[スポンサーリンク]

天然物

ヒストリオニコトキシン histrionicotoxin

[スポンサーリンク]

アルキンとは、アセチレン(HC≡CH)のように、炭素間三重結合を持った有機化合物の総称です。生理活性を持つ天然化合物に、それほど多くのアルキン(RC≡CR)化合物は知られていません。末端アルキン(RC≡CH)となると、さらに数えるほどのいくつかしかありません(総説ひとつ書けるくらいはあります)。

末端アルキンの構造を持った天然化合物に少数しか存在しない例外として、ヒストリオニコトキシン(Histrionicotoxin)が有名です。この成分は南米に生息するハイユウヤドクガエル(Dendrobates histrionicus )という名の両生類から単離されています。

ヒストリオニコトキシンは合成ターゲットとしても興味深い化学構造を持ち、いくつかの経路で全合成が達成されています。最近の例では、対称な原料から出発して短工程で達成した全合成[1]が、とくに高く評価されています。

 

GREEN9991.PNG

論文[1]の他いくつかの経路で全合成が達成されている

 

ヒストリオニコトキシンは神経毒として作用します。ヒストリオニコトキシンの標的タンパク質はアセチルコリン受容体チャネルです[2]。ヒストリオニコトキシンの作用部位とアセチルコリンの受容部位は異なり、アロステリックに影響を与えているとされます。

GREEN9992.PNG

アセチルコリン受容体チャネルの立体構造

結晶構造解析データをPDB(Protein Data Bank)より出力

 

参考論文

  1.  “A Concise Total Synthesis of dl-Histrionicotoxin” Maheswaran S. Karatholuvhu et al. J. Am. Chem. Soc. 2006 DOI: 10.1021/ja065015x
  2. “The reaction site of a non-competitive antagonist in the delta-subunit of the nicotinic acetylcholine receptor” W Oberthur et al. Eur. Mol. Biol. Organ. 1986 

 

関連書籍

 

Green

投稿者の記事一覧

静岡で化学を教えています。よろしくお願いします。

関連記事

  1. 塩化ラジウム223
  2. IGZO
  3. アデノシン /adenosine
  4. オーラノフィン (auranofin)
  5. 亜酸化窒素 Nitrous oxide
  6. 化学者のためのエレクトロニクス講座~化合物半導体編
  7. トロンボキサンA2 /Thromboxane A2
  8. コエンザイムQ10 /coenzyme Q10

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. C-H活性化触媒を用いる(+)-リゾスペルミン酸の収束的合成
  2. タミフルの新規合成法
  3. Heterocyclic Chemistry
  4. E-mail Alertを活用しよう!
  5. インフルエンザ治療薬「CS‐8958」、09年度中にも国内申請へ
  6. 国際化学オリンピック2023が開催:代表チームへの特別インタビュー
  7. ヒト胚研究、ついに未知領域へ
  8. カガクをつなげるインターネット:サイエンスアゴラ2017
  9. ケムステV年末ライブ & V忘年会2020を開催します!
  10. サミュエル・ダニシェフスキー Samuel J. Danishefsky

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2012年5月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  

注目情報

最新記事

フローマイクロリアクターを活用した多置換アルケンの効率的な合成

第610回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院理学研究科(依光研究室)に在籍されていた江 迤源…

マリンス有機化学(上)-学び手の視点から-

概要親しみやすい会話形式を用いた現代的な教育スタイルで有機化学の重要概念を学べる標準教科書.…

【大正製薬】キャリア採用情報(正社員)

<求める人物像>・自ら考えて行動できる・高い専門性を身につけている・…

国内初のナノボディ®製剤オゾラリズマブ

ナノゾラ®皮下注30mgシリンジ(一般名:オゾラリズマブ(遺伝子組換え))は、A…

大正製薬ってどんな会社?

大正製薬は病気の予防から治療まで、皆さまの健康に寄り添う事業を展開しています。こ…

一致団結ケトンでアレン合成!1,3-エンインのヒドロアルキル化

ケトンと1,3-エンインのヒドロアルキル化反応が開発された。独自の配位子とパラジウム/ホウ素/アミン…

ベテラン研究者 vs マテリアルズ・インフォマティクス!?~ 研究者としてMIとの正しい向き合い方

開催日 2024/04/24 : 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足…

第11回 慶應有機化学若手シンポジウム

シンポジウム概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大…

薬学部ってどんなところ?

自己紹介Chemstationの新入りスタッフのねこたまと申します。現在は学部の4年生(薬学部)…

光と水で還元的環化反応をリノベーション

第609回のスポットライトリサーチは、北海道大学 大学院薬学研究院(精密合成化学研究室)の中村顕斗 …

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP