[スポンサーリンク]

chemglossary

極性表面積 polar surface area

[スポンサーリンク]

極性表面積(polar surface area, PSA)とは、分子表面のうち極性を帯びている部分の面積値のことで、細胞膜透過性に関する医薬構造最適化のために使用される指標。全ての極性原子(主に酸素、窒素、それと結合する水素)の表面総和として定義される。

PSA>140Å2を有する分子は、細胞膜透過性・経口投与性に劣る傾向がある[1]。血液脳関門を透過する分子には、PSA<75Å2が通常必要とされる[2]。あまりに低い値(PSA<90Å2)であり、かつ脂溶性の高い構造(logP > 4)の場合には、非特異的相互作用に基づく毒性リスクが懸念される[3]。

PSAの計算には分子の3次元構造を必要としてきたが、実際にはこれを得ることは難しく、多数の化合物に対して行うと計算コストも肥大化する。トポロジカル極性表面積(Topological Polar Surface Area, tPSA)は、正確な3次元的分子構造なしにPSAを高速に近似計算した値である[4]。ChemDrawなどの化学構造式描画ソフトで計算可能。

参考文献

  1. Veber et al. J. Med. Chem. 2002, 45, 2615. DOI: 10.1021/jm020017n
  2. Hitchcock, S.A.; Pennington, L. D. J. Med. Chem. 2006, 49, 7559. doi:10.1021/jm060642i
  3. Hughes et al. Bioorg. Med. Chem. Lett. 2008, 18, 4872. DOI: 10.1016/j.bmcl.2008.07.071
  4. Ertl, P.; Rohde, B.; Selzer, P. J. Med. Chem. 2000, 43, 3714. DOI: 10.1021/jm000942e

関連書籍

関連リンク

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. UiO-66: 堅牢なジルコニウムクラスターの面心立方格子
  2. 超臨界流体 Supercritical Fluid
  3. トリメチルロック trimethyl lock
  4. コンビナトリアル化学 Combinatorial Chemis…
  5. N-ヘテロ環状カルベン / N-Heterocyclic Car…
  6. 動的コンビナトリアル化学 Dynamic Combinatori…
  7. ソーレー帯 (Soret band) & Q帯 (Q …
  8. O-脱メチル化・脱アルキル化剤 基礎編

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. C-CN結合活性化を介したオレフィンへの触媒的不斉付加
  2. 文化勲章にノーベル賞の天野さん・中村さんら7人
  3. 音声入力でケムステ記事を書いてみた
  4. バリー・ハリウェル Barry Halliwell
  5. プリーストリーメダル・受賞者一覧
  6. 2009年10大化学ニュース
  7. 試薬会社にみるノーベル化学賞2010
  8. 電子実験ノートもクラウドの時代? Accelrys Notebook
  9. イグノーベル賞2023が発表:祝化学賞復活&日本人受賞
  10. 実験・数理・機械学習の融合による触媒理論の開拓

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2017年4月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930

注目情報

最新記事

超塩基に匹敵する強塩基性をもつチタン酸バリウム酸窒化物の合成

第604回のスポットライトリサーチは、東京工業大学 元素戦略MDX研究センターの宮﨑 雅義(みやざぎ…

ニキビ治療薬の成分が発がん性物質に変化?検査会社が注意喚起

2024年3月7日、ブルームバーグ・ニュース及び Yahoo! ニュースに以下の…

ガラスのように透明で曲げられるエアロゲル ―高性能透明断熱材として期待―

第603回のスポットライトリサーチは、ティエムファクトリ株式会社の上岡 良太(うえおか りょうた)さ…

有機合成化学協会誌2024年3月号:遠隔位電子チューニング・含窒素芳香族化合物・ジベンゾクリセン・ロタキサン・近赤外光材料

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年3月号がオンライン公開されています。…

日本化学会 第104春季年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part3

日本化学会年会の付設展示会に出展する企業とのコラボです。第一弾・第二弾につづいて…

ペロブスカイト太陽電池の学理と技術: カーボンニュートラルを担う国産グリーンテクノロジー (CSJカレントレビュー: 48)

(さらに&hellip;)…

日本化学会 第104春季年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part2

前回の第一弾に続いて第二弾。日本化学会年会の付設展示会に出展する企業との…

CIPイノベーション共創プログラム「世界に躍進する創薬・バイオベンチャーの新たな戦略」

日本化学会第104春季年会(2024)で開催されるシンポジウムの一つに、CIPセッション「世界に躍進…

日本化学会 第104春季年会 付設展示会ケムステキャンペーン Part1

今年も始まりました日本化学会春季年会。対面で復活して2年めですね。今年は…

マテリアルズ・インフォマティクスの推進成功事例 -なぜあの企業は最短でMI推進を成功させたのか?-

開催日:2024/03/21 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足の影…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP