思われる。

しかし原著の「The practice of medicinal chemistry」には第4版(2015)がごく最近登場した。邦訳第2版から10年近く経っていることを考えると、最新事情まで取り込みたいと考える意欲的な研究者ならば、原著をあたってみるのも良いだろう。(邦訳版の前書きを読むと分かるが、翻訳作業に携われる人的資源が不足しているようで、間近の邦訳刊行は望み薄かと思われる)

関連書籍

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 演習で学ぶ有機反応機構―大学院入試から最先端まで
  2. 次世代シーケンサー活用術〜トップランナーの最新研究事例に学ぶ〜
  3. アート オブ プロセスケミストリー : メルク社プロセス研究所で…
  4. 2009年10月人気化学書籍ランキング
  5. 化学探偵Mr.キュリー6
  6. The Merck Index: An Encyclopedia…
  7. 化学で何がわかるかーあなたの化学、西暦何年レベル?ー
  8. 有機合成のナビゲーター

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. N末端選択的タンパク質修飾反応 N-Terminus Selective Protein Modification
  2. Cleavage of Carbon-Carbon Single Bonds by Transition Metals
  3. ChemTile GameとSpectral Game
  4. 中皮腫治療薬を優先審査へ
  5. 有機強相関電子材料の可逆的な絶縁体-金属転移の誘起に成功
  6. 2004年ノーベル化学賞『ユビキチン―プロテアソーム系の発見』
  7. 2016年化学10大ニュース
  8. 三つの環を一挙に構築! caulamidine 類の不斉全合成
  9. η6配位アルキルベンゼンで全炭素(3+2)環化付加
  10. 前人未踏の超分子構造体を「数学のチカラ」で見つけ出す

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2016年2月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
29  

注目情報

最新記事

5/15(水)Zoom開催 【旭化成 人事担当者が語る!】2026年卒 化学系学生向け就活スタート講座

化学系の就職活動を支援する『化学系学生のための就活』からのご案内です。化学業界・研究職でのキャリ…

フローマイクロリアクターを活用した多置換アルケンの効率的な合成

第610回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院理学研究科(依光研究室)に在籍されていた江 迤源…

マリンス有機化学(上)-学び手の視点から-

概要親しみやすい会話形式を用いた現代的な教育スタイルで有機化学の重要概念を学べる標準教科書.…

【大正製薬】キャリア採用情報(正社員)

<求める人物像>・自ら考えて行動できる・高い専門性を身につけている・…

国内初のナノボディ®製剤オゾラリズマブ

ナノゾラ®皮下注30mgシリンジ(一般名:オゾラリズマブ(遺伝子組換え))は、A…

大正製薬ってどんな会社?

大正製薬は病気の予防から治療まで、皆さまの健康に寄り添う事業を展開しています。こ…

一致団結ケトンでアレン合成!1,3-エンインのヒドロアルキル化

ケトンと1,3-エンインのヒドロアルキル化反応が開発された。独自の配位子とパラジウム/ホウ素/アミン…

ベテラン研究者 vs マテリアルズ・インフォマティクス!?~ 研究者としてMIとの正しい向き合い方

開催日 2024/04/24 : 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足…

第11回 慶應有機化学若手シンポジウム

シンポジウム概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大…

薬学部ってどんなところ?

自己紹介Chemstationの新入りスタッフのねこたまと申します。現在は学部の4年生(薬学部)…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP