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C

クルチウス転位 Curtius Rearrangement

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概要

カルボン酸・酸ハライドから誘導されるアシルアジドを加熱すると転位が起こり、イソシアネートが生成する。 この際、水を介在させておくとイソシアネートはただちに加水分解を受け、一炭素減炭されたアミンが得られる。光学活性な鎖状アミンを立体特異的に合成することが出来る、数少ない手法の一つである。

水の代わりに適切なアルコールを反応剤として選ぶことでBocやCbzなどの、任意のカルバメート保護アミンが得られるきわめて応用性の高い変換法でもある。

アジ化ナトリウムは爆発性があるため、爆発性の抑えられたジフェニルホスホリルアジド(DPPA)を用いる代替法が知られている。本法では、カルボン酸から直接穏和な条件にてアシルアジド→Curtius転位へとつなげられる。

基本文献

  • Curtius, T. Ber. 1890, 23, 3023.
  • Curtius, T. J. Prakt. Chem. 1894, 50, 275.
  • Shioiri, T.; Ninomiya, K.; Yamada, S.-i. J. Am. Chem. Soc. 1972, 94, 6203. DOI: 10.1021/ja00772a052
  • Ninomiya, K.; Shioiri, T.; Yamada, S.-i. Tetrahedron 197430, 2151. doi:10.1016/S0040-4020(01)97352-1
  • Smith, P. A. S. Org. React. 1946, 3, 337.
  • Scriven, E. F.; Turnbull, K.Chem. Rev. 198888, 297. DOI: 10.1021/cr00084a001
  • Wolff, O.; Waldvogel, S. R. Synthesis 2004, 1303. DOI: 10.1055/s-2004-815965

 

開発の歴史

ドイツの化学者Theodor Curtius(1857-1928)によって1890年に開発される。Curtiusは化学を学ぶ前は音楽を学んでした。その他に、ジアゾ酢酸エステル、ヒドラジン、ピラゾリン誘導体などを発見した。

Theodor Curtius

Theodor Curtius

反応機構

ナイトレン様の中間体を経由し、立体保持にて転位する。R’=H (水)の場合には、引き続く脱炭酸によってアミンが生成する。
curtiu1.gif

 

反応例


塩入試薬(DPPA)
による反応。[1] curtiu2.gif
&alpha-四級アミンなどの、合成困難なユニットを合成可能な強力な手法である。 [2] curtius_4.gif
タミフルの合成[3]

 

実験手順

 

実験のコツ・テクニック

 

参考文献

  1. Zhang, Q. et al. J. Org. Chem. 200065, 7977. DOI: 10.1021/jo000978e
  2. Murashige, K. et al. Tetrahedron 200258, 4917. doi:10.1016/S0040-4020(02)00436-2
  3. Yamatsugu, K.; Yin, L.; Kamijo, S.; Kimura, Y.; Kanai, M.; Shibasaki, M. Angew. Chem., Intl. Ed. 2009, 48, 1070. DOI: 10.1002/anie.200804777

 

関連反応

 

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外部リンク

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