[スポンサーリンク]

化学者のつぶやき

Reaxys体験レポート反応検索編

[スポンサーリンク]

前回、Reaxys体験レポート/ログイン、物質検索編として、エルゼビア社の合成反応データベースReaxys(リアクシス)を利用して物質検索を行ってみました。今回は、Reaxys(リアクシス)の主要目的である、合成プランニングツールとしての機能を確認するため、まずはAからBができるという反応検索を行ってみる事にしましょう。

前回と同じように、Reaxys(リアクシス)にログインした後、 今度は【Substances and Properties】タブではなく【Reactions】タブをクリックして、Double click this frame and draw reaction queryと書いてある白いフレームを指示通りダブルクリックすると、Java applettが立ち上がります。

 

構造式を書いてみるーMarvinSketchー

構造式描画ソフトにはMarvinSketchというJava applettを利用しているようです。使い方は比較的簡単で、テンプレートも豊富であり、元素の色も奇麗に分かれてくれるので見やすいと言った印象が有りました。ただし、Java applettなので少し安定性にかける気がします*。企業内データベース等によく使われているフリーソフトのISIS/drawにも変更できるようでした。とりあえず、今回はMarvinSketchで化合物を描いてみる事にしました。検索した反応はフェニルボロン酸とクロロベンゼンの鈴木カップリング反応タイプの反応で、ビフェニル化合物を合成する反応です。

reaxys15.png

簡単に構造式を描く事ができる

 

*構造式を書いている途中にブラウザがフリーズしました。Firefoxを使っていたのですが、Java applettとの相性が悪いのかもしれません。そのためSafariに変更してもう一度作成しました。

 

反応検索を行うーReactions, as drawnー

描いた構造式や反応をクエリー(query)と呼んでいます。MarvinSketch上であるクエリーを作ったら【Transfer Query】ボタンでメイン画面に移動させます。メイン画面に移動させたら、今回まずはAs drawn (構造式そのままで)検索をしてみました。検索ボタンを押して検索!検索時間は前回の物質検索と同様に10秒以下で検索結果は2件みつかりました。

reaxys16.png

クエリーをトランスファーして検索する

 

reaxys17.png

検索結果: as drawn

 

2件しか発見できていないと思いきや、出発物質と生成物が全く同じ物は1件にまとめられているようです。収率がトップにあり、続いてその反応条件文献が記載されていました。このデータを見てみるとPd(dppb)Cl2のような、そこそこ嵩高い配位子は27%、NHCとPCy3という嵩高い配位子を用いると収率が向上するようです。さらには【More】と赤字で記載されている部分をクリックするとさらに3件反応条件が現れ、塩基としてK3PO4、触媒にPd(OAc)2、配位子としてPtBu2Adamantylのような嵩高く電子豊富な配位子を用いると、収率88%で化合物が得られ、さらにNHCの場合よりも低い温度、短い時間で反応が進行するようです(130℃, 32 h v.s 100℃, 12 h)。ここまで検索した時点で理解できる反応条件を表示してくれるのはすばらしいと思います。もちろん元文献にも容易にオンラインジャーナルを通じてアクセスする事ができます。次に、検索前に戻り、今度はas drawn検索でなく、structure on all atoms (この骨格を有する反応式)で検索してみる事にしました。

 

反応検索を行うーReactions, structure on all atoms ー

検索したところ2364件見つかりました。さすがノーベル化学賞候補にあげられる鈴木カップリング反応です。今回は描いた骨格をもった構造すべてですので、図のように4-アセチルボロン酸のようなボロン酸も検索にヒットします。この中でも上記と同様に全く同じ反応剤、生成物は文献や条件が異なっていても1件ですので、反応式の中に様々な条件が羅列されています。さすがに多すぎるのでさらにフィルターをかけて件数を減らしてみる事にしました。フィルターをかける方法はかなりの種類があるようで、これもReaxysの優れた特徴の一つであるといってもよいと思います。

reaxys18.png

検索結果: structure on all atoms

 

 

フィルターをかけるー検索結果を絞るー

フィルターをかけるには下図に示す検索結果の右にあるFilter機能を使います。見てわかりますように収率や反応形式、溶媒やステップ数、ジャーナルタイトル、出版年などを選ぶ事ができます。
reaxys19.png
多彩なフィルター機能が搭載されている

例えば、収率(yield)タブをクリックすると、図のように収率の分布を見る事ができます。この中から同じ反応形式でも収率がよい反応条件を選択する事ができます。また、収率が悪いものでも、反応条件が問題ない(収率がよいものとほぼ同等である)場合、反応が進行しづらい出発物質などを絞ることができるでしょう。今度は、溶媒(solvent)タブをクリックすると、その反応形式に使われている溶媒の分布を見る事ができます。ここから、その反応形式の一般的な溶媒を選択したり、逆に溶媒検討を行う時にメジャーやマイナーな溶媒をセレクトするということにも利用できます。もちろん、最もメジャーな物を見つけたい場合、収率がよいもの、触媒や溶媒も多くの人が使っているものを選べば”知られている”最適条件の結果をフィルターにより多くの結果から絞る事も出来ます。これはScifinderなどの他のデータベースでは見られなかった、データが統合的に整理されているからこそできる有用な機能ではないでしょうか。

reaxys21.png

フィルター機能によって条件の分布を確認する事ができる

reaxys20.png

検索結果のメイン画面(フィルターを利用)

また、良く引用されている文献や、出版年、収率などによって並び替え(sort)もできます。もちろんそれらの履歴は下図のように、メイン画面上部に記載されていて、簡単にフィルターや並び替えを書ける前に戻る事ができます。
reaxys22.png

簡単に元の結果に戻る事ができる

というわけで、他にも多機能ではありますが、反応検索とフィルター、並び替えのみに注目して、Reaxysの機能を紹介してみました。次回は外部へのリンクと、化合物の合成計画を立てる方法等について説明してみる事にします。

関連動画

エルゼビアによるreaxysの紹介動画

外部リンク

Avatar photo

webmaster

投稿者の記事一覧

Chem-Station代表。早稲田大学理工学術院教授。専門は有機化学。主に有機合成化学。分子レベルでモノを自由自在につくる、最小の構造物設計の匠となるため分子設計化学を確立したいと考えている。趣味は旅行(日本は全県制覇、海外はまだ20カ国ほど)、ドライブ、そしてすべての化学情報をインターネットで発信できるポータルサイトを作ること。

関連記事

  1. 光照射下に繰り返し運動をおこなう分子集合体
  2. 天然物の生合成に関わる様々な酵素
  3. ポンコツ博士の海外奮闘録⑨ 〜博士,Yosemiteに行く〜
  4. Reaxys Prize 2012受賞者決定!
  5. 薬が足りない!?ジェネリック医薬品の今
  6. MRS Fall Meeting 2012に来ています
  7. 有機アジド(3):アジド導入反応剤
  8. コンプラナジンAの全合成

注目情報

ピックアップ記事

  1. 最先端バイオエコノミー社会を実現する合成生物学【対面講座】
  2. アザボリンはニ度異性化するっ!
  3. ビタミンと金属錯体から合成した人工の酵素
  4. エッフェル塔
  5. サリドマイドの治験、22医療機関で 製薬会社が発表
  6. 「糖化学ノックイン」領域紹介PVを制作頂きました!
  7. 2016年1月の注目化学書籍
  8. 化学者のランキング指標「h-index」 廃止へ
  9. 光触媒反応用途の青色LED光源を比較してみた【2020/8/11更新】
  10. チオール架橋法による位置選択的三環性ペプチド合成

関連商品

ケムステYoutube

ケムステSlack

月別アーカイブ

2009年8月
 12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31  

注目情報

最新記事

有馬温泉で鉄イオン水溶液について学んできた【化学者が行く温泉巡りの旅】

有馬温泉の金泉は、塩化物濃度と鉄濃度が日本の温泉の中で最も高い温泉で、黄褐色を呈する温泉です。この記…

HPLCをPATツールに変換!オンラインHPLCシステム:DirectInject-LC

これまでの自動サンプリング技術多くの製薬・化学メーカーはその生産性向上のため、有…

MEDCHEM NEWS 34-4 号「新しいモダリティとして注目を浴びる分解創薬」

日本薬学会 医薬化学部会の部会誌 MEDCHEM NEWS より、新たにオープン…

圧力に依存して還元反応が進行!~シクロファン構造を活用した新機能~

第686回のスポットライトリサーチは、北海道大学大学院理学研究院化学部門 有機化学第一研究室(鈴木孝…

第58回Vシンポ「天然物フィロソフィ2」を開催します!

第58回ケムステVシンポジウムの開催告知をさせて頂きます!今回のVシンポは、コロナ蔓延の年202…

第76回「目指すは生涯現役!ロマンを追い求めて」櫛田 創 助教

第76回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第75回「デジタル技術は化学研究を革新できるのか?」熊田佳菜子 主任研究員

第75回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第74回「理想的な医薬品原薬の製造法を目指して」細谷 昌弘 サブグループ長

第74回目の研究者インタビューは、第56回ケムステVシンポ「デバイスとともに進化する未来の化学」の講…

第57回ケムステVシンポ「祝ノーベル化学賞!金属有機構造体–MOF」を開催します!

第57回ケムステVシンポは、北川 進 先生らの2025年ノーベル化学賞受賞を記念して…

櫛田 創 Soh Kushida

櫛田 創(くしだそう)は日本の化学者である。筑波大学 数理物質系 物質工学域・助教。専門は物理化学、…

実験器具・用品を試してみたシリーズ

スポットライトリサーチムービー

PAGE TOP