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化学者のつぶやき

【書籍】アリエナイ化学実験の世界へ―『Mad Science―炎と煙と轟音の科学実験54』

今回紹介する書籍『Mad Science―炎と煙と轟音の科学実験54』は以前に取り上げた『Illustrated guide to home chemistry experiments』と同じく、Makeシリーズの一環。DIYの化学実験指南書です。フルカラー写真をふんだんに使ったビジュアルメインの構成で、眺めるだけでもワクワクしてしょうがない感じの本です。

・・・しかし本書は、真っ先に頭の中に思い描かれるような実験書とは、全然違っています。

もっともわかりやすい違いは何か?

それは「掲載されてる実験が激アブナイものばかり」という点にあります。

なにせサブタイトルからして『炎と煙と轟音の科学実験54』。そこはダテじゃありません。


果たしてどれだけヤバイ内容なのか?・・・これは「百聞は一見に如かず」。本書に”実際に”書かれてるアリエナイ例を、ご紹介しましょう。

その①: 危険過ぎる製塩法

「塩素ガスと液状ナトリウムから食塩を合成して、それをポップコーンの味付けに使う実験」がまず最初に記されています。

・・・Σ(゚д゚) エッ!? ナニ?何だって?・・・(つд⊂)ゴシゴシ・・・いやいや見間違いではないです。確かにそう書いてある。

説明文からして狂っているとしか・・・いやいや、真実はいつもたった一つ!

動画を最後まで見れば分かる・・・見れば分かるんだよ!!!

おいおいおいおい!!!

こんなの本に書いて大丈夫か? 大 丈 夫 な の か ??? ― 「大丈夫だ、問題ない」

その②: 水銀モーター

「水銀に電気を流して電動モーターにする」という実験。

・・・(゚Д゚ )ハァ?

まぁまぁ、こちらも一見に如かずであります。

水銀使い過ぎだろ!!!

よく読むと15kgとか書いてあるんですが・・・家庭でどころか実験室でもやりたくないぐらいに、怪しげな香りが立ち込めております。
それに追い打ちをかけるかのごとく、囲み記事として「非致死性バージョンの作りかた」とか書いてあるじゃないですか!

こんなこと書いて本当に 大 丈 夫 な の か !!?? ― 「大丈夫だ、問題ない」

そんな著者について

MadScience_2
(写真:Wired)

著者Theodore Gray氏は、かのWolfram Research社(数式処理ソフトMathematicaの開発で有名)の共同創設者。なので本業は数理屋さんです。

しかし大学では化学の学位を取得し、趣味(Hobby)としての化学を楽しんでる人物でもあります。

そのマニアっぷりはまったくハンパなく、木製テーブル型の元素周期表を作ってしまったり。

MadScience_6

これがあまりにハイクオリティなゆえ、2002年にイグノーベル化学賞を受賞してしまったり。

またさらには、Periodictable.comというビジュアル元素周期表をウェブ上に作り上げてしまったり。

最近ではiPad用元素周期表アプリ「The Elements」を作って公開してたり・・・。

なんなんだコイツは!!まさに「アリエナイ」ほどに多彩な才能を持つ傑物といえましょう。

そんな彼が執筆しているのがこの『Mad Science』ですから、楽しくないわけがありません!

Gray氏は、まえがきでいきなりこう語っています。

「この本には、全ての実験を安全に行うために必要なことが書いてあるわけではない!」

・・・すげぇ。開き直りすぎです。さらには、こうも言っています。

良きにつけ悪しきにつけ、科学実験の炎や煙や轟音こそが、多くの科学者が科学者になろうとするそもそものきっかけを与えたのである。その面白さは他にたとえようがない。
・・・
「よい子は、おうちでこれをやってはいけません」。これが警告になるか、誘惑になるかは本人の性格次第である。私はこういう言い方が大嫌いだ。言われた方は絶望的になる。
・・・
この本の実験の中には、狂っているとしか思えないものもある。どう考えても狂っているものが。なぜみんなにとって狂っているものが、私にはそうでないのか。
それは、人はそれぞれ才能も、経験も、友人も、持っている道具も違うからだ。

「アブナイ実験こそが子供を惹きつける」―いやぁ実のところこの考え方には、筆者はとても共感できるのですよ。

Quark刊行の実験書とか読みながら、お手製ガスバーナー作って、いろんなものを燃やして(;´Д`)ハァハァ・・・そんな子供時代がボクにもありました。振り返ってみると、そんなところに、化学者として生きようと思った原体験がある気もするんですよね。

しかし今のボクは、教育者たる肩書きをどういうわけか持ってしまい。おかげで危ない実験を勧めるのが難しい立場となってしまい。近くに人気のない広い場所もないため、自分だけでの実践も出来ず。
さらに今はいろいろうるさいですよね、学生と一緒になって危ないのやろうとすると。逐一やってくるクレーマーをしてペアモンゲットだぜ!」などとおちょくってみるのも悪くないかなぁと考え・・・いやゲフンゲフン、これ以上はやめておきましょう・・・お客様たるご両親は神様ですよモチのロンのこと。

・・・まぁ、いずれお金を稼いで、家に自分用の実験室でも作りますかな(笑)

いずれにせよ、本を眺め、動画を眺め、だけでも十分楽しめる書籍です。かなーり刺激的内容ですよ。化学GEEKの皆さんにとっては、必読バイブルかと!(笑)

是非、お手元に一冊いかが!?

関連動画

塩素酸カリウムとグミキャンディが激しく化学反応する動画。『Mad Science』には過塩素酸カリウム+オレオでロケット燃料を作る方法が書かれています。そちらもこんな感じなんでしょう、きっと・・・。

 

関連書籍

 

関連リンク

イグノーベル賞受賞者が語る、エクストリーム実験の面白み

Theodore Gray – Wikipedia

Gray Matter
セオドア・グレイ氏がポピュラー・サイエンス誌に連載している化学コラム。『Mad Science』の元になっている。

こんなのアリ?な科学実験連発!『Mad Science』 (Gizmodo Japan)

自家松戸菜園 – 書評 – Mad Science 炎と煙と轟音の科学実験54(404 Blog Not Found)

夏休みの自由研究に「Mad Science――炎と煙と轟音の科学実験54」はいかが? (Slashdot.jp)

 

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cosine

博士(薬学)。Chem-Station副代表。現在国立大学教員として勤務中。専門は有機合成化学、主に触媒開発研究。 関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。 素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

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コメント

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  • コメント (9)

  1. 刺激的な一文「この本には、全ての実験を安全に行うために必要なことが書いてあるわけではない!」"@chemstation: 【書籍】アリエナイ化学実験の世界へ―『Mad Science』

  2. TA「ああ、やっぱり今回も駄目だったよ。あいつは人の話を聞かないからな」

  3. 「掲載されてる実験が激アブナイものばかり」

  4. ポップコーン動画を見て腹筋崩壊した。原書の副題が邦訳版に含まれてないのはマズイだろ>"You Can Do at Home–But Probably Shouldn't"

    • pho
    • 2010年 10月 05日

    ポップコーン関係なさ過ぎ。燃えてるし。こういう本こそ動画付きの電子版を出すべきだと思う。

  5. エクストリーム化学実験 《見てる》【書籍】アリエナイ化学実験の世界へ―『Mad Science』 – 化学者のつぶやき -Chem-Station-

  6. この本を読んで「やってみた」動画を投稿しようもんならきっと逮捕されちゃうんだろうな

  7. 「アリエナイ科学の教科書」の時に言ってあげればよかったのに。

  8. 文章だけで笑えるw「塩素ガスと液状ナトリウムから食塩を合成して、それをポップコーンの味付けに使う実験」

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