[スポンサーリンク]

J

ジュリア・コシエンスキー オレフィン合成 Julia-Kocienski Olefination

[スポンサーリンク]

概要

従来型のJuliaオレフィン化は求核付加~脱離の全行程に3段階を要し、また毒性の高いアマルガムを使う必要があるなどの点で使いにくい。

スルホン部芳香環をチューニングすることによって、アマルガムを使わず、脱離反応までを一段階で行える改良法がのちに開発された。 原型はE/Z選択性に難があったが、のちにKocienskiらによって改良がなされ、PT(phenyltetrazole)-スルホンを用いる条件が確立された(Julia-Kocienskiオレフィン化)。本法では高いE選択性にてオレフィンが得られる。

 

文献

<Review>

 

反応機構

電子不足芳香環への分子内芳香族求核置換反応→脱離(Smiles転位)が鍵。

julia_kocienski_2

反応例

ent-Lepadin Fの合成

julia_kocienski_3

 

実用的なメチレン化が行える試薬[1]

julia_kocienski_4

(+)-Ambruticinの合成[2]

julia_kocienski_6

フルオロアルケン類の合成[3]

julia_kocienski_7

実験手順

Julia-Kocienski法の実施例[4]

julia_kocienski_5

窒素雰囲気下-55℃に冷却したPT-スルホン(2.80 g, 10.0 mmol)のDME溶液(40mL)に、KHMDS(2.74g, 80% by weight, 11.0 mmol)のDME溶液(20 mL)をカニューラを使用して10分かけて滴下する。黄橙色の溶液は70分攪拌すると、その間に暗茶色へと変化していく。シクロヘキサンカルボクスアルデヒド(1.67g, 15.0 mmol)を5分かけて滴下し、-55℃にて1時間攪拌すると、溶液はその間に明黄色に変化していく。冷却バスを除き、室温下でovernight攪拌したのち、水(5 mL)を加えて1時間攪拌する。混合溶液をジエチルエーテル(150 mL)で希釈し、水(200 mL)で洗浄する。水層をジエチルエーテル(30 mL x 3)で抽出し、集めた有機層を水(50 mL x 3)、飽和食塩水(50 mL)で洗浄する。硫酸マグネシウムで有機層を乾燥したのち、溶媒を減圧留去すると淡黄色の油状物質が得られる。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン)、引き続きクーゲルローア蒸留(bp 180℃/15 mmHg)で精製すると目的のアルケンが無色透明の油状物質として得られる(1.18 g, 7.11 mmol, 71%)。

 

参考文献

  1. (a) Ando, K.; Kobayashi, T.; Uchida, N. Org. Lett. 201517, 2554. DOI: 10.1021/acs.orglett.5b01049 (b) Aissa, C. J. Org. Chem. 2006, 71, 360. DOI: 10.1021/jo051693a
  2. Liu, P.; Jacobsen, E. N. J. Am. Chem. Soc. 2001123, 10772. DOI: 10.1021/ja016893s
  3. Zhao, Y.; Huang, W.; Zhu, L.; Hu, J. Org. Lett. 201012, 1444. DOI: 10.1021/ol100090r
  4. Blakemore, P, R.; Cole, W. J.; Kocienski, P. J.; Morley, A. Synlett 1998, 26. doi:10.1055/s-1998-1570

 

関連書籍

 

外部リンク

cosine

投稿者の記事一覧

博士(薬学)。Chem-Station副代表。国立大学教員→国研研究員にクラスチェンジ。専門は有機合成化学、触媒化学、医薬化学、ペプチド/タンパク質化学。
関心ある学問領域は三つ。すなわち、世界を創造する化学、世界を拡張させる情報科学、世界を世界たらしめる認知科学。
素晴らしければ何でも良い。どうでも良いことは心底どうでも良い。興味・趣味は様々だが、そのほとんどがメジャー地位を獲得してなさそうなのは仕様。

関連記事

  1. ブルック転位 Brook Rearrangement
  2. ショッテン・バウマン反応 Schotten-Baumann Re…
  3. ピナー反応 Pinner Reaction
  4. ブレデレック イミダゾール合成 Bredereck Imidaz…
  5. バートン脱アミノ化 Barton Deamination
  6. ブラン環化 Blanc Cyclization
  7. エピスルフィド合成 Episulfide Synthesis
  8. ダニシェフスキー・北原ジエン Danishefsky-Kitah…

コメント、感想はこちらへ

注目情報

ピックアップ記事

  1. 【速報】2018年ノーベル化学賞は「進化分子工学研究への貢献」に!
  2. 三井化学、「環状オレフィンコポリマー(商標:アペル)」の生産能力増強を決定
  3. ノーベル化学賞、米・イスラエルの3氏に授与
  4. YMC研究奨励金当選者の声
  5. クロロラジカルHAT協働型C-Hクロスカップリングの開発
  6. 【産総研・触媒化学融合研究センター】新卒・既卒採用情報
  7. NHC銅錯体の塩基を使わない直接的合成
  8. マラリア治療の新薬の登場を歓迎する
  9. 炭素をつなげる王道反応:アルドール反応 (5/最終回)
  10. ビジネスが科学を待っている ー「バイオ」と「脱炭素」ー

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2015年6月
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
2930  

注目情報

最新記事

5/15(水)Zoom開催 【旭化成 人事担当者が語る!】2026年卒 化学系学生向け就活スタート講座

化学系の就職活動を支援する『化学系学生のための就活』からのご案内です。化学業界・研究職でのキャリ…

フローマイクロリアクターを活用した多置換アルケンの効率的な合成

第610回のスポットライトリサーチは、京都大学大学院理学研究科(依光研究室)に在籍されていた江 迤源…

マリンス有機化学(上)-学び手の視点から-

概要親しみやすい会話形式を用いた現代的な教育スタイルで有機化学の重要概念を学べる標準教科書.…

【大正製薬】キャリア採用情報(正社員)

<求める人物像>・自ら考えて行動できる・高い専門性を身につけている・…

国内初のナノボディ®製剤オゾラリズマブ

ナノゾラ®皮下注30mgシリンジ(一般名:オゾラリズマブ(遺伝子組換え))は、A…

大正製薬ってどんな会社?

大正製薬は病気の予防から治療まで、皆さまの健康に寄り添う事業を展開しています。こ…

一致団結ケトンでアレン合成!1,3-エンインのヒドロアルキル化

ケトンと1,3-エンインのヒドロアルキル化反応が開発された。独自の配位子とパラジウム/ホウ素/アミン…

ベテラン研究者 vs マテリアルズ・インフォマティクス!?~ 研究者としてMIとの正しい向き合い方

開催日 2024/04/24 : 申込みはこちら■開催概要近年、少子高齢化、働き手の不足…

第11回 慶應有機化学若手シンポジウム

シンポジウム概要主催:慶應有機化学若手シンポジウム実行委員会共催:慶應義塾大…

薬学部ってどんなところ?

自己紹介Chemstationの新入りスタッフのねこたまと申します。現在は学部の4年生(薬学部)…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP