[スポンサーリンク]

odos 有機反応データベース

スルホニル保護基 Sulfonyl Protective Group

[スポンサーリンク]

概要

スルホニル基は、フェノールもしくはアミンの保護基として有用である。

アルコールをスルホニル化すれば脱離能が向上し、置換/脱離反応に活性となる。このため、脂肪族アルコール保護の目的に使われるケースは稀である。

一方で保護基の電子求引性を利用し、電子豊富フェノールの酸化防止目的で用いられることは多い。

アミンの保護には有効である。スルホンアミドとして保護すれば、アミンの求核性・塩基性をうまく抑えることができる。特に一級アミンを保護した場合には、スルホンアミドのN-Hプロトンの酸性度が十分高くなる。このため、光延反応アルキル化条件へと伏すことができ、二級アミン合成にも用いることができる。この目的においては、Tsに比べて脱保護容易なNs基がよく用いられる(福山アミン合成)。

置換基(R’)に応じて性質が異なるため、ケースバイケースで上手く選択することが求められる。

基本文献

  • Fischer, E.; Lipschitz, W. Ber. 1915, 48, 360.
  • Bordwell, F. G.; Boutan, P. J. J. Am. Chem. Soc. 1957, 79, 717. DOI: 10.1021/ja01560a059
  • Kampouris, E. M. J. Chem. Soc. 1965, 2651. DOI:10.1039/JR9650002651
  • Kabalka, G. W.; Varma, M.; Varma, R. S.; Srivastava, P. C.; Knapp, F. F. Jr. J. Org. Chem. 1986, 51, 2386. DOI: 10.1021/jo00362a044
  • Lei, X.; Jalla, A.; Shama, M. A. A.; Ctafford, J. M.; Cao, B. Synthesis 2015, 47, 1578. DOI: 10.1055/s-0034-1378867

反応例

<保護基の種類>

スルホニル保護基としては、以下のものが頻用される。

  • メタンスルホニル基 (methanesulfonyl, Ms)
  • p-トルエンスルホニル基 (toluenesulfonyl, Ts)
  • o-ニトロベンゼンスルホニル基 (nitrobenzenesulfonyl, Ns)
  • トリフルオロメタンスルホニル基 (trifluoromethanesulfonyl, Tf)

<保護>

Ms基とTs基では保護時の反応機構が異なる。活性種を効率的に生成する目的で、それぞれ性質の異なる塩基が用いられる。すなわち、Ms保護ではトリエチルアミン、Ts保護ではピリジン(もしくはDMAP-トリエチルアミン)を用いることが一般的である。Ns基もTs基と同様の条件で保護できる。

条件によってはCl置換が併発することがある。その場合には無水物(Ms2O・Ts2O)もしくはMe2N(CH2)nNMe2添加条件[1]を用いると良い。スズアセタール法を用いることで選択的なMs化・Ts化を行なうことも可能。

Tf保護にはTf2Oを用いることが一般的である[2]。塩基はEt3N、もしくはやや高価だが求核性のない2,6-(tBu)2-pyridineなどが候補となる。Tf2Oはエノール保護には適していない事が多く、溶媒にTHFを用いると重合が併発する問題がある。この場合には代替試薬として、より穏和な反応性をもつMcMurry試薬[3]・Comins試薬[4]が用いられる。

<脱保護>

スルホニル基は保護が容易である一方、脱保護は難しく、往々にして厳しめの条件が必要となる。ヒドリド還元、酸性条件、酸化条件、高熱条件に耐性がある一方で、強塩基性条件や1電子還元条件に不安定であるため、これが脱保護条件の選定方針になる。

Ms基については、メチル基C-Hの高い酸性度を活かした強ブレンステッド塩基脱保護条件が知られている[5-8]。この条件下では脂肪族メシラートや他種のスルホンアミドは維持される。

Ts基は一般に脱保護が難しく、熱KOH条件などの厳しい条件が必要となる。一電子還元条件であるMg/MeOH系[9]によって穏和に脱保護条件が行える。ただし本条件下ではTsアミドは脱保護されない。

Tsアミドはより強力な還元条件によって脱保護される。Ti(OiPr)4/TMSCl/Mg系[10]、SmI2/amine/water系[11]、Na-naphthalenide系[12]、Na-anthracenide系[13]などの条件が知られている。

変わり種としては、非常に求核力の強いリンアニオンで処理すると窒素上での求核反応が起こり、結果としてTsアミドの切断が生じることが知られている[14]。

フェノールのTf保護体はEt4NOH条件で簡便に脱保護可能である。メチルエステルやシリルエーテルなどは保持される[15]。

Ns基はチオラートの求核付加によって穏和な条件下脱保護できるため、合成化学的価値が特別に高い (福山アミン合成を参照)。

実験手順

アルコールのトシル化[16]

デシルアルコール(1.58 g、10 mmol)をクロロホルム(10 mL)に溶解し、氷浴(0 ℃)で冷却した後、ピリジン(1.62 mL、20 mmol)を加え、続いて塩化p-トルエンスルホニル (2.85 g、15mmol)を少しずつ撹拌しながら添加。反応は2.5時間で完了。 エーテル(30 mL)および水(7 mL)を添加し、有機層を2N HCl、5%NaHCO3水溶液および水で洗浄し、MgSO4で乾燥させた。 溶媒を減圧下で除去し、粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:2%エーテル/石油エーテル)によって精製し、目的物を油状物(3.06 g、98%)として得た。

参考文献

  1. Yoshida, Y.; Shimonishi, K.; Sakakura, Y.; Okada, S.; Aso, N.; Tanabe, Y. Synthesis 1999, 1633. DOI: 10.1055/s-1999-3561
  2. Hendrickson, J. B.; Bergeron, R. Tetrahedron Lett. 1973, 14, 3839. doi:10.1016/S0040-4039(01)87051-9
  3. (a) Hendrickson, J. B.; Bergeron, B.; Sternbach, D. D. Tetrahedron 1975, 31, 2517. doi:10.1016/0040-4020(75)80263-8 (b) McMurry, J. E.; Scott, W. J. Tetrahedron Lett. 1983, 24, 979. doi:10.1016/S0040-4039(00)81581-6 (c) Scott, W. J. Acc. Chem. Res. 1988, 21, 47. DOI: 10.1021/ar00146a001
  4. Comins, D. L.; Dehghani, A. Tetrahedron Lett. 1992, 33, 6299. doi:10.1016/S0040-4039(00)60957-7
  5. Ritter, T.; Stanek, K.; Larrosa, I.; Carreira, E. M. Org. Lett. 2004, 6, 1513. DOI: 10.1021/ol049514j
  6. Kita, Y.; Toma, T.; Kan, T.; Fukuyama, T. Org. Lett. 2008, 10, 3251. doi:10.1021/ol801111r
  7. Mori, K.; Rikimaru, K.; Kan, T.; Fukuyama, T. Org. Lett. 2004, 6, 3095. doi:10.1021/ol048857e
  8. Naito, H.; Hata, T.; Urabe, H. Org. Lett. 2010, 12, 1228. DOI: 10.1021/ol100086j
  9. (a) Nyasse, B.; Ragnarsson, U. Chem. Commun. 1997, 1017. doi: 10.1039/A701408B (b) Sridhar, M.; Ashokkumar, B.; Narendar, R. Tetrahedron Lett. 1998, 39, 2847. doi:10.1016/S0040-4039(98)00314-1 (c) Alonso, D. A.; Andersson, P. G. J. Org. Chem. 1998, 63, 9455. doi:10.1021/jo9815296 (d) Pasupathy, K. Synlett 2003, 1942. DOI: 10.1055/s-2003-42033
  10. Shohji, N.; Kawaji, T.; Okamoto, S. Org. Lett. 2011, 13, 2626. DOI: 10.1021/ol200740r
  11. Ankner, T.; Hilmersson, G. Org. Lett. 2009, 11, 503. DOI: 10.1021/ol802243d
  12. Ji, S.; Gortler, L. B.; Waring, A.; Battisti, A. J.; Bank, S.; Closson, W. D.; Wriede, P. A. J. Am. Chem. Soc. 1967, 89, 5311. DOI: 10.1021/ja00996a055
  13. Quaal, K. S.; Ji, S.; Kim, Y. M.; Closson, W. D.; Zubieta, J. D. J. Org. Chem. 1978, 43, 1311. DOI: 10.1021/jo00401a005
  14. Yoshida, S.; Igawa, K.; Tomooka, K. J. Am. Chem. Soc. 2012, 134, 19358. DOI: 10.1021/ja309642r
  15. Ohgiya, T.; Nishiyama, S. Tetrahedron Lett. 2004, 45, 6317. doi:10.1016/j.tetlet.2004.06.104
  16. Kabalka, G. W.; Varma, M.; Varma, R. S.; Srivastava, P. C.; Knapp, F. F. Jr. J. Org. Chem. 1986, 51, 2386. DOI: 10.1021/jo00362a044

関連反応

関連書籍

 

外部リンク

関連記事

  1. カンプス キノリン合成 Camps Quinoline Synt…
  2. ウギ反応 Ugi Reaction
  3. ファヴォルスキー転位 Favorskii Rearrangeme…
  4. メチオニン選択的タンパク質修飾反応 Met-Selective …
  5. レフォルマトスキー反応 Reformatsky Reaction…
  6. ボーディペプチド合成 Bode Peptide Synthesi…
  7. アンデルセン キラルスルホキシド合成 Andersen Chir…
  8. 水素化ホウ素ナトリウム Sodium Borohydride

注目情報

ピックアップ記事

  1. 印民間で初の17億ドル突破、リライアンスの前3月期純益
  2. 2007年度ノーベル化学賞を予想!(2)
  3. 基礎から学ぶ機器分析化学
  4. ネコがマタタビにスリスリする反応には蚊除け効果があった!
  5. フィッシャー・スペイア エステル合成 Fischer-Speier Esterification
  6. なぜあなたは論文が書けないのか
  7. 有機EL organic electroluminescence
  8. 【データケミカル】正社員採用情報
  9. Nature Chemistry誌のインパクトファクターが公開!
  10. 塩基の代わりに酸を使うクロスカップリング反応:X線吸収分光が解き明かすルイス酸の役割

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年7月
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

注目情報

最新記事

タリンにいってきました BOS2026 前編

みなさんこんにちは。ケムステ代表です。久々にまともに記事を書きます。さて、表題の通り、6月後…

第6回鈴木章賞授賞式&第10回ICReDD国際シンポジウム開催のお知らせ

計算科学、情報科学、実験科学の3分野融合による新たな化学反応開発に興味のある方はぜひご参加ください!…

条件の「前後」も実験条件である【プロセス化学者のつぶやき】

前回まで1. 設定温度と系内の実温度のお話2. 温度値をどう判断するか3. 反応操作をし…

そのpH、“本当にその場所”の値ですか?ニードル式pHセンサーを使ってみた!

突然ですが、「培養の再現性がなんか悪い」「同じ条件のはずなのに結果がズレる」といった経験はあ…

「骨格編集」×「ナノカーボン合成」〜ナノカーボン合成の新戦略を実証〜

第719回のスポットライトリサーチは、名古屋大学大学院工学研究科(忍久保研究室)博士後期課程2年の平…

【書評】立体化学 はじめの一歩

立体化学は,分子の三次元構造を理解するための重要な分野であり,有機化学や…

水のシミュレーション入門 — 水分子を計算機の中でどう”描く”か —

身近なのに、計算機にとって手強い"水"。本記事では、点電荷モデルから機械学習まで、その"描き方"の進…

◆◇◆◇ 第36回フォーラム・イン・ドージン開催のご案内 ◆◇◆◇

同仁化学研究所が熊本から世界へ情報発信するフォーラム・イン・ドージンの開催ご案内です。今年は『な…

『力』による円偏光発光のon/off制御を単一分子レベルで実現

第718回のスポットライトリサーチは、東京科学大学 物質理工学院(相良研究室)博士後期課程2年の野中…

数日かかっていた反応機構解析を、わずか数分に!

機械学習ポテンシャルが変える計算化学の現在近年、DFT計算による反応機構解析は広く行われるよ…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP