[スポンサーリンク]

chemglossary

薄層クロマトグラフィ / thin-layer chromatography (TLC)

[スポンサーリンク]

薄層クロマトグラフィ(Thin-Layer Chromatography:TLC)とは、吸着剤を薄膜状に固定した薄層プレートを用いたクロマトグラフィのことです。

薄層プレートの一端を溶媒に浸すと,吸着剤の間隙を伝い、溶媒が上方に移動してきます(毛細管現象)。プレート上に試料物質が存在すると、溶媒移動に引きずられるように試料も移動してきます(展開するといいます)。このとき、固定層(吸着剤)への吸着度合いと、移動層(溶媒)への親和性の差異・バランスにより、試料が移動する距離(Rf値)が異なります。この原理を利用し、有機化合物の分離・同定を行います。特に有機合成では、吸着剤としてはシリカゲルやアルミナ、セルロース、展開溶媒としては酢酸エチル/ヘキサン系、ジクロロメタン/メタノール系などがよく用いられます。

TLCのスポットの打ち方と展開方法(出典:silicycle.com)

TLCのスポットの打ち方と展開方法(出典:silicycle.com)

TLCは反応系中を追跡するための「目」そのものになる、簡便・古典的ではあるが最重要な分析手法です。TLC分析が下手な人は、反応をしっかりみていない、と怒られます。

反応を追跡する際、通常は左に原料、右に反応混合物、中央に原料と反応混合物をTLCプレートにスポットする。中央のスポットは

  • 展開の仕方によっては曲がって展開することがあるので、原料と反応混合物が同様のスポットであるときがわからない場合がある
  • 反応混合物の溶媒によってスポットがずれることがあり、見逃さないためようにする
  • スポットを打った瞬間反応し、第三のスポットがみえる場合がある

などの理由で極めて重要です。

スポットの確認は、化合物に色がある場合は目視できるが、無色透明の場合がほとんどであり、そのままでは見えません。そのため、①UVランプを用いる ②TLCステイン(stain)をもちいる方法が主に知られています。TLCstainは様々なものが知られており、化合物によって変える、色々なものでチェックすることをオススメします。

2000px-Tlc_stains

 

 

関連文献

関連書籍

関連リンク

 

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. 波動-粒子二重性 Wave-Particle Duality: …
  2. 高速液体クロマトグラフィ / high performance …
  3. 液体キセノン検出器
  4. クリックケミストリー / Click chemistry
  5. mRNAワクチン(メッセンジャーRNAワクチン)
  6. MOF-5: MOF の火付け役であり MOF の代名詞
  7. 定量PCR(qPCR ; quantitative PCR)、リ…
  8. アルカロイド alkaloid

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. メカノケミストリーを用いた固体クロスカップリング反応
  2. 合同資源上瀑工場
  3. 第18回ケムステVシンポ『”やわらか電子材料” 有機半導体の世界』を開催します!
  4. 文具に凝るといふことを化学者もしてみむとてするなり⑰:MacBook Airの巻
  5. Dead Endを回避せよ!「全合成・極限からの一手」③
  6. 宇宙で結晶化!? 創薬研究を支援する結晶生成サービス「Kirara」
  7. トレハロースが癒着防止 手術に有効、東大など発表
  8. 藤原・守谷反応 Fujiwara-Moritani Reaction
  9. 博士の学位はただの飾りか? 〜所得から見た学位取得後のキャリア〜
  10. パラトーシスを誘導する新規化合物トリプチセンーペプチドハイブリッド(TPHs)の創製

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2007年10月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031  

注目情報

最新記事

ベテラン研究者 vs マテリアルズ・インフォマティクス!?~ 研究者としてMIとの正しい向き合い方

開催日 2024/04/24 : 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足…

第11回 慶應有機化学若手シンポジウム

シンポジウム概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大…

薬学部ってどんなところ?

自己紹介Chemstationの新入りスタッフのねこたまと申します。現在は学部の4年生(薬学部)…

光と水で還元的環化反応をリノベーション

第609回のスポットライトリサーチは、北海道大学 大学院薬学研究院(精密合成化学研究室)の中村顕斗 …

ブーゲ-ランベルト-ベールの法則(Bouguer-Lambert-Beer’s law)

概要分子が溶けた溶液に光を通したとき,そこから出てくる光の強さは,入る前の強さと比べて小さくなる…

活性酸素種はどれでしょう? 〜三重項酸素と一重項酸素、そのほか〜

第109回薬剤師国家試験 (2024年実施) にて、以下のような問題が出題されま…

産総研がすごい!〜修士卒研究職の新育成制度を開始〜

2023年より全研究領域で修士卒研究職の採用を開始した産業技術総合研究所(以下 産総研)ですが、20…

有機合成化学協会誌2024年4月号:ミロガバリン・クロロププケアナニン・メロテルペノイド・サリチル酸誘導体・光励起ホウ素アート錯体

有機合成化学協会が発行する有機合成化学協会誌、2024年4月号がオンライン公開されています。…

日本薬学会第144年会 (横浜) に参加してきました

3月28日から31日にかけて開催された,日本薬学会第144年会 (横浜) に参加してきました.筆者自…

キシリトールのはなし

Tshozoです。 35年くらい前、ある食品メーカが「虫歯になりにくい糖分」を使ったお菓子を…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP