[スポンサーリンク]

ケムステニュース

「女性用バイアグラ」開発・認可・そして買収←イマココ

[スポンサーリンク]

カナダの製薬大手バリアント・ファーマシューティカルズ・インターナショナルは、「女性用バイアグラ」とも呼ばれる女性の性的欲求低下障害の治療薬を手掛ける米製薬会社を買収することで合意したと発表した。買収額は約10億ドル(約1240億円)で、将来の業績に応じて金額を上乗せする。

米製薬会社はスプラウト・ファーマシューティカルズ。同社の治療薬フリバンセリン(商品名アディ)は、米食品医薬品局(FDA)から処方薬としての認可を18日に受けたばかり。ことし10月中旬から米国で販売可能になる見通し(引用:日本経済新聞 8月25日)。

 

いろいろ突っ込みどころが多かったのでついみてしまいました。ざっくりといえば、通称「女性用バイアグラ」が開発され、FDAで認可された途端、会社が「買収」されたとのこと。

 

そもそも女性用バイアグラって?

バイアグラ(Viagra)といえば、ファイザーの開発した勃起不全 (ED)治療薬。 バイアグラは商品名であり、化合物名はシルデナフィル(sildenafil)。既に昨年特許は切れており、後発医薬品(ジェネリック医薬品)が発売されています。もともとは狭心症の薬として開発されていて、めぐりめぐってED治療薬となったのはあまりにも有名な話。最近では作用機序から考えて、肺動脈性高血圧症やその他の用途の薬としても現役で活躍しているそうです(その場合は商品名が異なるらしいですが)。

2015-08-26_14-04-19

 

さて、対して今回の女性用バイアグラって何でしょう?

そもそもバイアグラがあまりにも有名にな薬であるため、男性用と「効能」は全く異なるにしても、名前でなんとなくはわかりますが、キャッチーすぎかも。この薬、冗談かとおもいきや、実際あるんですね。それが以下の化合物フリバンセリン(flibanserin)。商品名はアディ(Addyi)です。

2015-08-26_15-50-48

 

効果の程はわかりませんが、認可されることがすごい。この治療薬も抗うつ剤の候補化合物であったものが、いつのまにか性的欲求低下障害治療薬になったそうです。ちなみに2010年、2013年と申請していましたが、認可が降りず、今回は3度目の正直であったとのこと。

 

承認後、買収?

と、ここまでは良いとして、アディが薬として認可されたのが18日。その2日後に、開発した米国スプラウト・ファーマシューティカルズがカナダのバリアント・ファーマシューティカルズ・インターナショナルに「買収」されちゃったそうです。何たるタイミング。さらに裏話として、実はこの薬を開発したのはドイツのベーリンガーインゲルハイム。2度の認可が織りなかったため、スプラウトに売却したところだったのです。ちょっと複雑ですね。

2015-08-26_16-13-06

 

買収先のバリアント・ファーマシューティカルズ・インターナショナルってあんまり聞いたことないと思いますが、カナダ最大の製薬会社。ここ最近買収に次ぐ買収で世界でも有数の製薬会社に登りつめつつあるらしいです。例えば今年3月に、米サリックス・ファーマシューティカルズを約111億ドル(約1兆3500億円)で買収すると報道されたばかり。調べてみると過去1年間に12件の買収を発表しているらしいです。総額150億ドル超。いやはや。

 

さて、肝心のアディは米国で2015年10月17日に発売されるとのこと。バイアグラと異なり、コトに関係なく毎日寝る前に飲む必要があるそうです。

 

関連動画

 

外部リンク

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 相次ぐ有毒植物による食中毒と放射性物質に関連した事件
  2. 米ファイザー、感染予防薬のバイキュロンを買収
  3. 松本和子氏がIUPACのVice Presidentに選出される…
  4. 国際化学オリンピック2016でもメダルラッシュ!
  5. 梅干し入れると食中毒を起こしにくい?
  6. ノーベル賞親子2代受賞、コーンバーグさんが東大で講演
  7. ヤンセン 新たな抗HIV薬の製造販売承認を取得
  8. MALDI-ToF MSを使用してCOVID-19ウイルスの鼻咽…

注目情報

ピックアップ記事

  1. BASF International Summer Courses 2017  BASFワークショップ2017
  2. ウィッティヒ転位 Wittig Rearrangement
  3. 新しいエポキシ化試薬、Triazox
  4. 114番元素生成の追試に成功
  5. 共有結合性リガンドを有するタンパク質の網羅的探索法
  6. 【詳説】2013年イグノーベル化学賞!「涙のでないタマネギ開発」
  7. 住友化・大日本住友薬、ファイザーと高血圧症薬で和解
  8. 天然物の構造改訂:30年間信じられていた立体配置が逆だった
  9. ギルバート・ストーク Gilbert Stork
  10. 無限の可能性を秘めたポリマー

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2015年8月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

圧力に依存して還元反応が進行!~シクロファン構造を活用した新機能~

第686回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機化学第一研究室(鈴木孝…

第58回Vシンポ「天然物フィロソフィ2」を開催します!

第58回ケムステVシンポジウムの開催告知をさせて頂きます!今回のVシンポは、コロナ蔓延の年202…

第76回「目指すは生涯現役!ロマンを追い求めて」櫛田 創 助教

第76回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第75回「デジタル技術は化学研究を革新できるのか?」熊田佳菜子 主任研究員

第75回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第74回「理想的な医薬品原薬の製造法を目指して」細谷 昌弘 サブグループ長

第74回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第57回ケムステVシンポ「祝ノーベル化学賞!金属有機構造体–MOF」を開催します!

第57回ケムステVシンポは、北川 進 先生らの2025年ノーベル化学賞受賞を記念して…

櫛田 創 Soh Kushida

櫛田 創(くしだそう)は日本の化学者である。筑波大学 数理物質系 物質工学域・助教。専門は物理化学、…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP