[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

シリカゲルの小ネタを集めてみた

[スポンサーリンク]

 

有機化学者が日々使っているシリカゲル。その意外と知っているようで実は知らなかった「小ネタ」を集めてみました。

「シリカゲル」じゃ通じない

 英語でディスカッションしていて、「どうやって精製したんだ?」 「シリカゲルカラムだよ」 「What??」 という経験があります。シリカゲルは “silica-gel” なので、「シリカ -ジェル」 と言うんですよ。

 

“gel” ってなに?

シリカゲルは “silica-gel” なので、「シリカ」の「ゲル」。 「シリカ」は二酸化ケイ素(SiO2)によって構成される物の総称で、様々な結晶型で存在していて ①結晶性シリカ [石英・クリストバル石など]、 ②非結晶性シリカ [シリカゲル・珪藻土など] に分類されます。シリカゲルは、水に分散したシリカを蒸発させて、内部の溶媒を失い空隙を持つ網目構造となったキセロゲル構造をもったものです。

 

シリカゲルの発がん性

ラボに配属されてすぐの頃、先輩に「シリカゲルはアスベストと同じ、石の粉だ。発がん性だから吸うなよ!」と言われ、最近まで(10年近く…)信じてましたが、デマでした(笑)。アスベストと同様の発がん性が知られているのは「結晶性シリカ」であって、非晶質のシリカゲルには発がん性は無いようです。

日本中毒情報センター:② 吸収されないため毒性は無い。ラット経口 LD50 > 5,000 mg/kg

IARC(国際ガン研究機関) :結晶性シリカはGroupe1 「人に対して発ガン性を示す」、非結晶性シリカはGroupe3 「人に対する発ガン性について分類できない」

     (注:「発ガン性が無い」という事は証明できないため「分類できない」と表現しています)

 ただし、長期に大量に吸入するとじん肺症(粉じんを吸入することによって,肺に生じる進行性・不可逆性病変)を起こすと言われてるので、粉が舞うような作業時にはマスクをしようね。

シリカがメタノールに溶ける?

 シリカゲルカラムでメタノール含量を増やしてくと白い粉がごっそり出てきます。「シリカゲルが溶けた!?」と良く言われて、私も長年そう思ってました。ただ、メーカーによって違うのは何でだろ?と不思議に思っていて、メーカーに質問したら「シリカゲルはメタノールに溶けません!」。では、あの溶け出てくる物は何?

それを理解するには、シリカゲルの製法を知る必要があります。シリカゲルは先ず、ケイ酸ソーダ等のケイ酸アルカリ塩を酸で加水分解して、ケイ酸末端が Si=O ではなく Si(OH)2 となるように処理します。これを水で洗って酸を除去。得られるシリカヒドロゾルを高温乾燥によりゲル化して、シリカゲルとなります。
メタノールで溶出してくるのは、炭酸カルシウム等のいわゆるミネラル成分なんです。大量の水を乾燥して飛ばしてるので、硬水を使っている外国製のシリカゲルには多量のミネラルが含まれます。メタノール含量が増えるとミネラルが溶け出して、カラムから出てきます。メタノール含量は30%までが適当で、それ以上にする可能性がある場合には、事前にメタノール洗浄・乾燥したシリカゲル粉を使うべきでしょう。
一方で、日本製のシリカゲルは製造時に軟水を使っているので、ミネラル成分量が少ない。日本で製造されたシリカゲルを使ったカラムでは、メタノール100%で流してもミネラル成分は(気が付くほど)溶出されてきません。メタノール含量を増やす可能性がありそうな高極性化合物の分離には、「日本製」シリカゲルの使用を強くお薦めします。私は扱う物によって使い分けてます
シリカゲル粉がどこで製造された物か、販売元に問い合わせてみると良いでしょう。

シリカの酸性

「シリカゲルの酸性で反応が進行しました」 「このメーカーのシリカゲルは酸性が低くて分離が悪い」 など誠しやかに言われます。でも、シリカゲルは溶けないのにそんなに酸性なのか!? う~ん、実験事実はある訳だし… でもでも、メーカーによって違うってのは何か変だよなぁ。

答えは先ほどと同様に、シリカゲルの製造法にあると思われます。ケイ酸末端を Si=O から Si(OH)2 へと加水分解する際に、大量の鉱酸を用います。酸は水洗により除きますが微量の酸が残ります。洗い方の差によってメーカー毎の酸性差が生じているのでしょう。 (注:「シラノールの酸性が反応を促進」と書いている論文も見られ、筆者はそれを否定はしません。複数メーカーのシリカゲルで追試すれば明確になるでしょう)

最近良く使われる「中性シリカゲル」は、水洗時にきちんとpH調整することで 「中性」 を保証しています。

シリカゲルの種類

色んな性質のシリカゲルが市販されていますが、最近さらに増えてきましたので整理。通常シリカゲルで分離不十分で困った時は試してみましょう。

球状シリカゲル: 表面積大で小型化。均一充填容易で高分離。スケールアップ時の保持性確保・再現性高い。製品中の微粉が少なくいためカラム背圧が低い。

表面処理シリカゲル:シリカゲル表面のシラノールを官能基修飾したシリカゲルです。

  1. NH、DNH  : アミン末端を持つため、塩基性物質に穏やかな吸着を示し良好な分離をします。
  2. DIOL      : 表面のアルコール性水酸基が穏やかな吸着を示すため塩基性物質に対し良好な分離をします。
  3. CO2H、SO3H : 酸性末端を持つため、酸性物質に穏やかな吸着を示し良好な分離をします。
  4. C18, C8, C4  : 表面にアルキル鎖を持つため、脂溶性物質を保持します。水/メタノール系または水/アセトニトリル系での逆相系の固定層として用います。(逆相系では極性物質が先に / 非極性物質が後に溶出します)

TLCは2種類同時に上げる

最後は私の実験テクニック紹介。TLCは通常とアミンの2種類を同時に上げろ!!

アミンシリカの特徴 : 塩基性物質は中性物質と同様の吸着を示し、酸性物質はほとんど上がらない。アルデヒド(時にケトンも)はシリカゲルとイミン形成して原点に留まる。その他の中性物質は、通常シリカゲルとほぼ同じ位置に展開される。呈色試薬と反応するため、UV以外はヨウ素呈色しか使えない。

上記性質を理解していると、反応チェック時に通常とアミンの2枚のTLCを比較することにより、 「どのスポットが目的物っぽいか」 「このスポットは、どういう官能基を持っているか」 「より容易に精製できる条件は」 などと、非常に多くの情報を得る事ができ、反応追跡の予測性が上がります。

アミンシリカの価格は、通常のシリカの2倍程度なので値が張りますが、それでもやる価値アリですよ♪

以上、シリカゲルの小ネタ集でした。今日も皆様の良い分離をお祈り致します。

関連リンク

 

関連記事

  1. TED.comで世界最高の英語プレゼンを学ぶ
  2. 研究室クラウド設立のススメ(経緯編)
  3. 抽出精製型AJIPHASE法の開発
  4. 【21卒イベント 大阪開催2/26(水)】 「化学業界 企業合同…
  5. 光で形を変える結晶
  6. 【技術者・事業担当者向け】 マイクロ波による化学プロセス革新 〜…
  7. 【書籍】化学探偵Mr.キュリー5
  8. 日本薬学会  第143年会 付設展示会ケムステキャンペーン Pa…

注目情報

ピックアップ記事

  1. 分子間エネルギー移動を利用して、希土類錯体の発光をコントロール!
  2. 過酸がC–H結合を切ってメチル基を提供する
  3. カルボカチオンの華麗なリレー:ブラシラン類の新たな生合成経路
  4. ランシラクトンCの全合成と構造改訂-ペリ環状反応を駆使して-
  5. 第51回ケムステVシンポ「光化学最前線2025」を開催します!
  6. ケック ラジカルアリル化反応 Keck Radicallic Allylation
  7. 改正特許法が国会で成立
  8. 第5回プロセス化学国際シンポジウム(ISPC 2026)でポスター発表しませんか!
  9. 接着系材料におけるマテリアルズ・インフォマティクスの活用 -条件最適化編-
  10. 秋の褒章2013-化学

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2012年5月
月 火 水 木 金 土 日
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  

注目情報

最新記事

第64回ケムステVシンポ「データとともに進化する未来の化学」を開催します!

第64回ケムステVシンポの会告を致します。産業技術総合研究所主催の化学シンポジウムシリーズ(…

品質工学とマテリアルズ・インフォマティクス ― 両技術の概要と連携事例

開催概要材料開発やものづくりの現場では、探索すべき組成やプロセス条件が増えるほど組み合わせが爆発…

大学院留学してよかったこと, 悪かったこと【英語, 経済面, オーバードクターに関するお話】

海外の大学で、その大学に籍を置く大学 (院) 生として留学することは「学位留学」と呼ばれたりします。…

光前駆体法の活用によって、ヘプタセンで初の一重項分裂を観測!

第725回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院 理学研究科化学専攻 有機元素化学研究室(山田研…

【スタッフ・寄稿募集】Chem-Stationで、化学を「伝える側」になりませんか?

Chem-Station(ケムステ)は2000年に開設された国内最大の化学ポータルサイトです。大学・…

第17回大津会議―とある参加者の記録―

2026年9月28日~29日に開催された第17回大津会議についての、とある参加者の記録です。この記事…

第17回大津会議 -Otsu Conference- 2026 開催報告 ~新体制で紡ぐ「有機合成の夢」~

第17回大津会議が2026年9月28日(月)〜9月29日(火)びわ湖大津プリンスホテルにて開催されま…

有機合成化学協会誌2026年10月号:医薬品プロセス開発・σ芳香族性・含窒素複素環・メロテルペノイド二量体・高歪み化合物

有機合成化学協会が発行する「有機合成化学協会誌」2026年10月号がオンラインで公開されています。…

時代は水だ! セメントのように水と混ぜるだけで成形・硬化できる「水硬性」高分子

第724回のスポットライトリサーチは、東京科学大学物質理工学院(大塚研究室)博士前期課程2年の徳満玲…

複雑さを設計して、結晶の動きをプログラムする

第723回のスポットライトリサーチは、高知工科大学大学院工学研究科(林研究室) 博士後期課程3年の樋…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP